新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、まちの薬局にも相談が多く寄せられています。コロナ禍における薬剤師の役割などを約1800人の会員が所属する(一社)横浜市薬剤師会の坂本悟会長に聞きました。
コロナ禍、まちの薬局にはどのような相談が寄せられていますか?
新型コロナウイルスワクチンの接種に関する相談が多いです。「なかなか接種の予約ができない」「ワクチンの副反応が心配」「かかりつけ医が個別接種を行っていないけど、どうすれば良い」などの声はまちの薬局にも寄せられています。これらの対応はインターネットでも公開されていますが、パソコンやスマートフォンを持たない高齢者などには情報が入りません。情報格差をなくせるよう、私たち薬剤師も一人ひとりの患者さんに向き合う親身な対応に努める必要があります。
ワクチンの副反応を危惧する声は連日聞きます。
ワクチン接種は、感染症を防ぐ免疫を体の中に作るという、本来の目的である「主作用」がある一方、「副反応」といって発熱等の症状が現れることがあります。主作用と副反応、どちらの影響が大きいかを天秤にかけて選択しますが、今回は主作用のコロナ予防の方が大事だということで、全国で接種が進んでいます。
また「接種後に副反応で熱が出たら何の薬を飲めばいいか」という相談もありますね。厚労省は先日、接種後の発熱や痛みには、市販の解熱鎮痛薬の種類として、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)が使用できると公表したので、参考にしてもらえればと思います。
ワクチンの集団接種は薬剤師も協力しているそうですね。
現在、新型コロナウイルスのワクチン接種のため、薬剤師も一丸となり、地域から1日400人前後の薬剤師が横浜市内の接種会場へ赴き、薬液調製に当たっています。これまで接点の少なかった病院薬剤師と薬局薬剤師が現場で交流することで、薬剤師同士の連携がさらに進むことを期待しています。
コロナ禍でオンラインを活用したサービスも進んでいますが、どうお考えですか?
コロナ禍に対応し、薬剤師がスマートフォンやタブレットなどを使った、オンラインによる服薬指導もありますが、個人的には患者さんと「顔の見える関係づくり」が大切だと感じます。オンラインサービスは山間部などの医療資源が不足している地域には有効ですが、本来は医療従事者の顔が見えるのが理想のあり方です。流通などが発達した横浜では、患者さんと一対一で向き合い、コミュニケーションを図ることが可能だと思います。
現在、国は高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで送れるように地域がサポートする「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。今後はさらに、入退院の際に「病院薬剤師」と地域の「薬局薬剤師」が薬剤管理を引継ぐなど、退院後も患者さんが自宅で薬を飲み続けられるように薬剤師同士が連携していくことが必要。市薬剤師会として医師やケアマネジャーなどとの多職種連携も図り、顔の見える関係づくりに力を入れていきたいですね。地域包括ケアシステムは、日ごろから患者さんと意思疎通をする中で強化されていくものだと認識しています。
外出がしづらい中、健康維持のアドバイスは。
手洗いや3密(密集、密接、密閉)状況を作り出す場所を避けるなどの基本的な感染症対策に加え、何よりもストレスを溜めないことが大切です。コロナ禍によるストレスや運動不足で「太った」という人も多く、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を引き起こす原因になりかねません。薬剤師はさまざまな病気に関する情報や薬の服用方法をお伝えできるので、不調を感じた際は気軽に相談できる「かかりつけ薬局」を作っておくことが大切です。
今後について、読者にメッセージをお願いします。
今は患者さん一人ひとりに寄り添って健康増進をサポートする「かかりつけ薬剤師」の存在が大きくなっています。かかりつけ薬剤師は、処方せん薬や市販薬などの知識だけではなく、健康食品や介護用品などの幅広い情報を持ち合わせています。患者さんが服用している薬を把握し、薬の飲み残しや重複、副作用の心配がないかなどをかかりつけの薬局で継続的に確認してくれるので、ぜひ一度、お近くの薬局でお尋ねいただければと思います。
薬局は本来、薬や病気の相談に限らず、普段から気軽に訪れてほしい場所です。コロナ禍だからといって長時間家に引きこまらず、「ちょっと体調がすぐれないなぁ…」と感じたら遠慮なく、近所の「かかりつけ薬局」にご相談ください。