小田原市は、市所有の一部の歴史的建造物について民間提案や公募型プロポーザルを通じ、民間との活用促進に取り組んでいる。今年中に委託業者の選定などを進める。
民間提案制度とは、民間事業者らの専門的なノウハウや資源を生かし、連携して市の課題解決を進める取り組み。また、公募型プロポーザルは、業務の委託先選定に向け、業者に企画を公募し、優れた提案をした民間事業者を選定するもの。
清閑亭
小田原城址公園近くにある国登録有形文化財・清閑亭(南町1の5の73)は、明治期に活躍した黒田長成侯爵の別邸として1906年に建てられた。2008年から市の所有となり、10年から今年3月までNPO法人小田原まちづくり応援団が建物見学や文化イベントなどを通じ観光散策の拠点として運営。コロナ禍以前は年間2〜3万人が訪れていたが、3月で一般公開が終了した。
清閑亭の利活用について市は昨年、市内に本社を置く(株)JSフードシステムの民間提案を採用。「食」を通じた小田原の文化発信などのための施設として来春オープンを目指し、現在同社との協議を進めている。
旧松本剛吉別邸と皆春荘
いずれも2016年に市の歴史的風致形成建造物に指定されている旧松本剛吉別邸(南町2の1の27)と皆春荘(板橋852)。市が直接管理して一般公開している。市によると、コロナ禍前は旧松本剛吉別邸に年間約6千人、皆春荘に年間約2千人が来場していた。
両施設について、市は民間のノウハウを生かして小田原の邸園文化発信を促進しようと、業務委託を計画。6月から両施設をまとめて委託する業者選定のため、公募型プロポーザル実施に向けて業者の募集を行っている。契約期間は10月1日から来年3月末まで。
豊島邸
1941年に建築され、昨年2月に国登録有形文化財に指定された豊島邸(栄町4の700の1)。市は所有者から2015年に寄贈を受け、18、19年度に利活用に向けて事業者を募集した。
しかし、優先交渉権者に決定した小田急電鉄(株)がコロナ禍の影響で辞退。次順の優先交渉権者だった(一社)全国古民家再生協会神奈川第二支部も辞退した。
そこで市は今年、民間向けにサウンディング型市場調査を実施。「小田原駅から少し遠いため、明確な目的がなければ集客は難しい」などの声が寄せられた。現在、こうした結果を参考にしつつ、民間提案制度による提案募集に取り組んでいる。提案は8月から9月に掛けて受け付ける。
市は「歴史的建造物を、民間の協力で活用したい」としている。