水野 宇弘(みずの・たかひろ)さん(写真右) 茅ヶ崎市常盤町在住
東京都出身。2016年に家族5人で茅ヶ崎に移住。元気な男の子3兄弟とサーフィンするのが趣味。株式会社ZENKIGEN取締役。関 愛生(せき・よしき)さん(写真左) 茅ヶ崎市中海岸在住
新潟県出身。株式会社ZENKIGENで営業を担当。サテライトオフィス設立の話を聞き、2020年8月に茅ヶ崎へ移住。趣味は読書のほか、茅ヶ崎に来てから始めたサーフィン。保戸塚 勇(ほとづか・いさむ)さん(写真中央) 横浜市在住
株式会社ZENKIGENの第一号社員で、現在はNext Work Style推進室 室長として組織およびこれからの時代に合ったは働き方作りを担当。茅ヶ崎のサテライトオフィス設立にあたっては中心メンバーとしてプロジェクトを推進。
コロナ禍で「社員の心身の健康」と「仕事と暮らしの融合」を模索し、サテライトオフィスを
2020年、コロナ禍によって働き方は大きく変わった。会社組織やオフィスのあり方について、改めて考え直した企業がほとんどだろう。
株式会社ZENKIGENもその中の一つだ。ITベンチャー企業として2017年に起業。東京・大手町にあるオフィスの拡張を検討していたタイミングでコロナ禍となり、働き方は一気にオンラインにシフトした。感染症対策をはじめ、社員の心身の健康を考えると、「東京が拠点でなくても仕事はできる」という声が高まっていったという。
Next Work Style推進室 室長の保戸塚さんに、茅ヶ崎にサテライトオフィスを構えた理由を聞いた。
「これからの働き方を考えたときに、『社員の心身の健康』のほかにも『仕事と暮らしの融合』というキーワードが浮かんできました。北海道から九州まで全国各地を候補地として検討していましたが、スタッフが大手町オフィスと、サテライトオフィスの両方に通えることを条件とした時に、湘南エリアが有力候補にあがりました。鎌倉などとも比較しましたが、自然が豊かでこれからの発展が期待できるということで茅ヶ崎に決めました」
サテライトオフィスは「サザンビーチちがさき」のエントランスに位置することから、「サザンビーチオフィス(zenkigen sazan beach office、以降SBO)」と名付けた。
「これほどダイナミックな景観に恵まれた職場はありません。ここでなら豊かな働き方ができると、一目惚れでした」(保戸塚さん)
実際にサテライトオフィスを茅ヶ崎に設立して、ZENKIGENスタッフの働き方ははたしてどのように変わったのだろうか?
その日の朝、どこで働くかを決められる幸福感。ZENKIGENの働き方改革
ZENKIGENでは、毎朝「どこで働くのか?」を選ぶことができる。大手町に行くのか、茅ヶ崎に行くのか、それとも自宅で仕事をするのか――。自由に選べる選択肢ができたことで、仕事に取り組む姿勢にポジティブな変化があった。
「私の個人的な感覚ですが、大手町のオフィスに向かうときは戦場へでかけるようなストイックな気分です。まわりのメンバーも気を張り詰めながら仕事をしているのが分かります。しかし茅ヶ崎のオフィスは真逆なんですね。BGMはサザンビーチの波の音でリラックスできます。またちょっとした休憩も絶好のオーシャンフロントです。働く上での幸福度が高まり、心地よく仕事ができるようになりました」(保戸塚さん)
1日に10人前後のスタッフがSBOを利用している。スタッフたちは「茅ヶ崎に向かうときは、朝からワクワク気分」と話しているのだとか。サテライトオフィスを持つことは、通勤時間を含めて仕事が楽しみに変わるという発見があった。
都内のIT企業の経営者たちが、わずか1か月で30人以上も視察に訪れたというのだから、ZENKINGの働き方改革の注目度は、ずば抜けて高い。
2020年12月のSBOオープニングイベント。
代表取締役 野澤比呂樹さんのご挨拶をはじめ、ゲストによるパネルディスカッションを行い新オフィスのお披露目となった。
オンライン営業で暮らしがコンパクトにまとまってQOLが向上
営業担当の関さんは渋谷から大手町のオフィスに通い、1日5~6件のアポイントをとって訪問する毎日を送っていた。
ところがコロナ禍で訪問営業のスタイルは一転。すべて「オンライン営業」に切り変わると、働く場所の制限がなくなったため、サテライトオフィス設立に先駆けて茅ヶ崎への転居を決意した。職場と家、プライベートで遊ぶ場所がコンパクトにまとまったことでQOL(Quality Of Lifeの略で「生活の質」という意味)が上がっていると満面の笑みで話す。
