日本を代表するおとぎ話「浦島太郎」は全国各地に伝説が残されている。神奈川本町の慶運寺、通称「浦島寺」もそのひとつ。しかし、良く知られるあらすじとは少し違うようで――。
横浜に残る伝説では、亀は子どもたちにいじめられていたのではなく、太郎が釣り上げたという設定。海に返そうとした亀は美女(龍女)に変化して太郎を龍宮城で歓待するが、故郷を思い帰郷することを知った龍女は玉手箱とともに観音像を手渡す。太郎が舞い戻ったのは約350年後の故郷で、すでに亡くなっていた父母のために白幡の峰の墓に御堂を建てて観音像などを納める。その後、太郎と龍女は再会して観音菩薩から永遠の命を授かり、人々の願いを叶える手伝いをするようになる――。
この観音像こそ、同寺に伝わる「龍宮伝来浦島観世音像」だ。亀の甲羅に観音菩薩が乗ったいで立ちで、江戸時代の大火で類焼した観福寿寺の本尊を、同寺に安置したものだという。
境内の観音堂に収められた像は通常戸の隙間から眺めることしかできないが、12年に1度の子年開帳時にだけ間近で拝観できる。同寺には観音像の両脇に立つ浦島大明神立像や亀化龍女神像立像、勅願所古跡の碑など、伝説ゆかりの品々が所蔵されている。