太田 順子(おおた じゅんこ)さん・寿夫(としお)さん
茅ヶ崎市鶴が台在住。夫婦そろってサザンオールスターズの大ファン。
茅ヶ崎がサザン一色に染まった「サザンオールスターズ茅ヶ崎ライブ2023」の直前である2023年7月に愛知県名古屋市から移住。
明るい性格とフットワークの良さで、地元となった聖地・茅ヶ崎での生活を日々楽しんでいる。
2023年の茅ヶ崎はサザンに燃えた
勝手にシンドバッド、HOTEL PACIFIC、ラチエン通りのシスター・・・
これまでサザンオールスターズが世に出した名曲たちの歌詞には、ボーカル桑田佳祐さんの故郷である茅ヶ崎の地名や名所が多く散りばめられています。
歌詞だけでなくシングル「I AM YOUR SINGER」や「ピースとハイライト」のジャケットにも茅ヶ崎の風景が用いられたこともあり、茅ヶ崎は古くからサザンファンにとっての憧れの地、“聖地”であり続けています。
2023年9月には、そんな聖地・茅ヶ崎で10年ぶり3度目の凱旋ライブが4日間にわたって開催。
多くのサザンファンが茅ヶ崎に集まり、普段はのんびりした空気漂うビーチタウンが熱気と高揚の渦に包まれました。
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茅ヶ崎ライブ2023の会場となった茅ヶ崎公園野球場。突き抜けるような晴天の下、多くのファンが集結し開演の時を待った。
興奮冷めやらない中、約1か月後の10月にサザンビーチちがさきで行われた「茅ヶ崎サザン芸術花火2023」。サザンオールスターズの楽曲にシンクロして世界最高峰の花火が打ち上がるこのイベントは、毎回3万人以上の動員を記録するなど、今や全国の花火イベントの中でも有数の人気を誇るものとなっています。
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サザンの音楽にシンクロして打ち上がる花火たちは正に圧巻の一言。
そんなビッグイベントが立て続けに開催された2023年、サザン好きが高じて茅ヶ崎に移住してきたのが今回インタビューした太田順子さんと寿夫さんご夫婦です。
“サザン=楽しい”のイメージ。人生のイベント全てにサザンがいる
ご夫婦そろってサザンファンであることは言うまでもありませんが、中でも妻の順子さんは「サザンがデビューした頃から好き」という筋金入りのファン。
「わたしが中学校3年生のときだったかな。修学旅行に行ったときはバスの中で『今何時!』って大合唱。放課後も教室の窓を閉めて、ホウキをギターに見立ててみんなでサザンを歌って盛り上がってました。キラキラして楽しかった青春時代にサザンに出会ったから、今でも“サザン=楽しい“のイメージです」
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当時のことを懐かしみながらサザンの思い出を話す順子さん。手元には「桑田佳祐」と書かれた銀テープが。
サザンのライブ初参戦は1980年の西武球場。
それからは家の近くである名古屋でのライブを中心に、結婚してからは全国を飛び回るように。「年末は年越しライブで新横浜まで行ってしまうので、娘からしたら大晦日はお母さんが家にいないのが普通でした(笑)」
お二人は当時から何度も茅ヶ崎に訪れていたそう。
どこを巡られたのかと聞くと「まずはサザン神社ですよね。何回行ったか覚えていないくらい。もちろん神社の創設者であるお茶の小林園さんにも伺って御朱印ももらいました。サザンCは毎年来て写真を撮っていて、これが何歳のわたし、これが何歳のわたしとパラパラ漫画にできそうなくらい写真があります(笑)。あとはもう閉店しちゃったけど、清月さんで佳祐ドッグも食べたりしました。お土産にはエトアール洋菓子店さんのサザンサブレ。今でも友達へのお土産やお礼を送るときはこれを買ってます。サザンファンでなくてもプレゼントできるので助かります」
「訪れるたびに感じていたのは、とにかく茅ヶ崎って街全体がサザン好きという感じ。それがファンにとってはたまらないですね。やっぱり茅ヶ崎は特別なんです。私たちみたいに古い人にとっては特に。茅ヶ崎に来るといつも心の中で『ありがとねー!』って叫んでました」
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2013年に訪れた際にサザンCで撮った記念写真。まさか10年後に茅ヶ崎に移住するとは夢にも思わなかったはず。
