川崎市多摩区の岡本太郎美術館で『岡本太郎が愛した沖縄』展が開催されています。
岡本太郎氏は、沖縄の久高島(くだかじま)で女性だけで行われる神事「イザイホー」などの取材を通して沖縄に残る独自文化に触れ、その印象を2冊の本にまとめています。その影響は、1970年の万国博覧会で発表した「太陽の塔」にまでうかがうことができるといわれています。
「沖縄」とは何であったのか―。同展では、岡本氏が沖縄で撮影した約185点のモノクロ写真のほか、訪問前後の造形作品を通して岡本氏にとっての沖縄を紹介しています。
【体験レポ】「芸術は爆発だ!」の名言のごとく、岡本太郎氏の作品は、カラフルでダイナミック~そんなイメージしかありませんでした。その岡本氏が撮影したモノクロ写真?一体どんなものが写し出されているの?と、ちょっとした興味から同展へ行ってきました。
入館して最初の常設展では、予想通り、いえ、予想以上に鮮やかな色彩と奇抜なデザインの絵やオブジェ等が強烈な印象を発しながら並んでいて、“日本のピカソ”と称された所以、岡本太郎氏らしさが、そこには在りました。
そして、いよいよ企画展「岡本太郎が愛した沖縄」展のエリアへ。
先程とはまるで様子が違う、白と黒の風景、今まで観たことのない岡本氏の世界が広がっていました。まだ身分証明書持参でないと本州から渡れなかった頃の、沖縄の日常生活が、様々な角度から切り取られていました。
ピーンと張り詰めた緊張感漂う神聖な祭りの風景、売り買いする賑やかな声が聞こえてきそうな市場の風景、熱心に伝統舞踊を舞う子どもたちの表情等々、岡本氏の熱い視線を通じて、そこには沖縄特有の“生き抜くパワー”が溢れていました。
岡本氏は、沖縄の風景を「現代日本をながめかえす貴重な鏡なのである」と表していました。その言葉通りに思いを巡らせてみたら、今の私の毎日は平穏でそれはとっても有難いことなのだと、あらためて感謝の気持ちが湧いてきたりして。
それにしても、岡本氏のモノクロ写真。色彩はなくとも、あの迫力とユニークな視点は紛れもない岡本太郎作品でした。「モノクロも爆発だ!」ひと味違う岡本太郎氏の沖縄モノクロ写真の数々、皆さんも何か感じてみませんか?
A.Yamashita