箱根のうねった山道を登った先に、霧の中から立ち現れる小さな館がある。4月28日に開館した「箱根の金太郎館」(強羅)だ。館長の住宅(すみたく)正人さん(59)がおとぎ話に登場する金太郎と、足柄地域にゆかりのある平安時代に実在したとされる人物、坂田公時(金時)とのつながりを独自の視点で語った。
坂田公時と金太郎
坂田公時は、江戸時代に書かれた軍記「前太平記」にその名が記されている。同文献によると「足柄山」で生まれ育った後、人並外れた怪力が噂を呼び、源頼光に招集され鬼退治に参加、活躍したとされている。
この軍記物語は江戸時代に人気を博し、歌川芳勝の浮世絵や近松門左衛門の演目にも描かれたという。「これらの作品に金太郎の名前は出てこないが、平安時代に既に成立している金太郎のおとぎ話と内容が一致している。あるときから2人の人気キャラクターは結び付き、同一人物視として広く知られるようになったのだろう」と、40年以上かけて集めた史料や郷土玩具、絵本など約300点の資料を基に解説。足柄地域には、金太郎伝説を伝えるスポットが点在し、今も継承されている。
一風変わった楽しみを
子どもにも楽しんでもらおうと館内には、目の錯覚を利用したお手製のカラクリやだまし絵を約10カ所設置。また洞窟を探索し、鬼退治を体感できるコーナーも作った。エンターテインメント性のある展示にもこだわっている。実は住宅館長は、ちくわ笛の奏者としての顔も持つ。館長の在中時には演奏会が行われることも。「箱根の温泉や美術館とは一風変わった楽しみ方ができる、刺激的でためにもなる施設。地元の方に金太郎や坂田公時のことをもっと知ってもらえたら」と話している。
箱根登山ケーブル上強羅駅の隣。入館料大人500円ほか。開館時間は午前10時〜午後5時で火・水曜休館。(問)同館【電話】0460・83・8814。