山北町の人形作家・露木盛枝さん(87)による和紙人形展が10月15日(日)まで町立生涯学習センターで開かれている。ユネスコ無形文化遺産に登録された「山北のお峰入り」の記念公演(10月8日(日))に合わせた企画で、お峰入りを表現する約60体の人形が並ぶ。
町内の保育園等に務め、退職して数年経った65歳頃から「ひとりでもできる趣味を」と本格的に人形創作を始めた露木さん。これまでに作った作品は4、500点を超えるという。
モチーフは都度異なるがふるさとの「まつり」と「伝統芸能」シリーズは自身の代表作。いずれも単体の人形としてでなく「場面」で表現するので、一体一体に配役がある。1つのテーマに30体以上の人形が登場することもあり、ずらりと並んだ独特の世界は圧巻だ。
「見る人に、自由に思い出を重ねてほしい」という考えから、人形に顔を描かないのも特徴の一つ。これまでも幾度となく同館で発表してきたが、精巧なデザインと、あたたかい作風が訪れる人たちの目を楽しませている。
今回、記念公演に合わせた展示を町に依頼されたことに露木さんは「何よりうれしいこと」と声を弾ませる。
初めて見たお峰入りは1953年。自身が高校生の時で、当時の県知事が山北を訪れた時の公演。その後、国指定重要無形民俗文化財に指定された時にもう1回。そして、ユネスコの無形文化遺産に登録された今回、3回目を見ることになる。「節目に立ち会えたこと、そして、展示という形でその一端に関われたことに、私も人形さんも感謝です」と話す。
来春、米寿記念の個展も予定しているが「いつまで元気でいられるかはわからない」と、今回の展示に全精力を傾け、新たに30体を追加したという。展示上方にはふるさとの園児たちのぬり絵も並び「幸せも倍増ですね」と笑顔だった。