中国の伝統芸能で沸かす
大きな扇やマントの袖で顔を隠す。次の瞬間には、別の仮面へと変化。そんな中国の伝統芸能「変面」を独学で習得した高校生がいる。「川崎変面少年 悟空」と名乗るのは、多摩区菅仙谷に住む菅原一将さん(17)=高津高校3年=だ。
わずか5分間で9枚の仮面が登場
孫悟空やパンダ、女性など、わずか5分間で9枚の仮面が登場する。8月3日には、菅原さんが住む地域の夏祭り・星が丘納涼祭のステージに立った。「すごい」「どうやっているの」と驚いた表情を浮かべる観客たち。如意棒をぐるぐると回したり、ササを食べたりと、仮面に合った動きにもこだわる。
最後に素顔を見せると、多くの拍手が沸き起こった。同納涼祭の実行委員長を務める今井登志夫さん(73)は「地元のために納涼祭を盛り上げてもらい、とてもうれしい」と思いを話した。
動きを再現したい
「何だ、これは」。家族で訪れた横浜中華街の春節祭。初めて変面を見たときの衝撃を振り返る。当時はまだ西菅小学校の3年生だった。だが「やってみたい」と思うと動画投稿サイト「ユーチューブ」などを見て秘技を研究。教えてくれる人がいない中、独学で動きを再現しようとしたという。大道芸や京劇の教室にも足を運び、工夫を重ねた。小学5年生の時、見よう見まねの状態で、最初に披露したのは近くにある老人ホーム。高齢者から「かっこよかったよ」と声をかけられ、形になったことの喜びを感じた。6年生で同級生にも披露すると「すごく驚かれた。でもそれが大きな自信になった」。その後も各地で舞台に立ってきた。星が丘納涼祭に初めて登場したのは南菅中学校1年生のとき。「地元の祭りで、歓声を浴びた記憶が頭に残る。手拍子もあり、見ている人との一体感がたまらない」と菅原さん。4回目となった2024年夏も「過去一番の盛り上がりだった」と充実した表情を見せた。
好きな道、極め
子どもの頃から大の映画好き。夢は映画監督になることで、表現を学べる大学への進学を目指し勉学に励んでいる。菅原さんは「変面を続けてこられたのも、好きだったから。表現することで、誰かに驚かれたり、楽しんでもらえたり。そんな感動を与えられるのは映画も同じだと思う」と思いを語る。そばで努力を見てきた母親の紀美さんは「変面をしている姿は、生き生きしている。好きなことをやって、今後も輝いていてほしい」とエールを送った。