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「おもしろくなきゃ、つまらないから」イラストレーター北田哲也さんが病院から届ける、気取らないアート

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「おもしろくなきゃ、つまらないから」イラストレーター北田哲也さんが病院から届ける、気取らないアート

色とりどりのキャラクター、ユーモラスな動物、思わず足を止めてしまう不思議な世界。湘南藤沢徳洲会病院の2階を歩いていると、病院とは思えないほどにぎやかな一角が現れます。2026年9月1日から開催されている「イラストレーター 北田哲也展」。作品を手掛けたのは、茅ヶ崎で育ったイラストレーター・北田哲也さんです。

フジテレビ系列の子ども番組「ポンキッキーズ」の「Pちゃん」をはじめ、SUBARUの「スパナくん」など数々のキャラクターを生み出し、マンガや絵本、パッケージ、ポスターなど幅広いジャンルで活動してきました。今回の展示には、北田さんが長年抱き続けてきた、ある思いがありました。

30年以上前から心に残っていた「病院の風景」

その原点は、30年以上前にさかのぼります。北田さんの子どもが小児科に入院したときのこと。見舞いに訪れた病院で目にしたのは、病気と向き合う子どもたちと、どこか殺風景な院内の風景でした。

「小児科だからもっと楽しい雰囲気なのかなと思ったら、おもちゃも古びていたり、飾りもあまりなかったりしてね。病気の子どもたちもいるでしょう。何とかならないかなって、そのとき思ったんですよ」

自分の絵で、病院にいる子どもたちを少しでも元気にできないだろうか。その思いは、その後も北田さんの中に残り続けました。実際に、いくつもの施設へ企画を持ちかけたこともあったといいます。しかし、なかなか実現には至りませんでした。そして月日が流れ、自身も病気を経験し、湘南藤沢徳洲会病院で治療を受けることに。そんな中、病院側とのつながりから今回の展示の話が持ち上がります。

「もう、この年になって実現するとは思っていなかったんです。僕自身も入院して、ベッドにいるような状態だったから。そこでお話をいただいて。昔からそういう思いがあったから、一歩でも近づくことができるなら、いくらでも協力しますって」

北田さんにとって、病院を会場に作品を展示するのは今回が初めて。病院という場所では感染症への配慮などもあり、一般的なギャラリーとは異なる難しさがあります。そうした中で長年抱いてきた思いを形にする機会が実現したことに、北田さんは湘南藤沢徳洲会病院への感謝を口にします。

長い間、胸の中にあった思いが、思いがけない形で現実になりました。病院側も、アートを通して闘病中の子どもや患者、その家族に少しでも心が和らぐ時間を届けたいという北田さんの思いに共感。多くの人の協力によって今回の展示が実現しました。

展示会の実現に向けて尽力してくれた看護師の野口さんと

「ギャラリーみたいにしたくなかった」

会場を見渡すと、作品は壁に整然と数点ずつ並べられているわけではありません。大小さまざまな作品やキャラクターが、所狭しと並びます。北田さんがイメージしたのは、「美術館」よりも「おもちゃ箱」。あるいは、街を歩いていて思わずのぞき込みたくなる、お店のショーウインドウのような空間です。

「いかにも『芸術です』って、気取った展示は嫌いなんですよ。作品をポツン、ポツンと置いて『どうだ』っていう感じじゃなくて、おもちゃ箱とか、お店のディスプレイみたいにしたかった」

設営を担当した、同じくイラストレーターとして活動する息子、北田正太郎さんにも、「しゃれた感じにしないで、ぐちゃぐちゃっとやって」と伝えたそうです。その言葉通り、会場には肩肘張った雰囲気がありません。美術に詳しくなくてもいい。作品の意味を考え込まなくてもいい。「かわいい」「おもしろい」「これ好きだな」。そんなふうに、それぞれが自由に楽しめる空間です。北田さんは言います。