勝手にシンドバッドに心ときめかされてからずっと「私の人生のイベント全てにサザンがいる」と楽しそうに語る順子さん。
「息子が結婚する時には、絶対に式でサザンの『心を込めて花束を』をかけてね、とリクエストしていたんです。でも結局、式は挙げずに結婚しちゃった。そしたら娘が気にしてくれてたんでしょうね、自分の結婚式でその曲をかけてくれて。流れた瞬間、息子は大号泣していました。後で娘に聞いたら息子はずっと気にしていたみたいで、一言『ありがとう』って言ってくれたらしいんですよ」
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結婚式でサザンが流れたときの息子さん。周囲からは「こんなにお兄ちゃんが泣いている結婚式は初めて見た(笑)」との声が。
順子さんの一番好きなサザンの曲は“希望の轍”。
「だから茅ヶ崎駅のホームは最っ高!あの発車ベルを何回録音したか分からないです。上りのメロディが曲のイントロ部分なんですけど、終わるタイミングがちょうど桑田さんがシャウトするところだから、いつも私も声を出したくなっちゃう」
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2017年に参戦した桑田さんのライブ
一方の寿夫さんは結婚するまでサザンファンではなかったそう。「ファンになったのは完全に妻の影響で、いつの間にか洗脳されてました」と笑います。
「当時はどちらかと言えばユーミンが好きで、ユーミンの曲にまつわる場所は色んなところに足を運んでいました。サザンのライブは結婚してから妻と一緒に行ったのが初めて。でもサザンのライブに行くと印象が変わっちゃう。やっぱりサザンのライブはとにかく楽しいんです。思い出深いのが最初に行ったライブで聴いた“みんなのうた”。自分でも不思議だったんですけど、イントロを聴いた瞬間に涙が出てきちゃいました。それからもうサザンの虜です(笑)」
胸騒ぎの茅ヶ崎!ずっと住みたかった聖地への移住を決断
太田さんご夫婦が茅ヶ崎に移住を決めたのは2022年のこと。
順子さんは「いつからか分からないほど昔から、ずっと茅ヶ崎に住みたかったんです。湘南の他の街ではダメ。住むなら絶対茅ヶ崎、って思っていました。勤めていた保育園を定年退職する時期が近づいてきた頃に、そんな話をちらっと友人に話したら『思い立ったら行動だ!』って言われちゃって。興味本位で家探しの相談窓口に行ったら候補となりそうなマンションがいくつか見つかり、徐々に移住したい気持ちが強くなっていきました」
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“思い立ったら行動”幸せをつかむためのマジックワード
そこからトントン拍子に話は進み、候補物件のモデルルームに足を運んでみることに。
「最初は海の近くに住みたくって。でも海側のマンションだと高すぎて手が出なくて、結果今住んでいる茅ヶ崎北部の物件に決めました。最初はやっぱり山側は敬遠していたんですが、近くにスーパーがあったり住むにはこちら側がいいかなって。最終的には、富士山が見えるこの見晴らしの良さに惚れ込んで購入を決定しました」
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季節や時間帯によって異なる表情を見せる富士山。「今日の富士山はどうかな?」と窓の外を眺めるのが太田さんご夫婦の楽しみだそう。
順子さんが茅ヶ崎へ移住することを友達に報告すると「みんなびっくりでしたよ。『ほんとに夢をかなえたのねー!』と自分のことのように喜んでくれました。その後サザン仲間のLINEグループにも報告したんですが、そちらはまさかのノーリアクションでした (笑)」
ちなみに、移住を決めるにあたっては茅ヶ崎市が実施しているオンライン移住相談を利用した順子さん。
「茅ヶ崎について調べてるうちに移住相談の存在を知ったんです。『えー!こんなのあるんだー!』ってすぐに予約させてもらいました。結果、本当に相談してよかったと思っています。住もうとしている場所の周辺環境についてだったり、面白いお店を紹介してもらったり、話を聞いているうちにどんどんワクワクしている自分がいました。自分が思い描く茅ヶ崎のイメージの答え合わせができた感じです。おかげで安心して移住することができました」
