「安全と自転車とART。組み合わせたらどうなる?」一見、少し意外にも思える組み合わせから生まれたイベントが、9月26日(土)・27日(日)に開催される「サイクるリング」です。企画したのは、茅ヶ崎を中心に子どもたちの創造・表現活動を展開する「ARTノTANEMAKi(アートノタネマキ)」。代表の栗林大空(じゆう)さんに、この秋に開催する2つのイベントと、その根底にある思いについて聞きました。

「サイクるリング2026」開催概要
日時:2026年9月26日(土)・27日(日)10時~15時
会場:BRANCH茅ヶ崎、サンノイチ、しろやま公園、道の駅 湘南ちがさき
自転車を、いつもと違う角度から見てみる
自転車でまちを行き交う人の姿は、茅ヶ崎では日常の風景です。そんな身近な自転車を「交通手段」だけではなく、アートや対話の入り口として捉えてみるのが「サイクるリング」です。会場では、自転車の部材などの廃材を使ったものづくりをはじめ、アーティストによる作品展示やワークショップ、トーク、茅ヶ崎警察署による交通安全教室などを実施します。
「交通安全教室というと、どうしても『ルールを教わる』というイメージになりやすいですよね。そこにアートを掛け合わせることで、自転車との関係をもう少し主体的に考えられたらと思っています」
栗林さんが見せてくれたのは、イベントで使用する一枚のイラスト。描かれているのは自転車です。参加者には、その前輪と後輪を見ながら、「あなたにとって、自分を支えている二つの車輪は何?」と問いかけます。ある子どもは「やりたいと思う気持ち」と「お母さんのダメという気持ち」。栗林さんの息子さんは、部活動をしている自分とプライベートの自分では答えが違うと話したそうです。同じ自転車を前にしても、出てくる答えは人それぞれ。交通安全について知るだけではなく、自転車から自分自身へと発想を広げていきます。

サイクるリングで使用するイラストを手に。自転車の前輪と後輪になぞらえ、「自分を支えているものは何?」と参加者に問いかけます。
正解が分からない素材だから面白い
こうしたイベントにもつながっているのが、ARTノTANEMAKiが普段から取り組んでいる企業廃材を活用した表現活動です。木材や布、建材、商品の製造過程で生まれる端材などを企業から譲り受け、洗浄するなど安全に使える状態にして、子どもたちの前へ。
「画用紙だったら絵を描く。段ボールだったら切ってみる。ある程度、使い方を想像できますよね。でも企業廃材は、何が正解か分からないんです。貼っていいのか、塗っていいのか、そもそも何にするのか。そこから考えることが始まります」
ARTノTANEMAKiが大切にしているのは、上手な作品を完成させることではありません。素材を触り、「これは好き」「これはちょっと苦手」「どうしたら使えるだろう」と考える。その過程で、自分自身や一緒にいる人との対話が生まれていきます。
「つくること自体が目的というより、つくることがコミュニケーションの真ん中にある感覚なんです」

ARTノTANEMAKiホームページより
「大工になったら、こういう場所をつくる」
栗林さんには、今も印象に残っている子どもの言葉があります。あるイベントで、木材とハンマーを使って夢中でものづくりをしていた男の子。将来の夢を聞くと、「大工になりたい」と答えました。
「大工になったら、自分の家以外にどんなものをつくりたい?」
そう聞くと、最初は答えに困り、その場を離れていきました。ところがしばらくすると栗林さんの隣に座り、周囲を見渡しながらこう話したそうです。
「僕ね、大きくなって大工になったら、こういう場所をつくるんだ」
自由にものをつくり、大人が「面白いじゃん」と受け止めてくれる場所。わずか一日の体験でも、子どもの中では「つくる」が自分の未来や社会へとつながっていました。
「考えるんだな、と思いました。子どもの話を聞いて、受け取る準備ができていることを大人が見せるのは、すごく大事なんだと思います」
モンテッソーリ教育を実践するインターナショナルスクールで教育に携わり、その後子どもの主体的な表現を重視するイタリア発祥の「レッジョ・エミリア・アプローチ」に出会った栗林さん。現在の社会に子どもを当てはめるのではなく、「この子たちが次の社会をつくっていく」という視点は、現在の活動にもつながっています。

レッジョ・エミリア・アプローチとの出会いをきっかけに、「自身の育った環境にも通じるものがあった」と振り返る栗林さん
10月は公園が「あそび場ミュージアム」に
そして10月17日(土)には、第一カッターきいろ公園(中央公園)で「茅ヶ崎あそび場ミュージアム」を開催します。子どもの活動に携わる団体などが集まり、ものづくりや遊び、体を動かす体験など、それぞれの方法で子どもたちの「やってみたい」を引き出します。対象は未就学児から中学生くらいまで。決められたものを上手につくるというより、子ども自身が興味を持ったことを起点に遊べる場を目指しています。このイベントには、もう一つの狙いがあります。
「子どもに関わる活動をしている団体って、それぞれがすごく頑張っているんです。でも、いい活動をしていても孤立して、疲れてしまうこともある。だから子どもだけじゃなく、活動する人たちもつながれる場所にしたいんです」
「あそび場」という言葉の裏側には、子どもだけでなく、大人も孤立させないという思いがあります。

茅ヶ崎あそび場ミュージアムには、子どもの教育に関わる団体が数多く参加。子どもたちがさまざまな体験に触れるだけでなく、参加団体同士がお互いの活動を知り、つながる場にもなっているといいます。
「茅ヶ崎あそび場ミュージアム」開催概要
日時:2026年10月17日(土)
会場:第一カッターきいろ公園(中央公園) 茅ヶ崎市茅ヶ崎2丁目3-1
子どもの「今」から、まちの未来を考える
ARTノTANEMAKiが目指しているのは、イベントを開催することだけではありません。栗林さんが今後構想しているのが、子ども、教育者、アーティスト、企業、行政、市民などが緩やかにつながる「Creative Center Chigasaki」です。
例えば企業から提供された廃材が子どもの手に渡る。子どもがそこから何を感じ、何をつくったのかを企業へ返す。それを見た大人が、子どもたちが生きる10年後、20年後の社会を考える。一対一で終わらず、人やもの、考えが複雑に巡っていく。そんな循環をつくりたいといいます。
「子どもの今を知ることで、10年後のまちを想像してもらいたいんです」
9月の「サイクるリング」に、10月の「茅ヶ崎あそび場ミュージアム」。自転車に乗ること。廃材で何かをつくること。公園で思い切り遊ぶこと。身近な体験から生まれた小さな発見が、自分自身や誰かと対話するきっかけになり、その先にはまちや社会について考える時間がある。この秋、子どもも大人も一緒になって、「やってみたい」のその先をのぞいてみませんか。
ARTノTANEMAKi
ホームページ:https://art-no-tanemaki.org/

