「おもしろくなきゃ、つまんないじゃないですか」

シンプルですが、北田さんが長年続けてきた創作の姿勢を表す言葉のように感じます。

北田さんが手掛けた作品が所狭しと並ぶ会場。まるでショーウインドウのようなにぎやかな空間です。

茅ヶ崎から始まったイラストレーター人生

北田さんは幼いころから茅ヶ崎で育ち、茅ヶ崎小学校、第一中学校、茅ヶ崎高校を経て、多摩美術大学へ進学しました。大学ではグラフィックデザインを学びましたが、「本気で絵を描き始めたのは大学を卒業してから」と振り返ります。1970年代から80年代にかけては、雑誌や広告などでイラストレーションという表現が大きく広がっていった時代。北田さんも、その流れの中で仕事を始めました。決して最初から順風満帆だったわけではありません。

仕事がなく、アルバイトをしていた時代もありました。そこでの出会いや同級生からの仕事など、一つひとつの縁をつなぎながら、少しずつ活動の場を広げていきます。そして1993年、フジテレビ系列「ポンキッキーズ」のキャラクター「Pちゃん」が誕生します。

「番組名を『P-kies(ピーキーズ)』に変えるという話があって、『P-kiesならPの字しかないだろう』って(笑)。それで作ったんですよ」

軽やかに振り返る北田さんですが、その後も企業広告やキャラクター、絵本、パッケージなど数々の仕事を手掛けてきました。東京を中心に仕事をしながらも、生活の拠点は長く茅ヶ崎。子どものころの茅ヶ崎について尋ねると、「当時はただの田舎町だったよ」と笑います。

一方、東京へ約1時間で行くことができ、海や自然も身近にある茅ヶ崎の立地については、「それはいいと思う」と話します。華やかな「湘南」のイメージを語るというより、自分が長年暮らしてきた街を少し離れたところから眺めるような北田さんの言葉が印象的です。

「いいものを、いっぱい見ればいい」

取材中、北田さんが何度も口にしたのが「見る」ということでした。若いころ、音楽雑誌で好きなミュージシャンが影響を受けたレコードを紹介していれば、それを片っ端から聴いた。自分より先を歩く人から厳しいことを言われ、傷ついたこともあった。それでも、それが「もっと頑張ろう」と思うきっかけにもなったといいます。だからこそ、これから何かを表現したい人に伝えたいのは、まずたくさんの優れたものに触れること。

「音楽だったら、みんないろんな音楽を聴いて、自然に耳が肥えていくでしょう。絵だって同じ。いいものをいっぱい見れば、自然に目が肥えていくんですよ」

誰でも表現できる時代だからこそ、「好き」だけで終わらず、その先にあるものを見る。少し厳しく聞こえる言葉の奥には、半世紀近くプロとして仕事を続けてきた人だからこその実感があります。

イラストレーターとしての歩みや、これからの表現について語る北田さん。言葉の端々から、未来への温かなエールが感じられます。

病院の中に現れた、大きなおもちゃ箱

北田さんは今回の展示について、「誰に見てもらいたい、というのは特にない」と話します。作品を見る人に、何か特定のメッセージを受け取ってほしいわけでもありません。ただ、その場で好きなように見てもらう。「かわいいな」と思ってもらえれば、それでいい。けれど、その言葉の背景には、30年以上前に病院で目にした子どもたちの姿があります。そして今、自身も病気と向き合う中で、その思いが一つの展示になりました。病院という、どうしても不安や緊張を感じやすい場所。その一角に広がった、北田哲也さんの大きな「おもちゃ箱」。

難しく考える必要はありません。まずは眺めて、笑って、「面白い」と思う。北田さんの作品には、そんな時間こそが人の心を少し軽くしてくれるのかもしれない――そう感じさせる力があります。

北田さん自身の作品にも通じる、明るく親しみのある表情が印象的です。

イラストレーター 北田哲也展

期間:2026年9月1日(火)~9月15日(火)
時間:11時~17時
会場:湘南藤沢徳洲会病院(藤沢市辻堂神台1丁目5−1) 本館2階 展示スペース(眼科外来横)
料金:無料
※来場時はマスクの着用が必要です。

インスタグラム:https://www.instagram.com/kitada_tetsuya/?hl=ja

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開催日

2026年9月1日~9月15日まで

住所

神奈川県茅ヶ崎市

公開日:2026-09-04

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