2020年3月、茅ヶ崎駅南口そばにオープンした「小皿bar Suya」(こざらバー スヤ)。この店名は、店主の岩瀬望美さんの先祖が、千葉で400年以上受け継いだ屋号「酢屋」からとったものだそうです。そのルーツについて教えていただきました。
ルーツは「天富命」
岩瀬さんのルーツを辿ると、初代天皇・神武天皇に仕えたとされる天富命(あめのとみのみこと)につながります。天富命は、朝廷の祭祀を司る「忌部氏(いんべし)」に属し、房総半島を開拓。関東一円に麻や穀を植え、養蚕や織物などの技術を伝えたとされます。その子孫のうち酢・醤油の技術を伝えてきたのが「酢屋」とのこと。
岩瀬さんの祖父母の代まで400年続いた屋号ですが、跡継ぎにあたる叔父が早世し、途絶えてしまったといいます。
岩瀬さんは大手デパートに就職し、全国の系列店舗の調整などで活躍してきましたが、30代後半で、キャリアプランについて考えるようになります。そこで知ったのが、自身のルーツでした。
「『酢屋』の屋号を残したい」と、独立を志すように。両親とともに都内から茅ヶ崎へ移住し、2017年に飲食店を間借りする形で「Suya」を開始。そして3月、駅前での独立にこぎつけました。
開拓者精神を受け継ぐ
開店はくしくもコロナ禍と重なりましたが、近隣店舗とのコラボなど、多様な取り組みに挑戦しながら展開しています。そのひとつが、将来独立を目指す店員に、朝食時間帯の店舗を一任する「チャレンジキッチン」です。
茅ヶ崎におにぎり店の出店を志す山田愛海さんは、昨年6月から週2回キッチンに立ち、原価や利益を計算しつつ、市の貸農園で育てた野菜などを具材にしたおにぎりを提供してきました。現在は経営感覚をさらに磨こうと、食材を仕入れるバイヤーとして日本一周の旅へと出かけています。
岩瀬さんは「祖先が持っていた開拓者の精神を受け継ぎ、この店を通して伝えていければ」と話しています。
【この記事はタウンニュース茅ヶ崎版(2020年9月4日号)掲載分を加筆・修正したものです】