創設8年で会員500人超 いま話題のサッカークラブ
相鉄線瀬谷駅近くにクラブハウスを構える、「瀬谷インターナショナルフットボール」。
従来のサッカークラブの枠組みを飛び越えたさまざまな取り組みを展開しており、画期的な教育方法で話題を集めている存在だ。創設からわずか8年で会員数が500名を突破するなど、その特異な教育理念が育んだ子どもたちの成長は、教育界の常識に風穴を開けようとしている。
- 今回はインタビューの第1弾として、クラブ創設者で監督の土肥賢太氏を取材。教育理念から子どもたちのチャレンジを促す環境作り、変化する時代への対応まで、幅広いテーマについて語ってもらった。
- 第2弾はこちら
教育界の既成概念を打ち破る ー “好き”を追求
まずは始めにクラブの教育理念について教えてください。
「教育理念は、ずばり『好きを追求すること』。私たちは子どもたちに対して、自分の好きなものにとことん打ち込むよう呼びかけています。その中から自発的な学びと、自己の思考や行動力を引き出します。この教育理念は、数多くの成功者を輩出したモンテッソーリ教育と酷似していますね」
モンテッソーリ教育とは。
「子どもの自主性と創造性を尊重し、学びの主導権を子どもたち自身に委ねる教育法です。医師であり教育家だったマリア・モンテッソーリ博士が考案したもので、世界各国の教育機関でも取り入れられています。『好きなものを追求する』という行為は、子どもたちの探求心を大いに刺激します。これを繰り返すことで、自発的に学び、行動する人材へと成長していきます」
従来の学校教育や学歴至上主義の風潮とは明確に距離を置いているのですね。
「いま求められるのは学歴ではなく、自分で考え、自ら行動できる力だと考えています。その基盤を形成するのが、好きなことを追求するという環境です」
子どもたちが自ら選び、挑戦できる環境を
「好きを追求する」ために、どのような環境づくりをしているのでしょうか。
「大切なのは、子どもたちが自由に挑戦できる環境をつくること。サッカーでは、各選手の得意なプレーに徹底的にチャレンジさせています。失敗しても、それはマイナス評価になりません。例えば、うちのクラブでは40m以上のロングスローを得意としている選手がいるのですが、彼のプレーはSNSで話題になり、専門家からも評価されています。得意なプレーを見つけて伸ばすことが、選手として、ひいては人間としての成長に何より大切だと言えるでしょう」
サッカー以外についてはどうでしょうか。
「学校のテスト勉強についても、やるかやらないかは子ども自身に決めさせています。いくら周りの大人が『文武両道、文武両道』と言っても子ども達は自ら勉強するようにはなりません。子どもたち自身が幼い頃から自ら選択し、自ら責任を持つことで、自主性が養われるのです」
激動の時代 次を見据えた教育
子どもたちを取り巻く社会環境は急激に変化しています。その中で求められることは。
「近年、チャットGPTなどAI技術の進歩によって、専門家レベルの情報を即座に手に入れることが可能になってきました。これからの社会では、情報の暗記や情報そのものの価値が薄れ、得た情報をどのように利用し、実際に行動に移せる実行力が問われる時代になります」
これからの目標を教えてください。
「好きを追求できる環境を提供し続け、自ら学び、自ら行動する選手を育てること。この点を、これからもブレずに続けていきます。『好き』を追求できる環境と、『好き』を追求する仲間たちが、子どもたちの明るさを支えています。楽し気に活動する彼らの姿こそが、クラブ最大の魅力。ぜひ一度、練習風景を見ていただきたいですね」(了)
インタビューを終えて
取材中に感じたのは、土肥氏自身が「好きなことを追求し続ける人」であるということ。地元・瀬谷区の出身で、高校卒業後にサッカーの本場・ブラジルに渡ったという行動力の持ち主だ。オーストラリアや欧州でもプレーし、海外滞在中に瀬谷インターナショナルフットボールを立ち上げた。クラブにおいても、土肥氏の情熱とエネルギーが子どもたちやスタッフに大きな影響を与えているのだろう。
これまでの学歴至上主義を覆し、好きを追求することで自発的に学び、成長する人材を育成することを目指す瀬谷インターナショナル。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。彼らの果敢な挑戦が、教育界に新たな風を吹き込むことを期待したい。