麻生区黒川の菩提所として1400年頃に開創された「雲長山 西光寺」(山中聡英住職)。同寺本堂の天井には、全国でも珍しいとされる墨絵で描かれた巨大な「雲龍図」があり、2024年、特別公開が予定されている。一般公開されるのは12年に一度、辰年だけ。時期は春と秋の2回を予定。「同寺の宝を多くの人に見てもらえれば」と山中住職は願いを込める。
曹洞宗(禅宗)の寺院である同寺。1668年に造立された市内最古の「薬師如来」の石仏が市の地域文化財に認定されている。
同寺本堂の天井に描かれている「雲龍図」。大きさは縦横4・5m、彩色師・姫路青峯氏の作。厚さ1寸(3・3㎝)の香杉の板に、直に胡粉と言われる牡蠣の殻を砕いた粉末と墨で昔ながらの技法で描かれたものだ。山中住職によると「墨だけで描かれた龍は力強く、生命力にあふれている。龍の顔を見ながら堂内を回ると、不思議なことに龍の大きさが変化し、まるで龍が生きているようにその姿を変える」と解説する。
檀家からの寄進
絵図は、2000年に同寺の檀家である故・志村虎吉氏によって寄贈された。両親の50回忌の供養として「何か寄進したい」と申し出を受けた山中住職。龍は仏教を守護する八部衆の一つで、法を説く大切な場を天空から見守ってくれる存在として、龍神が天井に描かれることが多いこと。龍神は水を司る神とされ、火災除けや、農家にとって雨ごいの御利益があることから、同寺の本堂が江戸時代末期に火災で全焼していた歴史があり、本堂を守ってもらおうと、龍の絵を提案した。
その提案を志村氏が快諾。格子天井だった一部に龍を描いてもらう予定だったが、志村氏が一枚板の天井絵を逆に提案。山中住職の旧知の仲だった姫路氏に制作を依頼した。
「寺の宝物に」
姫路氏によって約3年の月日をかけて完成した絵図。「過去に拝観された方から『ここまで大きな墨絵の雲龍図は見たことがない』と言っていただいたこともあった」と山中住職。志村氏からは「お寺の宝物にしてほしい」と寄進の際に改めて思いを託されたという。
完成後の2001年1月と12年に、地元住民向けに一般公開して以来、2024年で3回目の特別公開となる。「いつ自分に何があるかわからない。だから、できるときにできることをしたい。公開時には、背景などを知っていただけるよう解説もしたい。良い御縁をいただければ」と山中住職は思いを語る。
公開日などの詳細は、春に同寺ウェブサイトで告知を予定。