「大井町」といえども都心から約70㎞、神奈川県の南西部にある大井町。ここに充実した設備を備え、修理、整備、鈑金・塗装、車検、ロードサービスなど、カーライフ全般をサポートする総合窓口「カーセンター足柄協同組合」があります。この社屋正面に2023年11月15日、ちょっと変わった見た目の新たな建物が出現しました。
聞けば、建物には名前があり、その名も「スマイルピット」。社屋の正面に建てられたこの建物、一体どんな目的で使われるのか、理事長の藤澤仁さんと専務理事の北村昇さんに話を聞きました―。
シンボルツリーをなくしてまで、作りたかったもの―
「スマイルピット」ができるまで、ここにあったのはケヤキの木でした。この工場は、富士山を望むロケーション。およそ40年前に工場が本格稼働してから新緑、黄葉、雪景色と、この地域に季節を告げる木と富士のコラボレーションは、それはそれは見事なもので、地域の人からも「シンボルツリー」として親しまれていました。しかし、残し続けたい想いのために、これを撤去することになったのです。
開業の原点を忘れないため
「もともとは農地だった場所に、地域のみなさんのご理解を得て、この工場を立てさせていただいた。だからこそ商売のことだけではなく、地域に笑顔を広げられる存在でなければならない」。理事長の藤澤さんはそう語ります。
しかし、40年という月日の中で、働く人も代替わりが進んで、発足当時のことを知るメンバーは少なくなりました。そこで、今働いている従業員にも工場の原点の想いを共有してほしいと考えたのです。自分たちの仕事のことだけを考えていると、対応も簡素に、そして機械的になりかねません。
技術がよくても、それではサービスの低下です。「会社は常に地域とともにある。笑顔でお客様をお迎えし、笑顔で帰っていただくのが私たちの役割―」。2人が考えたのは憩いの場づくりでした。
皆さんと育てていく場所に
工場には年間数千台もの車が持ち込まれますが、これまで待合スペースがありませんでした。そこで、待合室を兼ねた「憩いの場」を作ることにしたのです。開放感のある高い天井に、やさしい色調。室内には大型のディスプレイやドリンクコーナー、テーブルなどを設置しました。
「作業を待つお客様が使うのもそうですが、ただの待合ではありません。時には社員や地域の方々など、いろいろな使い方があっていい」と北村さん。そのためにも、名前が必要でした。考えた末に決まったのが「笑顔が集まる場所」という想いを込めた「スマイルピット」。ちょっとした集まりにも使える場所は、この地域にそう多くはありません。だからこそ、あえて、建物のデザインもほかにはないモノにしました。
- 社屋2階にもスペースがあるそうで、スマイルピットと合わせ、展示や教室など、使い方はみなさんとともに考え、育てていきたいそうです。
ケヤキは看板で生き続ける
聞けば、場所選定は一番の悩みだったとそうです。しかし、敷地内を探したとき、誰もが目について、入りやすい場所、車両の通行や作業の妨げにならないことなどを考えたとき、この社屋正面しかなかったそうです。
藤澤さんは「ケヤキは木材にして、今後、建物の看板などに活用するため保管しています。こうした理由なら、木も分かってくれるのではないかとも思っているんですよ」と話します。
金太郎は元気のシンボル
ところで、各所にあるこの金太郎イラスト。これは何を意味しているんでしょうか。
工場がある大井町は、足柄上地域にあります。足柄といえば思い出すのは、そう、足柄山の金太郎。藤澤さんは「金太郎は元気印のシンボルでしょう。ここに持ち込まれた車、ここに来た人が元気になって戻っていってほしいと願っています。また、従業員にも、金太郎の笑顔に負けないように、いつも明るく元気でいてほしいのです」。
とんがり屋根の建物を調べたら、地域に対する感謝と従業員のやさしさにふれることができました。