川崎市内でも町工場が多く立地する「久地・宇奈根エリア」や「宮内・下野毛エリア」は、工場だけではなく一般住宅の建築も可能な「準工業地域」が多くの割合を占めていることから、住宅と工場が複雑に入り組む「住工混在」が課題となっています。こうした状況下、町工場は住民との相互理解を深めつつ、ものづくりの魅力を発信したいとの思いから様々な取り組みを行っています。
- とりわけ2024年は市制100周年を契機に、より一層「ものづくりへの理解」を深めて欲しいと、趣向を凝らした事業を実施するなど「住工共生のまちづくり」を推進しています。
■大小の町工場が「川崎北工業会」に
梅林の景勝地としても名を馳せる久地・宇奈根エリアは戦後、砂利の採掘が盛んに行われ昭和30年代の後半になると、大きな工場も開設。その後小さな町工場も多数集まってきました。一方で宇奈根では雨が降るとたびたび冠水するなどインフラ整備の面での課題に直面。そこで地域の町工場が集まり昭和46年に「道路拡張上下水道促進連盟」が結成され、これらの整備を行いました。
この当時の団結が今の「川崎北工業会」につながっています。同エリアでは、一般家庭で目にするような製品はあまり作っていませんが、金属を削ったり曲げたりして色々な機械の部品を作る町工場が多い一方で、独自の製品や特殊部品を生産する町工場も約3割を占めています。
■人口増を契機に設立された「下野毛工業協同組合」
元々は果樹園の多い農村だった宮内・下野毛エリア。昭和30年代に入ると大手企業の工場や社員寮などが建設されました。また市内の人口急増に伴い下野毛に公営住宅が建設され、町工場も次々開所。大手企業の施設や公営住宅の間に、1階が工場、2階が住宅といった「住宅併設町工場」も数多く建設され、昭和49年には今の「下野毛工業協同組合」が設立されました。宮内・下野毛では、金属(鉄、アルミニウム、超硬合金ほか)を削ったり曲げたりして、色々な機械の部品を作っている町工場が比較的多いのが特徴。宮内・下野毛エリアの町工場による部品がなければ完成しない製品は、自動車エンジン、エレベーター、同軸ケーブルなど多岐にわたります。
■オープンファクトリー(工場見学)について
両エリアでは定期的に「オープンファクトリー」という企画を実施しています。これは町工場を無料で見学できるというもの。各工場で行われている仕事の様子や、作られている製品などについても学ぶことができ、毎回多くの参加者で賑わう企画として人気を集めています。
2024年11月2日(土)「川崎北工業会オープンファクトリー」
久地・宇奈根地区の中小メーカーなどで結成する「川崎北工業会」では11月2日(土)、地域住民にものづくりの面白さなどを知ってもらう「オープンファクトリー」を開催します。当日は同会に加盟する会社を中心に、22カ所で工場の開放やブース出展を行う予定。工場内部のレアな様子を見学できるほか、今回は市制100周年の特別企画として地元の飲食店とコラボして、工場見学に参加した人にスペシャルメニューが味わえる企画などが用意されます。
2024年11月9日㈯「下野毛協同工業組合オープンファクトリー」
「下野毛工業協同組合」は11月9日㈯に「オープンファクトリー」を開催します。当日は組合に加盟する10社が、普段見ることのできない工場内部を一般開放し、工場職員らがものづくりの現場を紹介します。金属加工を得意としている企業も多く参加し、金属板をヘラ絞りという技術で加工したり、旋盤加工という技術で金属を削ったりする場面も見学できます。また市制100周年を記念し、参加企業による特別デザインのクッキー販売や、脱炭素をテーマにしたキーホルダーづくり、キッチンカーの出店なども予定されています。
■「川崎ものづくりフェア」について
市内の工業団体が、地元のプロサッカーチーム「川崎フロンターレ」などとタッグを結成した「川崎ものづくりフェア実行委員会」が、「ものづくりの魅力を広く発信したい」との思いから「川崎ものづくりフェア」を年1回、実施しています。
市制100周年を記念し「広域連携企画」も
川崎フロンターレのホーム公式戦前に場外フロンパークの会場で、ものづくりの素晴らしさを堪能できるこのイベント。市制100周年を記念して、9月27日㈮の開催時には「広域連携企画」を実施する予定。この日、川崎フロンターレと対戦するアルビレックス新潟のホームタウンの一つでもある新潟県燕市は金属加工品の一大産地としても有名で、川崎市と同じく「ものづくりの街」であることから、燕市商工会議所協力の下、両クラブのロゴマークが刻印された「スプーン研磨体験ブース」が登場する予定となっています。