茅ヶ崎市内のアイスクリーム店・プレンティーズや温泉浴場・湯快爽快などの壁画や看板製作をはじめ、さまざまな作品を発表している市内在住の水彩画家・かとうくみさん。これまでの足跡、創作する上での世界観、茅ヶ崎への思いなどについて聞いた。
藤沢市出身。2人姉妹の次女として生まれ育った。幼少の頃から絵を描くのが好きだったが、本格的に絵とかかわるようになったのはテレビ局のデザイン会社に営業として採用されてから。
そこで画面上に文字情報を載せるテロップという手法を学び、転職した藤沢のケーブルテレビ局ではリポーターを務めながら番組のテロップづくりも担当。後に番組ガイドの表紙制作を任されるようになり、「自分の表現方法は水彩画」だと気づいたという。独学で透明度の高い絵具を使った透明水彩の技法を磨いていった。
偶然生まれるにじみやぼかしは描く上での楽しみの一つといい、その妙が、作品全体に味わいを加えている。
初の個展は灯台
初の個展は2006年。江の島の展望灯台(現在のシーキャンドル)で開催した。灯台を所有する江ノ電本社に作品を持ち込んでアピールした。
アメリカをモチーフにした水彩画を多く発表。開催時は真冬の12月だったため、「夏っぽい作品が多く、暖かそうな服の絵が良いかなと思ったけど、これが良い、湘南ぽいって声をたくさんいただいた」とかとうさん。これを機に制作のオファーが増え、水彩画家としての自信を深めていった。
自身のアメリカ好きは、中学時代に読んだ渡辺多恵子さんの漫画「ファミリー!」に端を発する。ロサンゼルスを舞台にしたホームコメディーで、ハロウィン、「チビ・ビッグTシャツ」などのアメリカ文化に胸を高鳴らせては東急ハンズで関連グッズを購入するなど憧れを募らせた。念願の留学は叶わなかったが、友人がニューヨークに住んでいたこともあり、毎年のように足を運んだ。そこで撮りためた写真をアトリエに持ち帰っては描き出し、次々に作品を生んだ。
市民生活を軽やかなタッチで描いたノーマン・ロックウェルは敬愛する画家で、作風など影響を受けた一人だ。「日常のふとした瞬間を描きたい。そこにはストーリーがある。皆さんにもそれを感じてほしいという思いで描いている」
茅ヶ崎に移住「大正解」
茅ヶ崎には21年前、次女を妊娠したことを契機に移住した。初めは周囲になじめるのかと不安を抱えていたが、幼稚園の「ママ友達」や、近所の人たちが皆優しく迎え入れてくれた。「良い人ばかりですごく助けられた。こんなにウェルカムな街なんだと驚いた。移住して大正解だった」と振り返る。
茅ヶ崎の魅力は「ローカル感。垢ぬけすぎないところ。そこは変わらないでほしい」とし、「茅ヶ崎の人たちは地元愛であふれる人ばかりだと思う。一緒になって街を愛して、皆で楽しみましょう」と笑顔で呼び掛ける。
大好きな茅ヶ崎の地で、これからも日常を描き続ける。