横須賀市は7日、産学官で連携し、新たに人工知能(AI)を活用した認知症予防サービスの共同開発に乗り出すと発表した。同日、音声会話型AIアプリ「Cotomo(コトモ)」を提供する「Starley(スターレー)(株)」(東京都港区)と連携協定を締結。今後市内の高齢者施設などで試験利用を行い、医学的見地からの効果検証を経て将来的な提供を目指す。
同社によると、開発中の生成AIは音声コミュニケーションに特化し、タイムラグのない自然な会話が可能。さらに昭和時代のニュースをAIに追加学習させることで、高齢者の思い出話を促すことができるという。
会話による認知症予防効果について、同社の丸橋得真代表取締役は「頻繁に他者と会話をする人と少ない人では1・3〜5倍ほど発症リスクに差がある」と説明。一方、生成AIによる予防効果の定量的なデータはなく、全国の自治体に先駆けて生成AIを積極的に運用する市の呼び掛けで共同開発が実現した。
この日の記者会見で開発中の機能が紹介され、AIが「今日は何の記者会見なの?」「横須賀市で海軍カレー食べたって言ってたよね」など円滑に会話する様子を披露した。今後は周知を経て、10月から来年3月まで市内介護施設などで試験利用を実施。学術機関で効果を検証し、サービスの改善に役立てる。
市によると、65歳以上の市民の割合を示す高齢化率は今年4月1日現在で32・69%。県内でも進行が進み、特に認知症の発症率が高まる85歳以上の高齢者数は2020年の2万198人から30年には約9千人多い2万9277人に増加すると推計されている。
こうした背景を受け、上地克明市長は「認知症予防の新たな一歩だ。横須賀市だけではなく、全国の高齢者がいつまでも元気で安心して暮らせる未来に向けて取り組む」と意欲をにじませた。