観光以上、移住未満。近年、特定の地域と継続的かつ多様な形で関わる人が増えています。居住地にない魅力を求める二拠点生活者として、地域課題を解決する事業者として、そこでしか手に入らない特別な経験や品物を求めて―。地方都市の人口減少や高齢化が著しい中、こうした人たちは新たな担い手として注目されています。
直近はニュージーランド在住。予備知識ゼロで飛び込んだ「やまきた」が最高だった話

「なぜ山北町に?」。インタビューに応える鳥羽絵美里さん
東京でウェブディレクターとして働く鳥羽絵美里さんが、家族とともに二拠点生活の地として選んだのは山北町でした。本人曰く「来たことも、聞いたこともないし、何も知らなかった」とのことですが、山北町を選んだ理由は何なのか、そしてどんな時間を過ごしているのか―。町の定住対策課の職員とともに話を聞きました。あいにく取材日は強い寒気の影響で関東地方でも大きく天気が崩れ、昼から雪が降り続いていました。厳しい冷え込みもありましたが、鳥羽さんはフードで頭を覆いながら明るい笑顔で登場してくれました!
町職員「何でやまきただったんですか?」

「東京とは違う、のんびり過ごせるもうひとつの実家のような場所がほしい」。事前に家族で話し合っていた条件は、「東京から1時間程度」のみ。母親が中心となって物件探しが始まりました。当初は神奈川に絞っていたわけではなかったそうですが、お気に入りの場所を見つけた今、振り返ってみれば、母親の実家が静岡県三島市で、そのルート上でちょうどいい位置にあったのが山北町。町の空き家バンクが参考になったそうです。
- ここで空き家バンクをおさらい 町内にある空き家、空き地等(以下、空き家等)の賃貸・売却を希望する方から登録いただいた情報を、空き家等の利用を希望する方に紹介する制度です。町内に所在する空き家等の有効活用及び定住促進、地域の活性化を目的としています。町では、(公社)神奈川県宅地建物取引業協会、(公社)全日本不動産協会神奈川県本部と協定を結んでいますので、物件の調査・案内・契約などの手続きを安心して行うことができます。
ここからはとんとん拍子で進んだそう。実際に物件を確認し、周辺環境なども大いに気に入りました。地域の人たちとも関わりながら第2の拠点づくりが始まりました!
鳥羽さん「困った点は、、、うーん、ないですね」

現在、基本的には週末に山北に帰ってくる生活とのこと。もともと地域活動やイベント参加などを楽しめるタイプ。一つの出会いが人から人へとどんどんつながり、大きな輪になっています。
- 「野菜づくりの手伝いをしたり、ご近所さんと夕食を共にしたり。多分わたし、人に会いに山北に帰ってきているのだと思います」と鳥羽さん。町内のカフェやレストラン、酒蔵などを巡るのも好きで、「時間がかかるんですけど、結構歩いて行きますね」とにこやか。
魅力は次々でてくる一方で、散々考えた挙句にでた不便な点は「鉄道が1時間に1本程度ということですかね、でも、近くのお店でつぶせちゃうんですけど」と。山北に来る前はニュージーランドでの暮らしが長かったそうで、最大都市のオークランドでも、場所によっては最寄りの買い物スポットまで30分など当たり前。あちこちにお店がある山北を不便などとは感じようもないそうです。
「何か面白いことをやってみたい」

縁あって山北を知り、気に入って、大好きな場所になった鳥羽さん。家族とともに「せっかくだから何か面白いことをやりたいね」と話しているそうです。それが、みんなが集える地域コミュニティなのか、お店なのかはまだ分かりません。でも、そんな思いになる位、山北を好きになっているのが今の鳥羽さん。町職員も「地域のみなさんと一層交流を深めて、町を盛り上げるエネルギーになっていただきたい」と期待を寄せています。
移住、二拠点生活。自分が大切にするものは何か

最後に移住検討者向けに何かメッセージを、とお願いするとこんな答えが返ってきました。「いろいろな町がありますが、そこを楽しめるかどうかは、結局自分次第。何を求めてその町にやってきたかで、町の見え方や印象って変わると思うので」。確かに、ないモノばかりを気にしていると、大好きなところを見失いかねません。
都心から近くて海・山・川も近くにあって人もあたたかい―。鳥羽さんの「山北ライフ」は、まだまだ始まったばかりです。
経験と資格を生かして山北町で独立開業!人と人の絶妙な距離感に感じる町のあたたかさ
倉地一輝さんも二拠点移住のその一人。親族の物件があった縁で、山北町で不動産取引とリフォーム・庭づくりなどを手掛ける株式会社無垢を立ち上げました。

はじめての町は、前進あるのみ!
大学在学中に宅建の資格を取得し、卒業後は不動産取引の会社に勤めていた倉地さん。自分を信頼して仕事を任せてもらうには、その地域にどれだけ入り込めるかが勝負の分かれ目です。当時から目に入る場所は迷いなく訪問し、顔を覚えてもらいながら人脈を広げていました。そうした経験は新たな拠点づくりにも役立ちました。
- 山北で会社を立ち上げて2025年で3年目になりますが、そのフットワークの良さを生かし、人とのつながりを深めています。

自然と人のやさしさが二枚看板
圧倒的な自然の美しさと人のやさしさがあるまち―。自然に触れ、人に触れるたびに「山北に来て本当によかったな」と感じていると言います。倉地さんはこの魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと町の移住定住促進イベントに協力したり、商工会に入って地域活動に取り組んでいます。
- 小さな町は活動組織もそれほど大きくありませんが、「町をよくしたい」という思いは人一倍。熱い仲間との時間は宝物です。

暮らし方をイメージしてもらう
不動産部門の仕事では、空き家見学ツアーを企画して町に興味がある人を呼び込んでいます。移住先として、事業地として、別荘地としてなど、人それぞれ目的は違いますが、相手がやりたいことを詳しく聴き、その人の興味や希望に近い暮らし方をしている人を物件と一緒に紹介していく内容。
- 物件を気に入っても、その地で長く過ごすことを考えた時、人とのつながりを無視することはできません。移住等の決断前に、業者としての自分の説明だけでなく、検討者のイメージと近い暮らし方をしている人の生の声を聴き判断してほしいという思いがあります。
自分がやってくるまで町に唯一の不動産屋さんだった師匠と情報交換をしながら町内からの依頼にも柔軟に対応しています。

待つのではなく、「自ら行く」が吉
「小さな田舎町は出来上がったコミュニティがあり、後から入っていくのは難しい」とよく言われますが、倉地さんは山北町でそのように感じることはないといいます。前職の仕事柄いろいろな町を巡ってきましたが、人のやさしさはナンバーワンと感じているそうです。
- ただし、ポイントは自分から臆せずコミュニケーションを取っていった方がいいということ。話しかけられるのを待つより、「いろいろ教えてください」と飛び込んでいけば、「人の輪はどんどん広がりますよ」とにこやか。
山北町に限ったことではありませんが、少子化、高齢化はそこで暮らす住人の誰もが感じていること。新しい人が来ることは町の活力を呼び覚ますことにもつながり、大歓迎なのです。

「山北町で会いましょう」
町の職員さんをはじめ、住民組織のやまきた定住協力隊のメンバーは心強い味方です。季節によって表情を変える美しい自然。倉地さんは「ぜひ、一度遊びにきてください」と話しています。




















