そこは、まるでおばあちゃんの家。昭和風情が漂う一軒家の玄関を上がると、ごく普通のリビングに、和室、台所、懐かしい砂壁まで。でも、決定的に違うのは、誰でも訪れることができるコミュニティカフェだということ。2020年9月に茅ヶ崎市南湖の住宅街に誕生した『みんなの居場所 びすた〜り』(茅ヶ崎市南湖4の9の9)を取材しました。
鉄砲道に面した外壁と、玄関ドアには、手作りの小さな看板。この目印が無ければ、誰もコミュニティカフェだと気づく人はいないでしょう。「こんな雰囲気だから、初めての人は、入って来るのに勇気が要るみたいで。でも、子どもから子育てママ、リタイア後の男性、生きづらさを感じている若者も、誰でも気軽に立ち寄ってほしい」。こう呼び掛けるのは、共同代表の永田恵子さんと川端麻理さんです。
図書室やセルフカフェ、寄付コーナーも
各居室には、持ち寄った本を集めた図書室「くるくる文庫」をはじめ、セルフサービスのカフェコーナー、マッサージやワークショップが開催できるフリースペースが常設。ネパールの雑貨やメンバーによる手づくり品、寄付品のリサイクル販売も行われています。また、食品ロスの解消となるフードドライブの窓口にも。
入場料は300円(18歳未満は無料)。『びすた〜りコイン』と交換され、来場者はドリンクや品物代として利用することができます。「訪れてもらうことが目的なので、入場料が掛かっただけだったということが無いよう、自由にコインを使ってもらっています」
イベントは定期開催の川端さんの手仕事の教室のほか、不定期でフリーマーケットや映画の鑑賞会、ワークショップ、子ども祭りを実施しています。5月には子供たちと一緒に梅の仕込みを行いました。「先日は中学生がメダカ講座を開催したんですよ。みんなから、ここは一体何?って聞かれますが、それぞれ好きなように過ごす、みんなの居場所としか言えないのよ」と永田さんと川端さんはにこやかに笑います。
ボランティアがそれぞれ好きなこと、得意なことを
前身となるのは、永田さんが10年以上前からネパール支援のために市内で運営していたカフェです。現地のコーヒーを支援している村から仕入れ、提供してきました。何でも受け入れてくれる母親のような永田さんのもとには、子育てママや生きづらさを抱える人、障害をもつ若者など多くの人が訪れていたとか。「でも、次第に、自分一人では抱えきれないなと思って」と永田さんは吐露します。
そんな折、NPO法人セカンドリーグ神奈川とつながり、茅ヶ崎市の空き家対策事業として、家主さんの好意でこの家を借りられることになりました。そこで、元幼稚園教諭で、親子サークルの手伝いや養護学校のバス添乗やボランティアを行う川端さんに声を掛け、開設までこぎつけました。「こんない広いスペースがあるから、誰かと一緒にやらなきゃと考えたとき、麻理さんの顔がぱっと思い浮かんだんです」
現在は7、8人のボランティアが、料理や販売管理、Web、手描きのチラシ作り、物づくりなど、それぞれの得意分野を生かしながら運営しています。「自分が好きなことを表現できる満足感や、感謝の言葉が自分たちの糧になっています。こうしたちょっとした喜びがあるから、みんな無理なく活動を継続できています」と川端さん。
ネパール語でゆっくりを意味する『びすた〜り』。「ここに居る人とのいろんな関わりや声掛け、たまたま隣にいた人との何気ないおしゃべりで寂しさが和らいだり、自分らしく自由に過ごせる場を提供できたら」
平日10〜17時。土日祝休み。(問)永田さん【携帯電話】080・9661・4671
【この記事はタウンニュース茅ヶ崎版(2021年6月18日号)掲載分を加筆・修正したものです】