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茅ヶ崎カフェに展示されている本物のミゼットに、寿夫さんが制作したミゼットのプラモデルを並べてパチリ。荷台に乗せたサーフボードは寿夫さんが一から自分で作ったものだそう。
スポーツ関連の会社で野球のグローブ職人として長年勤務されていた寿夫さんも、移住を機に退職。
「もともと会社では65歳で終わりのところを、どうしてもとお願いされて定年を延長して働いていました。70歳まで働いてほしい、とも言われていたんですが、その時には移住の話がほぼ決まっていた状況で。社長にあと1年だけ働いて今年で辞めます、と言って理由を話したら『そういうことだったのか。それならどんどんやるべきだ。俺もそういう生活を送るのが夢なんだ』と後押ししてくれました」
寿夫さんの決断は同年代の友達にも刺激を与えたようで、それまでやっていたお店を辞めて自分のやりたいことを始めた方もいらっしゃるそう。
「仕事を辞めた今はゴルフに行ったり海に入ったりと遊びで忙しいです。こんなこと、仕事を続けていたら絶対にできないこと。ましてやそれが自分の住みたかった場所、茅ヶ崎で味わえているんだから最高ですよね。おかげで太っちゃいましたけど(笑)」
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海辺のサイクリングロードを茅ヶ崎スタイルで満喫する寿夫さん
移住して間もなく開催されたサザン茅ヶ崎ライブ2023「茅ヶ崎のまち全体がサザンを応援している感じがした」
そして2023年。お二人が引っ越してくる直前にサザンオールスターズ茅ヶ崎ライブの開催が発表されました。
「茅ヶ崎への引っ越し作業を進めているタイミングだったので、開催されると聞いて本当にびっくりでした。友達から「サザンも二人が来るのを待っててくれたんだね」って言われたのが嬉しくって『そうよ!私たちのためだわー!』って舞い上がっちゃった(笑)」
10年ぶりの茅ヶ崎開催ということもあって申し込みが殺到したチケットも、順子さんは見事当選するという強運ぶり。
当選したのは1日分だけでしたが、あとの3日間も音漏れを聞きに海まで繰り出したそう。
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サザン茅ヶ崎ライブ当日のお二人。地元から参戦するからこその軽装。
チケットの当選確定後、ワクワクした気持ちを抑えきれない順子さんは、茅ヶ崎ライブの参戦に向けてご自分のネイルをサザン仕様に。
「ネイルサロンの方も私が大のサザンファンって知ってたから、今回のライブのロゴを入れてくれたんです。ほかにも、(国道)134号線を通ると茅ヶ崎に来たって感じがして嬉しいんだ、って話をしたらモチーフに使ってくれたり、Tバーや烏帽子岩もデザインに入れてくれた。自分が思っていたことをネイルに全て表現してくれて、すっごい嬉しかったです!」
ちなみに気合いを入れて、つけまつ毛も付けて行ったそうですが「一曲目で涙が止まらず全部落ちちゃった(笑)」そう。
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気合いの入った茅ヶ崎ライブ仕様のネイル(太田さんInstagramより)。この後、ずっと通うお気に入りのお店になったそう。
ライブの感想を聞くと「ずっとずっと好きだったサザンを聖地である茅ヶ崎で、そして“地元の人”となって参戦できて…本っっっ当に最高でした!!」と今日一番の声量で答えてくれました。
興奮そのままに「ライブ当日、茅ヶ崎に住んでいるみんながサザンを応援している感じがすっごく気持ちよかった。会場に行くまでの街角という街角にお店が出ていたり、街の盛り上がりがすごかった!ライブが終わった後も、駅に向かって歩いていく途中にマンションに住んでいる人が、上から『気をつけて帰ってねー!』ってみんなに手を振っていたり。こういう茅ヶ崎の“サザン大好き!”なオーラっていうのかな、街全体で盛り上げようとする雰囲気がとってもあったかい。前から訪れるたびに感じていたけれど、あの日それを改めて肌で感じられて『あー、茅ヶ崎に引っ越してきてよかったー!』って心から思いました」
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サザンにはやっぱり快晴の空が似合う!