国の文化審議会が11月24日、小田原市と箱根町に所在する建造物計7件を新たに登録有形文化財に登録するよう文部科学大臣に答申した。
別荘建築の好例
小田原市からは、国府津にある旧石田家別邸の主屋と洋館の2件が選ばれた。三井物産の代表取締役や旧国鉄総裁を務めたことで知られる実業家石田禮助(れいすけ)(1886―1978)が購入した1924(大正13)年建築の主屋と、長い海外生活で慣れ親しんだ洋風の住まいを作ろうと41年に増築した洋館。それぞれ「上質な近代和風建築」「戦前の別荘建築の好例」と造形の価値を称された。
自然・人工美の調和
箱根町からは、強羅の庭園「神仙郷」内にある建築群が選ばれた。世界救世教教祖の岡田茂吉(1882―1955)が第二次世界大戦中から戦後にかけて、理想郷として手掛けた神仙郷。その一環で建築した茶室「山月庵」や、伝統芸能上演のための「日光殿」(旧早雲寮)、収集した美術品を公開する箱根美術館本館、別館、休憩所の5件。美術品や自然、建物の調和を目指した設計で、審議会では山月庵と日光殿を「造形の規範となっている」、本館と別館、休憩所を「国土の歴史的景観に寄与している」と評価している。
今回の登録で国登録有形文化財は小田原市29件、箱根町46件となる。