日々茅ヶ崎市内を巡っている記者には、最近気になっていることが。車体に「サザンオールスターズ聴けます」と記されたタクシーとすれ違うのです。一体どんなタクシーなのか―。運行する長田哲朗さん(61)に取材を敢行しました。
予定の時間に現れたのは青い法被を着た長田さん。「お待ちしていましたー」と大きな声と高いテンションが印象的です。もともとは岡山県出身ですが、家庭の都合で湘南に移住。タクシードライバーになって24年というベテランです。
実はサザンオールスターズについては「デビュー当時から好きだったが、熱烈なファンではなかった」。そんな認識が一変したのが2000年、サザンが茅ヶ崎公園野球場でライブを行った時でした。「茅ヶ崎に押し寄せた人の数はまさに『TSUNAMI』。桑田佳祐という一人の男の力を思い知らされた」。
これを機に、サザンを聞きこむようになった長田さん。桑田さんの知名度を地域振興や冷え込むタクシー業界の需要アップに生かせないか、考えだしたといいます。
4年前、独立して個人経営となったことをきっかけに車内でサザンの曲が聴ける「サザンタクシー」実現へ動き出します。所属事務所にも企画書を提出するなどして、今年に入ってから本格的に運行を始めました。
いつか本人に乗ってほしい
「車体のシールを見て声をかけられることも多い」といい、桑田さんゆかりの地やお店を回って作り上げた人脈で「ネットにはないこぼれ話を聞ける」ことも魅力です。ツイッターではサザンに関する情報を発信し、ファンを中心にフォロワーは3500人以上。SNSをきっかけに他県から訪れる利用者もおり、現在、サザンゆかりの地をめぐる「ツアー」のテスト運行を実施中です。
「ニューオリンズがジャズの街という印象があるように、茅ヶ崎もミュージシャンが生まれる街になってほしい」と長田さん。「桑田さんは茅ヶ崎に恩恵をもたらす人。自分もまちおこしとしてのサザンタクシーで茅ヶ崎をひとつにできたら。いつか桑田さんにも乗ってほしい」と話しました。