日本初の海水浴場として知られる大磯海水浴場が、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため今夏の開設を見合わせることが決まった。明治から時代を超えて愛されてきた海水浴場が開設されないことを惜しむ声も多い。
大磯町によれば、新型コロナの動向を注視しながら関係団体と海水浴場の開設に向けて協議してきたが、県の求める「海の家の完全予約制」や「海水浴客のソーシャルディスタンスの確保」「ライフセーバーのマスクやフェイスシールドの着用」などの厳しい条件を完全に順守しながら運営することは難しいと判断した。今年度は、照ヶ崎プールと国府小学校プールも休止する。
大磯海水茶屋組合の鈴木敏勝組合長(75)は「伝統ある海水浴場を今夏もなんとか開設できないか模索してきたが、県の条件が厳しすぎた」と肩を落とす。自身も戦後に父が開店した海の家「凡児」を継ぎ、家族経営で毎年の海水浴客を迎えてきた。「残念だが、今はともかくコロナが収まってほしい」と願いながら、今夏の監視員のいない海に来た人が事故や問題を起こすことを心配している。
135年の歴史
大磯海水浴場は明治18(1885)年に、初代陸軍軍医総監の松本順が開設した。20年の大磯停車場(大磯駅)開業から多くの人が訪れるようになり、政財界の要人が別荘を構え、避暑地百選で1位に選ばれるなど町発展の礎にもなった。関東大震災の際も復旧工事を急ぎ、翌年7月には無事開設している。戦後に大衆化が進み、平成以降の記録では平成2年の58万人をピークに、近年も毎年10万人前後の海水浴客が訪れていた。