観光以上、移住未満。近年、特定の地域と継続的かつ多様な形で関わる人が増えています。居住地にない魅力を求める二拠点生活者として、地域課題を解決する事業者として、そこでしか手に入らない特別な経験や品物を求めて―。地方都市の人口減少や高齢化が著しい中、こうした人たちは新たな担い手として注目されています。今回ご紹介する倉地一輝さんもその一人。親族の物件があった縁で、山北町で不動産取引とリフォーム・庭づくりなどを手掛ける株式会社無垢を立ち上げました。

はじめての町は、前進あるのみ!
大学在学中に宅建の資格を取得し、卒業後は不動産取引の会社に勤めていた倉地さん。自分を信頼して仕事を任せてもらうには、その地域にどれだけ入り込めるかが勝負の分かれ目です。当時から目に入る場所は迷いなく訪問し、顔を覚えてもらいながら人脈を広げていました。そうした経験は新たな拠点づくりにも役立ちました。
- 山北で会社を立ち上げて2025年で3年目になりますが、そのフットワークの良さを生かし、人とのつながりを深めています。

自然と人のやさしさが二枚看板
圧倒的な自然の美しさと人のやさしさがあるまち―。自然に触れ、人に触れるたびに「山北に来て本当によかったな」と感じていると言います。倉地さんはこの魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと町の移住定住促進イベントに協力したり、商工会に入って地域活動に取り組んでいます。
- 小さな町は活動組織もそれほど大きくありませんが、「町をよくしたい」という思いは人一倍。熱い仲間との時間は宝物です。

暮らし方をイメージしてもらう
不動産部門の仕事では、空き家見学ツアーを企画して町に興味がある人を呼び込んでいます。移住先として、事業地として、別荘地としてなど、人それぞれ目的は違いますが、相手がやりたいことを詳しく聴き、その人の興味や希望に近い暮らし方をしている人を物件と一緒に紹介していく内容。
- 物件を気に入っても、その地で長く過ごすことを考えた時、人とのつながりを無視することはできません。移住等の決断前に、業者としての自分の説明だけでなく、検討者のイメージと近い暮らし方をしている人の生の声を聴き判断してほしいという思いがあります。
自分がやってくるまで町に唯一の不動産屋さんだった師匠と情報交換をしながら町内からの依頼にも柔軟に対応しています。

待つのではなく、「自ら行く」が吉
「小さな田舎町は出来上がったコミュニティがあり、後から入っていくのは難しい」とよく言われますが、倉地さんは山北町でそのように感じることはないといいます。前職の仕事柄いろいろな町を巡ってきましたが、人のやさしさはナンバーワンと感じているそうです。
- ただし、ポイントは自分から臆せずコミュニケーションを取っていった方がいいということ。話しかけられるのを待つより、「いろいろ教えてください」と飛び込んでいけば、「人の輪はどんどん広がりますよ」とにこやか。
山北町に限ったことではありませんが、少子化、高齢化はそこで暮らす住人の誰もが感じていること。新しい人が来ることは町の活力を呼び覚ますことにもつながり、大歓迎なのです。

「山北町で会いましょう」
町の職員さんをはじめ、住民組織のやまきた定住協力隊のメンバーは心強い味方です。季節によって表情を変える美しい自然。倉地さんは「ぜひ、一度遊びにきてください」と話しています。


















