横浜市民ギャラリー=西区宮崎町=が5月9日から、収蔵作品の修復プロジェクトをスタートした。貴重な美術作品を次世代につなぐため、同館初の試みとしてクラウドファンディングを活用し、広く修復資金を募る。
横浜市民ギャラリーは市内最初の公立美術施設として、1964年に設立。開館当初から収集してきたコレクションは、神奈川・横浜ゆかりの作家を中心に絵画や写真、彫刻など約1300点にも上る。これだけの収蔵作品を持つギャラリーは珍しく、戦後・昭和期の美術シーンを反映するほか、時代ごとの横浜の風景を描いた貴重なものが多いという。
しかし制作から年月が経ち、修復が必要なケースが散見されてきた。現在約120点の作品が何らかの処置を必要としており、予算の中から捻出してきた修復費用では追いつかない状況になっている。
これを受け同館では、修復費用を広く募るクラウドファンディング(CF)に初めて挑戦。外部資金を増やし処置ペースを上げたい考えだ。
横浜ゆかりの作品
今回修復費用を募る2作品は、三橋兄弟治(いとじ)が横浜で教師をしていた時代にカトリック山手教会を描いた『教会の見える風景』と、横浜を制作拠点にしていた柴田善登の『山下公園の五月』。いずれも数カ所で絵の具の剥落や亀裂、紙の破れなどが生じている。学芸員の齋藤里紗さんは「修復はもちろん、一人でも多くの方々にギャラリーの存在と、貴重なコレクションの魅力を知っていただけたら」と話す。
寄付の目標金額は140万円。CF終了後に、調査を行い、専門家の判断を仰ぎながら、集まった寄付金額に応じた範囲で修復内容を決定する。修復を終えた作品は、来年の2月から行われる展覧会でお披露目される。
森井健太郎館長は「市民の貴重な文化財産。より良いかたちで次世代に受け継いでいけたら。皆様のご協力をお願いします」と支援を呼びかけている。
寄付に関する詳細
CFは6月30日23時まで。寄付は1口5千円から。支援金ごとにグッズや鑑賞ツアーなどの返礼品も。寄付の詳細は「横浜市民ギャラリーレディフォー」で確認。