鎌倉市大町の樹林に囲まれた場所に佇んでいるのが「安国論寺（あんこくろんじ）」。1253年（建長5年）に鎌倉入りした日蓮聖人が、最初に草庵を結んだ霊跡に建てたと伝えられているお寺です。鎌倉市内で有数の「花の名刹」としても知られており、季節ごとに多彩な花々を楽しむことができるんですよ。どんな魅力が隠されているのか？実際に訪ねてみました。

1253年（建長５年）に創建された日蓮聖人ゆかり「安国論寺」

鎌倉駅東口の南東、逗子駅の方向へ向かっていくと辿り着くのが安国論寺。1253年（建長5年）に、安房国（千葉県の清澄寺）で立教開宗した日蓮聖人が鎌倉での布教を志し、松葉ヶ谷（鎌倉市大町と逗子市名越の地域名）の岩窟に草庵を結んだのが始まりと言われています。日蓮聖人は、この地で約20年間過ごし「立正安国論」を執筆。境内には、立正安国論を起草する場所となった御法窟があり、日蓮聖人の姿を刻んだ像が祀られています。

山門をくぐると左手に受付があり、拝観料を箱に入れて境内に進んでいきます。参道の左手に並ぶ石灯籠は、増上寺（東京）の徳川家御霊屋から移されたものです。

四季折々に咲く花木を満喫

安国論寺の境内には、数多くの花木が植えられており、鎌倉市内有数の「花のお寺」としても知られています。

４月頃の境内。春もみじとして知られる「出猩々（でしょうじょう）」と紫の花は「玄界ツツジ藤万葉」（同寺提供）

中でも代表的なのは、鎌倉市の天然記念物に指定されている「妙法桜」。御小庵の横に植えられている山桜で、八重咲きで純白。日蓮聖人の桜の杖が根付いたとされ、樹齢は750年ほどと言われています。この他にも、山茶花（さざんか）が市天然記念物に指定されています。

老木の気品が漂う妙法桜（同寺提供）

境内に咲く花木を季節ごとに紹介します。

絶景スポット！富士見台からの眺め

境内には「富士見台」と呼ばれる絶景スポットがあります。富士見台は、熊王殿脇の急な石段を登った先にあり、鎌倉駅～由比ヶ浜海岸を一望することができます。晴れた日には、伊豆半島や富士山も眺望でき、その先は鐘楼や南面窟を巡るちょっとしたハイキングコースになっています。

おやすみ処でゆったりと

境内札所横には「おやすみ処」があり、抹茶（500円）とこぶ茶（350円）を堪能することができます。どちらも小菓子付きで、富士見台からの景色を見た後に、落ち着いた空間でゆったりとした時間を過ごしてみては。

海外仕込みの地域貢献

平井智親さんは安国論寺の52代目住職。鎌倉に来たのは2018年で、それまでの26年間はハワイやロンドン、カリフォルニアなど世界各地で国際布教師として活動していました。

大切な思い出として記憶に留めているのは、真珠湾攻撃から75年が経った2016年に開催された日米合同追悼式典。当時ハワイの日蓮宗別院にいた平井さんは、日米合同で初となる追悼式典の実現に寄与しました。「亡くなった人はみんな戦争の犠牲者で、日本人65人も対等に弔うべき。真珠湾での追悼式典中に米軍演奏の君が代が流れた瞬間は、感動で一生忘れることのできない時間になりました」と、当時の情景を教えてもらいました。

安国論寺の住職となった現在は、キリスト教徒の多い地域で重視される「地域貢献活動」に尽力してきた経験を生かした活動に注力しています。毎月第1日曜日の12：30～13：30に開催している「おてら食堂」は、地元の他の団体と共催で、近くの農園や学童、大学とも連携し「誰でも食と交流ができる地域食堂で、お寺を知ってもらうきっかけにもなれば」と話しています。中学生以下無料で大人５００円。事前予約制。

770年の歴史と、当時と変わらない自然が残されている安国論寺。平井住職は、「鎌倉の魅力がいっぱい詰まったお寺です。ゆっくり楽しんでほしいですね」と話しています。

拝観時間、拝観料

拝観時間／午前9時～午後4時30分（祝日以外の月曜閉門）

拝観料／100円

樹木葬「かまくら樹陵 松葉ヶ谷の杜」

安国論寺の境内に、樹木葬「かまくら樹陵 松葉ヶ谷の杜」が2024年２月に開所しました。安国論寺の樹木葬とは、花と緑に囲まれた庭園の中で専用の個別区画に眠るもので、テレビ番組『逆転人生』や『情熱大陸』などに出演した庭園デザイナー・石原和幸さんが監修。永代供養の仕組みによりお墓の後継ぎや墓じまいが不要で、残された人に迷惑をかけたくないという方に選ばれています。また大切なペットとお墓に入ることもでき「亡くなってからも一緒の場所に眠りたい」という要望にも応えます。見学予約・資料請求は、㈱アンカレッジのホームページまたは0120-37-7676へ。

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