花のお寺西方寺でゆっくりとながれる時間を楽しむ
およそ800年前に鎌倉に創建され、その後およそ500年前にこの新羽の地に移ってきたのが、この真言宗西方寺です。港北区新羽町、市営地下鉄新羽駅からも歩いて5分ほどの場所にあり、長い参道を歩くと石段、茅葺屋根が見えてきます。
山門をくぐると横浜とは思えない雰囲気に包まれた緑深い山を背に、約300年前に建立された大きな茅葺の本堂が迎えてくれます。
参道には、春には中日桜、夏にはアヤメ、秋には萩や秋海棠、冬には蝋梅が咲き、散歩やお参りに立ち寄る人やお花見に訪れる人の目を楽しませてくれます。
2021年も、5月23日まで港北区が主催する、港北オープンガーデンの会場の一つとなっている同寺院。
- 訪れると、そこだけ時間がゆっくりながれている…そんな感覚に陥ります。オープンガーデンの期間中だけでなく、季節を問わず、のんびりと境内を散策することができるのも魅力です(感染症対策の上、来場を!)。
彼岸花の咲く頃は、絶好の撮影ポイントに
港北区の新羽地区には、約15年前に発足した「花の里づくりの会」という街の緑化整備を行う団体があり、これに西方寺も参加したのが、この彼岸花を植えるようになったきっかけだといいます。
「毎年、彼岸花の咲く9月下旬の1カ月ほど前に、球根の植え付けを行っています」と副住職の伊藤仁海さん。この彼岸花をモチーフとした刺繍をほどこした、御朱印帳も人気なのだそう。
冬には、甘い蝋梅の香りが境内にただよう
1月の下旬ころになると、本堂横などに植えられている蝋梅が見事な花を咲かせ、これを見ようと花見客も多く訪れます。
重要文化財(国・県)有形文化財(市)のある寺
西方寺のもう一つの特徴は、文化財のあるお寺だということです。お花見に来た人も気軽に見ることができるものから、通常は公開していないものまでさまざまです。
「山門」(茅葺)
気軽に誰でも見られる文化財はまず、参道から続く「山門」(茅葺)。横浜市指定文化財に登録されている。江戸弘化年代(1844年~1847年)に創建されたものです。
本堂
次に、山門をくぐると現れる「本堂」も市指定有形文化財に指定されています。
本堂の内陣(寺院の本堂内部において本尊を、神社の本殿内部において神体を安置する場所)は、四方桝組(寺社の伝統工法で木を組み合わせて釘を使わない)、折り上げ格天井(寺院建築や書院造りなどで、格式の高い部屋に用いる天井)で、各々の格(ごう)には、春夏秋冬の四季にわたる草花の絵が描かれています。内陣来迎柱には葵の紋があり、徳川幕府との関係の深さがあらわされています。
通常は内部の一般公開はしていませんが、毎年お正月の7日間と、写経会・阿字観瞑想会などの際に本堂内に入ることができます。
本堂内の外陣杉戸8枚十六面 四季花鳥図(狩野派)、内陣杉戸12枚 雲中供養仏画(狩野派)が、江戸享保時代の制作であり、市指定有形文化財となっています。
千年前の平安時代の阿弥陀如来が本尊
本堂内の本尊阿弥陀如来坐像(定朝様式)は、神奈川県指定重要文化財となっています。京都宇治平等院の国宝阿弥陀如来像に代表される、定朝(じょうちょう)様式の仏様です。
また、通称「西方寺の黒本尊」とも言われており、西方寺が鎌倉にあったころには、金色に輝く仏さまであったが、あまりの輝きのために海の魚が恐れて水中に深く潜り込み、魚が捕れなくなってしまい、このため漁師たちが阿弥陀像に一筆一筆経文を書きながら全身を済で塗りつぶしてしまったという言い伝えが残っています。今でも本尊の下あごの部分には、金箔の跡が残っています。
国指定重要文化財の注大般涅槃経(奈良時代)
奈良時代に聖武天皇の勅願によって全国に国分寺や国分尼寺が建立されましたが、多くのお寺ができるとその分多くのお経が必要となり、写経司という役所が設けられ、写経生により多くのお経が書き写されました。いわゆる天平の写経と呼ばれるものです。
西方寺に伝わるものも、その一つで、全30巻からなっており、第19巻目が西方寺に現存しています。他にこの写経本が現存しているのは、三重の西来寺と京都の毘沙門堂と滋賀の西教寺のみとされています。※一般公開はされていません。
写経会・御詠歌教室・阿字観瞑想会を定期開催
般若心経の写経で、心をととのえる
写経会は、お寺の静謐な空間で行われる、西方寺でも毎回参加される方のいる人気の会です。般若心経を使って行いますが、これは、三藏法師、玄奘がインドより持ち帰り自ら漢訳したお経です。心を落ち着け、忙しい日常からはなれ、自らの心をかえりみる時間を過ごしたい人にはぴったり。
「一字一仏ともいい一字一字丁寧に書き写すことによって、一文字一文字に仏様をお迎えし、ご縁を結んで頂く修行です」(副住職)。
御詠歌教室
御詠歌とは、「西国三十三観音巡礼・四国八十八カ所巡礼をはじめとする信仰の中から多くのお遍路さんたちによって生まれ、多くの信徒の方々による仏さまやお大師さま、そしてご先祖さまへの想いや感謝気持ちが歌となり、私たちの心のより所とした現在まで歌い継がれてきた巡礼歌」とのこと。
五・七・五・七・七の和歌に節(メロディー)を付けたものをいい、七五調や五七調・自由歌に節を付けたものを和讃といい、それらを総称して「御詠歌」と呼んでいます。
御詠歌にも様々な流派があり、当山では『高野山金剛流御詠歌』という流派です。是非、興味のある方は一度見学に行ってみては。初心者の方でも基本から丁寧におしえて貰えるとのことです。
阿字観瞑想会
お寺の本堂で行う阿字観は、真言密教に伝わる瞑想法のひとつ。阿字観では大日如来=大宇宙と考え、「宇宙と自分自身がひとつになる」ように瞑想します。「瞑想は仏教の基本とも言える大事な修行です」(副住職)。椅子も用意しているので、座禅や正座を長時間行うのは、難しいとあきらめていた方も挑戦してみてはいかが?
こちらも大変人気の会。先ず、姿勢を整え、基本となるゆったりとした呼吸法を体験。自分の呼吸だけに意識を集中させていくと脳がリラックス状態になり自律神経を整えていくといわれています。
お墓・永代供養墓・のうこつ墓
緑ゆたかで、高台の墓地からの眺めも良く静かな環境
西方寺の一般墓地は、永代使用料が20万円~。後継者のいない方には、永代供養墓「遍照殿」もあります。
あたらしいお墓のかたち、納骨墓「菩提心」
このお墓は、各部屋に分かれたお墓のマンションのようなタイプのお墓とのこと。個別に分かれた部屋にはお骨を骨壺ではなく、専用の納骨袋に入れることによって4体までの納骨が可能なのだそう。
お墓を建てる訳ではないのでお仕事で違う土地へ住むような事になっても簡単にお墓もお引っ越しが出来るのも「あたらしい」ですね。
また、後継者がいなくなった場合、永代供養墓「遍照殿」へ合祀し、墓じまいやお墓の撤去費用等がかかりません。そして従来のお墓同様に屋外のお墓となりますので、いつでも気軽にお参りが出来るとのことです。