横須賀港発「東京九州フェリー」に体験乗船してみた

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新港ふ頭に新設されたフェリーターミナル

2021年7月、新港町にある横須賀港と九州の北端、北九州港(北九州市門司)を結ぶフェリー航路が開設されました。横須賀は海に囲まれた街なので、船は身近に目にするもの…ではありますが、人が乗れるのは「猿島航路」など近場のみ。そこに大型フェリーの登場です。

東京九州フェリーによるこの航路は、約21時間で現地をつなぎます。日曜を除く週6日、横須賀からは23時45分(午後11時45分)に出航して、太平洋を西へ。現地に着くのは21時(午後9時)。これに乗って本州を脱出して、船旅を満喫したいところですが、そんな気持ちを押さえつつ…フェリーをプチ体験できる横須賀市主催の「東京湾周遊市民クルーズ」に参加してみました! 

実は、就航間もない昨年8月に予定されていた企画。新型コロナの影響で延期となっていて、ようやく実現したもの。事前応募は定員200人のところ3,764通9,101人。なんと45倍の競争率。「乗ってみたい!」という市民の関心の高さがうかがえます。

その前に…なぜ新しいフェリー?

貨物の運送という視点でいうと、今はトラックを使用した陸上輸送が主流ですが、それを海上輸送に移行する「モーダルシフト」が国を挙げて進められています。いくつか理由があるのですが、「環境負荷」から見ると、船舶での輸送を同じ距離で比較すると、CO2排出量は陸送の1/5。また、物流業界では、ネット通販など宅配需要が増加する一方で、ドライバー不足や長時間労働などの課題も山積。そんな負担を軽減する意味合いもあるのです。

本州と九州をつなぐフェリーはいくつかありますが、関東から寄港なしで直行する航路はこの「東京九州フェリー」のみ。1日500隻近くの船舶が行き交う東京湾は、速度制限があるので航行に時間がかかるのですが、浦賀水道航路の途中に位置する横須賀港は、太平洋に出入りしやすい立地。そのため、九州を結ぶ物流網としても期待されているのです。

東京湾内は速度を落とさなければならず、航行に時間がかかるため、湾口にある横須賀港は「地の利」も(国土交通省関東地方整備局 東京湾口航路事務所のホームページより)

船の名前は、はまゆう・それいゆ

新造船されたフェリーの名前は、横須賀の市花「はまゆう」と北九州の市花であるひまわりから取って「それいゆ」の2隻。両市を「つなぐ」想いが感じられますね。

横須賀港に停泊している「はまゆう」

全長は222.5m、速力は28.3ノット(約52.4km/h)。貨物の割合を多く設定しているので、トラック約154台・乗用車約30台分。夜着で夜発なので、日中に接岸する姿を見ることができるのは、月曜日だけなのです。

いざ市民クルーズへ!

ターミナル入口には「はまゆう」の船模型も

新港町のふ頭には航路開設に合わせて、フェリーターミナルが新設されました。「Departure」の表示を見ると、旅へのワクワクが高まります。待合室は、横須賀土産やはまゆう・それいゆグッズも。カフェスペースもあり、ターミナルと横須賀港を眺めてひと息できます。

はまゆう・それいゆのオリジナルグッズも販売

出航前には、銅鑼を鳴らしている様子も見ることができました。海から見た横須賀の姿に、「こんな風に見えるんだ〜」と参加者の声。通常の航路は横須賀から太平洋を西に向かうため陸地から遠くなりますが、今回は東京湾周遊なので、工場地帯の風景や漁船やタンカーなど、さまざまな種類の船舶が行き交う様子が見られました。東京ディズニーランドや東京アクアラインの「海ほたる」が見えたり、「あの高い建物は何だろう」「スカイツリーが見えた!」…と、皆さん、とっておきの景観を楽しんでいたようです。

羽田空港近くでは飛行機の真下を航行

まるでホテルのよう!

今回は正味4時間のクルーズ。宿泊はできませんが、船室の見学もできました。フェリーの船旅…というと、ひと昔前は広い船室で雑魚寝というイメージもありますよね。私も学生時代、硬い床で眠れないことに加えて船酔いで大変な思いをしたことがあります。そんなイメージで身構えてしまう人もいるかもしれませんが、このフェリーの客室(ツーリストA)は大部屋に個々の仕切りがあって、半個室のような体裁。このほかデラックス・ステートなどの個室は、ホテルのような間取りで窓から海が望めます。

様々なタイプの客室があります

この日は天候も良く、海も穏やか。船はそんなに大きく揺れてはいなかったのですが、座っていると小刻みな横揺れが。そんなに気になるほどではなく、私にはむしろ心地よい揺れでした。

船旅を楽しく過ごすための仕掛け

片道約20時間も乗っているとなると、退屈になってしまいそう。船内には海を見ながら楽しめる大浴場・露天風呂やトレーニング機器のあるスポーツルーム。さらには、カラオケの付いたアミューズメントルームやプラネタリウム・映画を楽しめるスクリーンルームなどがあり、飽きずに楽しめます。動く「ホテル」といった感じです。

お土産店では、九州の物産や船をモチーフにしたグッズも販売。そして船ならではの「記念の品」も。寺巡りの御朱印や城巡りの御城印と同じように「御船印」が用意されています。東京九州フェリーは“第三〇番社”で、はまゆう・それいゆ、それぞれの船で販売されています。店員さんによると、良く売れているとのことでした。

御船印とは

一般社団法人日本旅客船協会公認プロジェクトで昨年開始。船は移動や輸送だけでなく、観光においても大きな役割を担っている中で、船旅の記憶を残すものを…と企画されたそう。現時点では66の船会社が参加。デザインは各航路それぞれの特徴を表現しています。

フェリーへの期待、大きく

街と街をつなぐ新たな「ルート」の誕生に、両市とも期待を膨らませています。横須賀市の担当者によると、「北九州市は、横須賀と似ているところが多い」とか。かつて製鉄所があった、砲台跡や灯台がある、階段のない駅がある(JR横須賀駅・JR門司港駅)などなど。そんな共通項にふれる旅も提案しています。

市内ではこんな動きも

https://www.townnews.co.jp/0501/2022/03/18/617213.html

物流だけでなく、人や物の交流の「きっかけ」づくりにしたい―。コロナ禍で人の行き来に制限がありましたが、少しずつ動き出しているようです。

今回は数時間の周遊クルーズでしたが、船からの景色や横須賀・九州の味に舌鼓を打ったり、皆さん楽しそうでした。「次は故郷の九州へこれで帰ってみたい」。そんな感想も聞きました。私だけでなく「船旅良いかも」思った参加者も多いかもしれません。これを機に、もっと海や船と身近になればいいですね!

住所

神奈川県横須賀市新港町11-4

ホームページ

外部HPリンク

公開日:2022-03-23

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