川崎市で観光といえば、近頃は「工場夜景」を思い浮かべる方も増えてきました。京浜工業地帯の中央に位置する川崎臨海部の工場プラントから照らし出される明かりは、季節や時間帯で様々な光景をつくりだしています。人気の屋形船ツアーに乗船してみました。
夏場は毎週土曜日運航
「川崎工場夜景屋形船クルーズ」は、6月~11月は毎週土曜日、12月~5月は毎月第2、第4土曜日に行われています。このツアーは、JR川崎駅東口・川崎日航ホテル前に集合後、川崎区塩浜の船着き場へバスで移動し、その後、屋形船に乗船。約2時間かけて、川崎工場夜景を堪能、最後は川崎駅周辺で解散するというツアーです。
屋形船を運航する長八海運㈱は、屋形船のほか、釣り船も所有。釣り愛好家には、なじみ深い会社です。
ツアーの定員は45人で最少催行人数は20人。「川崎工場夜景ナビゲーター」と呼ばれる市民ガイドが同乗し、解説を行います。ナビゲーターは、川崎産業観光検定試験(2016年~ようこそかわさき検定)に合格し、ガイド養成講座や川崎産業観光ガイド研修を受講し、その後、ツアーガイドとして経験を積んだベテランです。ナビゲーターの養成に関わる川崎市観光協会によると、現在、川崎工場夜景屋形船クルーズでは4人のナビゲーターが活躍しています。
夏の自由研究にも
工場夜景は、都会のイルミネーションのように、見てもらうためにライトアップされたものではありません。それぞれの工場が操業のために必要な明かりを灯しているのです。にもかかわらず、人々の心を捉えるのはなぜでしょうか。理由のひとつに、昼間の姿からは想像することができない、夜の幻想的でまるで未来都市のような美しい景色にあるからだとも言われています。
川崎市観光協会の安永太郎観光推進部長によると、ツアー参加者の多くが、カップルや女性同士の仲間。また、「様々な表情を収めたい」と願うカメラ愛好家の常連の姿も見られるといいます。カメラといえば、過去にはプロカメラマンと巡る「川崎工場夜景撮影ツアー」も実施され、大好評だったそうです。
夏休みになるとお子様連れ家族も乗船します。工場夜景は自由研究としても活用され、工場夜景を見た子どもが後日、ペットボトルを使い、プラントの模型作りに挑戦したり、有害なガスを排出時に燃やして無害化する炎(フレアスタック)をヒントに、環境学習のテーマへ発展させるケースもあります。
わが国の経済を支えているエネルギーを感じる!
夏場の出航は日没前。屋形船は自転車なみの速度で進むため、日の入りとともに刻々と変化する工場夜景を楽しむことができます。参加者の一人は「日本の経済を支えるエネルギーを感じた」といい、別の参加者は「炎の温かさを体で感じることができた。五感で楽しめるのも魅力」と語ってくれました。