三浦半島初、ムスリムの礼拝所に行ってみた

シェアする
礼拝室を表現するピクトグラムが入口に。

横須賀は米軍基地や工場地帯もある土地柄、多様な外国人が暮らしています。そんな中、ムスリム(イスラム教徒)の「礼拝所」が横須賀市長井に誕生しました。この町でムスリムの文化に触れる機会はほとんどなく、なぜ三浦半島に礼拝所??これには、いくつかの深い理由があったのです。

ムスリムと日本の関係…

今や世界の人口の1/4を占めるムスリム。中東地域の国に多いイメージもありますが、実は、信者の6割近くがアジアで、インドネシアは世界最大のムスリム国家。「豚肉を食べない」といった戒律があることを知っている人も多いと思いますが、1日数回の礼拝やラマダン(断食)、ハラールフード、女性が頭を覆うヒジャブもそう。「普通の日本人」とはかなり違う生活です。

コロナ禍の少し前あたりから、ムスリムの訪日観光客が増えており、国や自治体も受け入れの環境整備を進めています。神奈川県や横須賀市も観光事業者など向けにセミナーなどを開いて、ハラール(豚肉や豚肉由来、アルコールが含まれていない食品)認証の取得支援や食・礼拝・習慣に関する基礎知識などを発信していました。今はまだ海外からの観光客が戻っていませんが「インバウンド」を狙った動きは今後も進みそうです。

介護業界との関わりも

そしてもう一つ。別の動きがあります。それが、「外国人技能実習生」の存在。外国人が日本で働きながら技術を学ぶ制度で、介護の現場で働く人材が日本に多く訪れています。

今回、「礼拝所」の立ち上げに関わっている企業は、横須賀・横浜を拠点とする介護事業者。2020年にインドネシアから初めて技能実習生を数人受け入れていて、現在も市内のデイサービスなどで働きながら介護を学んでいます。介護業界は人材不足で、この先もっと人手が足りなくなることが予想されています。そんな中で、日本で働くことを希望する外国人技能実習生の存在は大きく、一方で受け入れる側が彼らの生活環境も整えていく必要性も高まっています。

礼拝や食生活…日本と違う文化

この介護事業者の高齢者施設では礼拝用のスペースを設けて時間を融通するなど、仕事と生活に双方に支障のないよう配慮しているそう。それでも、まったく文化の違う国で生活するのはやはり大変。ハラール対応の飲食店はまだまだ市内には少なく、食材を買えるお店も限られています。実習生たちは日本の食材の表示とにらめっこしながら、自炊しているとか。

実習生の生活やムスリムの文化をyoutubeでも配信しています

「ナカタトラカ」

https://www.youtube.com/channel/UC2V-WA30jrtVlMVUOgmr35Q

三浦半島初の「ムショラ」

近年、空港や商業施設にも「ムショラ」と呼ばれる小さな礼拝所が設けられるようになっているようですが、市内(三浦半島地区)にはまだありません。

詳しく聞くと、集団での礼拝を重視する時間や曜日もあるとのこと。ただ、市外のムショラや横浜や都内にある大きな礼拝所(モスク)に行くのも大変…。そこで「異国での生活を少しでも支えられれば」と2022年4月、数人で礼拝できるスペースのある交流拠点開設に至ったそうです。

大きな窓と陳列棚が目印

場所は横須賀の西エリア、長井という場所。JAの直売所「すかなごっそ」の真向い。もともと和食の飲食店だった店舗を実習生の意見を取り入れながら改修しています。今まで礼拝所がなかった地域での開設とあって、インドネシア在日大使館からの訪問もあったそうです。

4月はラマダンと言われる約1カ月の断食の期間にあたります。日没後のお祈りの後、夕食を家族や親戚、友人と盛大に食べる習慣があります。オープンしたばかりですが、実習生だけでなく、この場所の情報を聞いて礼拝に訪れた市内在住のインドネシア人もいたそう。

礼拝室入口にはお祈りの時間を示すデジタル時計も(アザーン時計というそう)。日付に対応して時間が表示されています。その仕組みを知りたい…!

現地と日本の時間を示す時計も用意しています

店内には、現地の食材の販売スペースも用意。人気は「インドミー」という即席めん。いくつか味のバリエーションがあって、実習生曰く「世界で一番おいしい麺」とのこと。他には調味料(サンバルソース)やひまわりの種のお菓子、インドネシアの染物なども販売しています(現地からの調達の都合で品数に限りあり)。実習生に向けて生活用品の寄贈も受け付けています。

礼拝所だけでない、交流拠点に

介護事業者が手掛けている、ということもあり、同業者や地域住民の「貸しスペース」、外回りの休憩場所、リモート拠点としての活用も期待しているそう。市内(三浦半島地域)のムスリムの人たちの交流の場、介護事業者には外国人技能実習生に関する情報交換の場…さまざまな機能の広がりありそう。今後は、カフェとしての機能も充実させていく考えで、ゆくゆくは「現地の料理をふるまえれば」と担当者。

外国人技能実習生の2人。「外国で経験を積みたい」と2020年に来日

施設名は「HARAPAN」と名付けられています。現地の言葉で「希望」という意味。人やモノ、暮らしをつなぐ場所になれば…そんな期待が詰まった交流拠点でした。

*開店時間は概ね11:00から17:00としていますが、礼拝の時間に合わせて開けています。

住所

神奈川県横須賀市長井1-12-15

ホームページ

外部HPリンク

公開日:2022-04-21

関連タグ