「SBOから歩いて3分の場所に住んでいます。東京のマンションと比べて家賃が安く、部屋自体はグレードアップしてコストパフォーマンスが非常に高いです。通勤時間が限りなくゼロに近づいたことで、自由に使える時間が増えました」(関さん)
2020年8月に茅ヶ崎に引っ越してきて半年ほど経過したが、心境の変化を聞くと、関さんの素直な気持ちをこっそりと教えてくれた。
「東京の暮らしって“リア充”を演じているような感覚がありました。狭い部屋に一人でいると焦りもあるし、どこか寂しくなってしまって…(笑)。でも茅ヶ崎では違います。海へ行くだけで楽しくて、肩の力を抜いたありのままの自分でいい。心にゆとりができたことは自分でも驚きでした」
ちなみに、茅ヶ崎で愛着のある場所を聞くと、茅ケ崎駅前に佇む“小さな隠れ家”を教えてくれた。
「『小皿Bar Suya』は私が茅ヶ崎愛に目覚めた場所。おいしい朝ご飯を食べに行きます。ここでは茅ヶ崎の人の温かさに触れられて心がほっと安らぎます。友だちもたくさんできました」
茅ヶ崎には、このようなローカルと移住者をつなぐ場所や人が存在しているという。短期間で「移住者」から「茅ヶ崎人」になれるのは、「架け橋となる存在」があることも大きいだろう。
茅ヶ崎に移住した途端、非日常が日常になった
「人が温かくて、アットホームな雰囲気があります。ずっと茅ヶ崎で暮らしてきた方と移住者とのバランスが取れていて、ちょうどいい距離感で付き合えるというのは私も感じますね」と話し始めたのは、先輩移住者の水野 宇弘さんだ。小学校の保護者の間では「みっちゃん」と愛称で呼ばれ、昔から住んでいるような居心地の良さを感じているという。
水野さんは2016年に茅ヶ崎に転居。大らかに子育てできる環境を考え、都内から引っ越してきた。「たまたま家族で茅ヶ崎に遊びにきたときに、『茅ヶ崎のような自然豊かな環境で子育てしてみたい』と妻に話したら意気投合して、すぐに妻が茅ヶ崎の物件を探してきてくれました。」トントン拍子で引っ越しに至ったという。
「茅ヶ崎に来た途端、非日常が日常になりました」と水野さんは振り返る。
茅ヶ崎に移住する前、サーフィンは特別な日のアクティビティだったが、茅ヶ崎に来てからは日常になった。子どもたち3人と海にでかけては、30分、1時間と日常の延長線上でサーフィンを楽しんでいる。
そして会社のオフィスを構えた今、仕事も家族の日常に溶け込むようになったという。いままでオフィスは仕事をする場所で、いわば戦場だったが、ここでは違う。
「暮らしの延長線上にオフィスがあり、仕事があります。サーフィンの後に子どもたちを連れてオフィスへ行ってひと休みすることもあります。子どもたちにとっても、暮らしのすぐそばに父親の職場があるのは、ある種の楽しみになっているようです」(水野さん)
ITベンチャーが集まるテクノロジーの発信拠点を目指して
新しい働き方に挑戦するだけでなく、今後は茅ヶ崎のまちの活性化も視野に入れて活動したいという。茅ヶ崎にサテライトオフィスを構えて、次に起こしていきたいアクションを聞くと、「地域の人材雇用」だと水野さんは話す。
「新たに拠点を出す上では、優秀な人材が集まるだろうというところも視野に入れています。茅ヶ崎で自然豊かな暮らしを楽しみながら都心に通勤するビジネスマンも知っています。また、茅ヶ崎周辺には大学が点在しているので、優秀な大学生がインターンシップに来てくれるかもしれないという期待もあります」
ZENKIGENの3人にお話を聞いていると、茅ヶ崎に職場を構えたことで「職住近接」が叶っているように感じる。それは物理的に住まいと職場が近づいただけでなく、メンタル面でも「働くこと」と「暮らすこと」がぐんと近づいていることが分かる。サテライトオフィス設立の狙いにあった「仕事と暮らしの融合」がZENKIGENのスタンダードとなりつつあるのだろう。
「近い将来、私たちのようなITベンチャー企業が茅ヶ崎に集まって、日本のテクノロジーの発信拠点となれたらいいですね」と語る水野さん。これからの展望を話す姿を見ていると、仕事へのモチベーションが高まって、ワクワクしている様子が手に取るように伝わってきた。次にどのようなアクションが起きるのか楽しみにしていたい。
Information
株式会社ZENKIGEN https://zenkigen.co.jp/
WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」https://harutaka.jp/
小皿bar Suya https://www.instagram.com/suya12thgen/