人口減少が続く神奈川県・山北町の定住対策が今年2018年で10年目を迎えました。総人口を構成する自然増減、社会増減ともに20年以上連続で減少し高齢化も進んでいる中、ここ数年、若者の移住希望が増加。山北町の担当者は「新たな手ごたえを感じている。全力で応援したいです」と意気込みを見せます。
定住対策10年目を迎えた山北町の取り組みや移住者の声を紹介します。※この情報は2018年11月3日現在のもの
やまきた定住相談センター設立で動き活発化
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2018年3月に町が主催した移住者交流会
山北町は、1889年の東海道線山北駅の開業とともに発展。1955年の町村合併で人口約1万7千人まで増えました。その後は減少が進み、現在は1万人割れ目前で、総人口に対する65歳以上の割合を示す高齢化率は神奈川県平均(24・9%)を大きく上回る37・7%。湯河原・真鶴・三浦に次ぐ高い水準です。
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町域の9割が山岳地帯の山北町(大野山からの眺望)
年間の死亡数が出生数を上回る自然減と、転出が転入を上回る社会減が同時進行するなか、山北町は09年に定住総合対策事業大綱を策定し、同年4月に定住対策室(現・定住対策課)を設置。「やまきた定住相談センター」を併設し窓口でのワンストップサービスを開始しました。
その後、地元不動産業者と自治会長経験者、移住経験者らでつくる「やまきた定住協力隊」と二人三脚で事業を進めてきました。
移住者交流会や暮らしツアーなど企画満載
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2018年10月の暮らしてみようツアーに参加した酪農家志望の20代カップルと、獣医を目指す大学生の娘と母(右)
空き家バンクのほか各種助成制度創設、空き家見学ツアー、やまきたで暮らしてみようツアー、婚活パーティー、お試し住宅整備、移住者交流会、分譲地販売、企業・商業施設の誘致など手広い定住対策を展開してきました。
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最大14週間滞在できる移住者向けのお試し住宅「ホタルの家」
定住対策マンションは入居待ち
14年には、ユーミーらいふグループと連携し、山北駅前に子育て世帯向け地域優良賃貸住宅を整備。42戸の居室は入居待ちが出る人気を見せています。今年2018年6月に3期目に入った湯川裕司町長は、引き続き定住対策に力を注ぐ方針を示しています。
共和地区が移住者に人気?
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廃校となった共和小学校は様々な〝夢実現〟のため地域活動拠点として活用されている
こうしたなか、大野山の共和地区に移住者が相次いでいます。共和地区は、自治会組織とNPO、財産区が連携し、福祉バスの運行や水源林の保全・活用、雇用促進にも取り組む90世帯が住む集落です。
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共和小学校入口の看板 「鉄道の町」として栄えた山北町にとってSLは町のシンボル的存在
地域への移住希望者に空き家や仕事などを世話する杉本君雄さん(70)は「夢を持って移住する人を応援する風土があります」と話します。
若者が山北町で〝夢実現〟
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共和地区に移住して結婚し、第一子が誕生した山田健太さん・陽子さん夫妻
水源地交流で地域と関わった学生が山で働くようになり、卒業後に移住。林業復活をこの地でめざしたいと女性が移住して結婚しこの夏、出産しました。
森林保全に繋がる山地酪農を開牧した20代の女性は、NPOの仕事を手伝いながら地元の支援を受け、夢を実現。この酪農家に憧れた20代の女性とその母親も共和に移住しました。いずれもこの3年以内の出来事です。
移住者の声
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藤沢市から移住してきた吉田さん親子(共和の森小学校にて)
藤沢市から移住した吉田洋子さん(56)は山北町を選んだ理由に「人のよさ」をあげます。「役場も共和も人の第一印象が抜群でした。地元の人がやりたいことを応援してくれる。買い物はネットでもできます」と、移住生活を満喫しています。
「自己実現」の地方移住へ
シニアから若者も 山北町定住対策課の山口裕之課長は「従来はシニア層が中心だったけれど、最近は目標を持った若い世代からの問い合わせが増えています。できる限りの応援をしたい」と、手ごたえを感じています。
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移住体験談と山北町の魅力を語る酪農家の島崎薫さん(やまきたで暮らしてみようツアーにて)
自然回帰を求める田舎暮らしの志向から自己実現の手段へと、地方移住が多様化しています。自己実現と地域を引き合わせる取り組みも、定住対策の新たな領域として注目を集めそうです。
情報元:タウンニュース記事はコチラ