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1つの繭からとれる糸の長さはどれくらい?ゆかりラボ純水館研究室が茅ヶ崎ゆかりの人物館で座繰り体験会

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1つの繭からとれる糸の長さはどれくらい?ゆかりラボ純水館研究室が茅ヶ崎ゆかりの人物館で座繰り体験会

かつて茅ヶ崎一帯(高座郡)は養蚕業が盛んで、約100年前には茅ケ崎駅北側に大工場「純水館茅ヶ崎製糸所」が存在していました。そんな、いにしえの茅ヶ崎の製糸業について学ぶイベント「座繰り体験~繭から糸を取ろう~」が9月7日、茅ヶ崎ゆかりの人物館で開催されました。4月から同館で開催されている企画展「茅ヶ崎純水館物語~糸もつくるが人もつくる~」の一環イベントです。大正期ごろに使われていた道具で実際に繭から糸を取るとのことで、取材に行ってきました!

今回、進行や研究発表を務めたのは、2023年7月に発足した「ゆかりラボ純水館研究室」の研究員10人。名取龍彦さん(ゆかりの人物館運営アドバイザー)の指導のもと、発表を行いました。

「ゆかりラボ」とは、市民からの公募で、茅ヶ崎ゆかりの人物館の活動の担い手となる「ゆかりラボ研究員」を育成する仕組み。研究員は、学芸員や運営アドバイザーとともに調査研究活動を行い、専門的な知識・スキルを身に付けるそうです。

当日は小学生から高齢者まで18人が参加。「純水館茅ヶ崎製糸所」の歴史をはじめ、生糸の特徴、カイコの成長の様子や養蚕業の今昔について学んだ後、昔懐かしい「座繰り」という方法で繭から生糸を作ることに挑戦しました。

※ちなみに「生糸」とは、繭糸(繭玉から取る細~い1本の糸)を数本撚り合わせたもの。繭糸はとても細いので、何本か束ねて糸にしたものが生糸にします。生糸はセリシンという膠(にかわ)状の物質で覆われていてゴワゴワしています。このセリシンを取り除く作業(=精練)をすると絹糸(シルク)になり、シルキータッチといわれる柔軟さのある糸のことを指します。

先人の知恵がつまった「座繰り器」と「検尺器」

この日、使用したのは「座繰り器」と「検尺器」です。

「座繰り」とは、繭から糸を取り出しやすくするために、繭を鍋で茹でて、片手の手で糸を繰りながら、もう片方の手で巻き取る作業のこと。一方「検尺器」とは、生糸の太さ(デニール)を測定するための道具です。糸を巻く糸枠の周囲が1.125mあり、400回巻くと450mの糸が採取できます。

実際にラボ研究員がメジャーで測るみると、しっかり1.1mの長さがありました!

検尺器の糸枠の周囲をメジャーで測るラボ研究員。「1.1mあります!」

「生糸の太さはデニールという単位で表しますが、 長さ450mの生糸が重さ0.05gのとき、1デニールと定められているので、生糸の太さを測定するために作られた道具です。では、実際に糸取りをやってみましょう。今回は、1つの繭からどれくらいの長さの生糸が取れるか調べてみましょう」

糸取りに挑戦!「糸の長さを計ってみよう」

まずは繭をお鍋で茹でて下準備。

「みごぼうき」と言うほうき状にした稲束を使って繭から糸口を見つけ、繭糸を手作りの検尺器にセットします。取っ手を回すと、生糸の巻き取りがスタート!

続いて「座繰り器」では、歯車が嚙み合って高速で糸車を回転させています。

中央から飛び出ている棒が左右に触れることで、糸が1カ所に集まらず均等に巻き取られていく工夫があります。先人たちの知恵、すごいですね。

 

座繰り器で糸を巻いていくと繭が薄くなって、繭の中に居た蛹(さなぎ)の姿が透けて見えてきました。触ってみると、ちょっと固くて、甘栗のような手触りです。昔は貴重なたんぱく源で、よく食べていたそうです。確かに栄養がありそう!(長野県では、今でもお店に蛹の佃煮が売っているとのことです!)

さぁ、1匹の蚕が出す繭糸の長さは?

参加者みんなで順番に糸を巻いた結果、合計で1,368回転となりました。検尺器をもとに計算すると……、1回転1.125m✕1,368回転=1539m。1つの繭から約1,500mの生糸が取れたことになります!

さらにラボ研究員から、「1,500mという長さは、ちょうど茅ケ崎駅からこの茅ヶ崎ゆかりの人物館までの距離となります」との解説も。ゆかりの人物館を会場に、4月から企画展を開催していただけに、偶然とはいえ、何やら、ただならぬ因縁を感じさせますね!

参加者からは「1つの繭からこんなに長い糸が出てきてびっくりしました!」「小学校で繭を育てていたので、最終的に繭がどうなるのかが分かって楽しかった」等の感想が聞かれました。

また、20代のラボ研究員は「茅ヶ崎の南湖院などは文化財として、資料や建物が残っているけれど、茅ヶ崎純水館は一切何も残っていないので、興味があって研究生になった。こうしたイベントを通じて市民の人に、純水館について広く知ってもらえる機会になれば」と話していました。

茅ヶ崎ゆかりの人物館で開催中の企画展「茅ヶ崎純水館物語~糸もつくるが人もつくる~」は9月29日(日)まで。同館で展示資料を見ながら、今から100年程前の茅ヶ崎の歴史を学んでみませんか。

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住所

神奈川県茅ヶ崎市

公開日:2024-09-16

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