相模原市の六大観光行事にも指定され、皐月の空を彩ってきた「相模の大凧まつり」が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、今年は中止されることとなった。実行委員会の川崎勝重委員長は「苦渋の決断であるがやむを得ない。来年は感染の終息を祝う大凧まつりにできれば」と話している。
相模の大凧の歴史
天保年間(1830年頃)から始まったとされ、190年の歴史を持つ相模の大凧の風習。当初は、地域に子どもが誕生したことを祝って端午の節句に行われていたが、明治時代から本格的な大凧に姿を変え、地域の伝統行事として根付いてきた。1982年にはかながわのまつり50選、91年には国の無形民俗文化財に指定されている。
大凧に描かれる題字は例年、市民からの公募によって決定される。今年も市内外から寄せられた258点の応募の中から、『輪風』が選考されていた。この題字には、東京オリンピック・パラリンピックの成功と世界平和への願いが込められているという。
題字は持ち越し
大凧づくりの中心を担うのが、約450人からなる「相模の大凧文化保存会」(川崎勝重会長)。凧揚げの会場でもある新戸、勝坂、下磯部、上磯部の会員によって結成され、会場の確保や次世代へ大凧づくり技術の継承を行っている。
『輪風』の大凧も、昨年11月から骨組みの材料となる竹切を開始。1月中に干して水抜きを行い、2月から各会場で題字書きなどがスタートしていた。しかし、新型コロナウイルス感染症が市内でも拡大。公共施設などの利用が制限されるなど影響が出始めた。それでも実施に向けて段取りを進めてきたが感染拡大が収まらず、他のイベントの中止や自粛、非常事態宣言の発令もあり、4月6日の実行委員会で全会一致で中止を決めた。中止は東日本大震災の起きた2011年以来。また、東京オリンピック・パラリンピックが来年7月に延期されたことを受け、題字も来年に持ち越すことを決定した。
復興のシンボルに
「今年はやりたい思いが強かった」と川崎会長が話すのには訳がある。昨年10月、日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号は、大凧会場にも影響を与えた。4つの会場とも土が削られたり、逆に土砂が堆積したりと、以前の姿は見る影もなくなっていた。しかし、県や市、地元企業、自治会らが一致団結。「大凧まつりが実施できるように」と迅速に整備に尽力してくれた。
「台風被害からの復興のシンボルとして実施したかった思いはあるが、来年は復興と終息を祝って大凧を揚げたい」と川崎会長は話している。