豊かな自然に囲まれた横須賀市林エリア。この広大な敷地に2021年春、巨大な白い建物が出現しました。近づいてよく耳を澄ませてみると「クック~」。そう、ここは養鶏場です。神奈川県や東京都を中心に熱烈なファンが多く、予約がいっぱいで手に入らない日もあるという「岩沢ポートリー」の「姫様のたまご」がここで生産されています。
一昨年、2つの大型台風によって養鶏場が倒壊したことをきっかけに、このたびリニューアル。今回、真新しい鶏舎に地元のちびっ子記者たちが潜入し、代表取締役の岩澤剛さんに“ぷりっぷり”の卵ができる秘密を聞いてみました。
元気いっぱいに育つ「平飼い」
5月を思わせるような暖かさとなったこの日。建物の外側には換気扉があり、斜めに開けられていました。ちびっ子記者たちは体を屈めて、そぉ~っと中を覗いてみると…。
そこにあったのは、たくさんの鶏たちが悠々と翼を広げて自由に飛び回ったり、木に止まって休んだりする姿。その数約1600羽!鶏を数羽に分けたケージを積み上げて飼う一般的な「ケージ飼い」に対して、岩沢ポートリーでは、平らな地面に放して飼う「平飼い」という養鶏法を取り入れています。
- よく運動することで健康になるのは人間も鶏も同じで、ストレスフリーな環境で元気いっぱいな卵を産むそうです。 みんなとっても快適そうに過ごしています。
産みたてホヤホヤの卵をキャッチ
平飼いされている現場の奥に、何やら暗い部屋を発見。鶏たちはそれぞれこの部屋に入り込み、1日1個のペースで卵を産むそうです。そうこうしているうちに1羽の鶏が今まさにその瞬間。「ゴロゴロ」と滑り台のようなレールを転がり、建物の奥へと消えていきました。ちびっ子記者たちは、卵を追いかけるように走って裏に回ると…。
約35メートルの回収ボックスが一直線に伸びていました。興奮気味のちびっ子記者たちは両手を伸ばし、できたてホヤホヤの卵をキャッチ!みんな口々に「あったか~い」とぬくもりを感じながら、自然と笑みがこぼれていました。
ちびっ子記者の1人から「なんでスーパーで見る卵は白いのに、ここの卵は茶色いんですか?」と質問が飛びました。岩澤代表によると「ここで飼育されているのは『ボリスブラウン』という銘柄で、みんな羽の色は茶色。人間の肌と一緒で、白い鶏は白い卵を産み、茶色い鶏は茶色い卵を産むんだよ」という回答に、みんな「フムフム」と関心を示していました。
三浦半島の栄養が“ギュッ”とつまった飼料
ちびっ子記者たちのテンションも上がってきたところで、岩澤代表が「みんな鋭い質問ばかりで頭がいいね。じゃあ鶏たちがどんなごはんを食べているか教えてあげるね」とこだわりの飼料について説明してくれました。
- 地元農家と連携した新鮮な「三浦野菜」
- コクを出す粉末にした「三崎マグロ」
- ミネラル豊富な「走水産海苔」
そのほか、殻を丈夫にする「牡蠣殻」、黄身の色を鮮やかにする「天然パプリカ」、旨味を出して臭みを消す「地養素」など。
ちびっ子記者は「何だかとっても贅沢なものを食べているね」と羨ましそうに鶏たちに目を向けていました。
- 岩澤代表が大切にしていることは「地産地消」。地元の美味しいものを鶏が食べる→その鶏の糞がたい肥として畑に戻る→そのたい肥を栄養としてまた美味しい野菜が育つ。こうした「サスティナブルな循環」をテーマに掲げ、これまで自慢の卵を生産してきたそうです。
その美味しさは数字にも表れています。「ヨード卵・光」を生産する日本農産工業㈱畜産技術センター調べによれば、岩沢ポートリーの卵は一般的にスーパーなどに並ぶ卵に比べて、旨味コクは5.7倍多く、苦味雑味は7.4倍低い、という結果が出ています。
至極の一玉、新鮮なうちに食らう
まだ夜が明けない早朝から卵の収穫を行い、仕分けされる岩沢ポートリーの卵。「安心」「安全」「高品質」をキーワードとして、鮮度抜群なこの卵をお目当てに開店9時から多くの人が直売所を訪れるほか、その味に惚れ込んだ飲食店経営者などに直送されています。
ではお待ちかね。卵を割ってみましょう。パカッ!
す、す、すさまじい弾力!黄身の色もオレンジというか赤に近い!まずはダイレクトに旨味を感じることができる「卵かけごはん」でいただきたいものです。また、卵をふんだんに使ったロールケーキやプリンといった贅沢なスイーツやゆでたまご、温泉たまご、厚焼きたまごなど風味豊かな加工商品にも直売所にて販売。中でも卵のコク、濃厚さが自慢のエッグタルトが人気だそう。
岩沢ポートリーを隅々まで調査し、卵の魅力に気づいたちびっ子記者たち
最後に岩澤代表は「美味しい卵を毎日作り続けるのは簡単なことではありません。私たちの汗と涙の結晶です。卵だけではなく、食べ物を粗末にしてはいけないよ。いっぱい食べてみんな大きくなってね」とエールを送りました。
それに応えるかのように、ちびっ子記者たちは、ちぎれんばかりに手を振って帰っていきました。1日を振り返って岩澤代表は「新設された養鶏場を将来的に地元の子どもたちが「命」や「食」の大切さを知る体験学習の場として活用したい」と熱い思いを語っていました。