戦勝祈願、一族繫栄、平和安寧――。当時の武士にとって神仏への信仰は欠かせないものだった。その一端を今に伝えるのが、江の島や江島神社だ。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にまつわる藤沢のスポットを訪ねた。
「北条義時一族の家紋」が江島神社の起源
ドラマの主人公・北条義時一族の家紋は、三角形を重ねた「三つ鱗」。これは江島神社を起源とするものだ。
鎌倉時代に書かれた『吾妻鏡』には、1182年に頼朝が藤原秀衡の調伏を文覚に命じ、江の島に戦いの神として弁財天を勧進したとある。4月5日には時政ら家来を連れて島を訪れ鳥居を奉納。この鳥居は、同神社奥津宮にある石の鳥居と伝えられている。
室町時代に書かれた戦記『太平記』では、義時の父・時政が90年に子孫の繁栄を願い、江の島岩屋に籠った記録が残る。祈願成就の日、夢の中に女神が現れ、龍となって海中へ姿を消した。時政は目覚めた際に手元に残っていた三つの鱗を北条の旗紋にしたという。
江島神社の社紋はそれに因み考案。成立年は不肖ながら、鎌倉幕府の加護を示すものとして、信仰を集め続けたという。
島の頂上からは鎌倉が一望できる。同神社の相原圀彦宮司は「鎌倉殿たちは鎌倉に数ある寺社でなく江の島を詣でた。彼らは何を思い、この景色を見たのか」と思いを馳せた。