冬になると、毎年のようにメディアで取り沙汰される三浦野菜の大量廃棄問題。「少しでも減らせないものか」。苦境に立つ生産者を支援しようと、供給過多で処分、または流通しない規格外の野菜を使った加工品開発が「朝めし あるべ」の店主・菊地未来さんを中心に三崎でスタートした。3月24日には、和食シェフと考案した料理を飲食店関係者らに振る舞う試食会が開かれた。
取組のきっかけは
取組のきっかけは昨年末、知り合いの土木関係者から菊地さんに掛かってきた1本の電話だった。「農家さんに畑を養生して重機を置かせてもらうことになったが、出荷できない大根が植えられているのでもらってくれないか」。その数1000本ほど。移住・創業支援を行う合同会社「ミサキステイル」の代表として菊地さんは大根をできる限りトラックに積み、店先まで搬送。その様子をSNSに投稿し、引き取り先を募った。
廃棄野菜などを肥料に変える三浦バイオマスセンターによると、農家から持ち込まれた廃棄野菜は、昨年11月〜今年2月で約2215トンにも上るという。ただ、これは大乗・毘沙門・宮川だけの数。コロナ禍での外食需要低迷や豊作による出荷調整の影響などで、供給過多になっている所は他にもある。資材や農薬の価格も高くなるなかで農家は悲鳴を上げる。
5月めざし商品化
年が明けた1月、原町出身の小川功二さんが「あるべ」を訪れた。聞けば、都内で働く和食シェフで「料理人として生まれ育った三浦に恩返ししたい」という。豊作貧乏に陥る農家の現状を目の当たりにしたばかりだった菊地さんは早速、廃棄野菜を使った商品開発の協力を仰いだ。
試食会では「キャベツとワカメの鬼おろし麺つゆサラダ」「マグロと切り干し大根の春巻き」など、2人が腕を振るった10品以上がずらり。「くろば亭」「牡丹」「葉山商店」の店員らがそれを食し、包丁の入れ方や水分量の調整、味付けといった様々な意見が出た。「今回は三崎名物の誕生に向けた第一歩。でも悠長なことは言ってられない。皆の声を反映させて5月にはレシピを完成させたい」と菊地さん。すでに加工場を借り、今後は価格や販路、パッケージデザインなども決定していくという。
規格外野菜の調理法を交換するなど、菊地さんと交流のあるスズカク農園(高円坊)の鈴木彩子さんは「次世代に農業を繋ぐため、地元の課題を地元の人が解決するのは理想」と期待を寄せる。