サザン好きが高じて茅ヶ崎に移住してきた太田さんご夫婦のインタビューの後編です。前編はこちらからお読みください。
茅ヶ崎での暮らしは「特別なことが特別感無く、日常に近いところにある」
茅ヶ崎で暮らし始めて、太田さんご夫婦の生活は名古屋にいた頃よりも更に活動的になっているそうです。
寿夫さんは「こっちに来てSUP(スタンドアップパドル)を始めたんですよ。元々若い頃にウインドサーフィンをやっていたことを近所の病院の先生に話したら、海のスポーツをやってるなら『Hosoii Surf & Sports』に行ってこい、って言われまして。スクールに入ったら見事にハマっちゃって、もう烏帽子岩にも2回行きました。でもウインドサーフィンとは体の使う部位が違いますね。乗った次の日はぐったりしてます(笑)」
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寿夫さんがお世話になっているHosoii Surf & Sports
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富士山をバックに悠々とクルージング
そう言って笑いながら「仕事も辞めて自由な時間ができた今、平日に色々遊びの予定を入れたらとっても忙しくなっちゃって(笑)。でも毎日充実していて本当に最高です!」と満足気に語ってくれました。
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Myボードから烏帽子岩越しの富士山。陸からでは見れない景色に感動!
毎日何をしようか常にわくわくしている寿夫さん。茅ヶ崎に来てから夏はTシャツ、短パン、ビーサン(ビーチサンダル)で過ごしているそうです。
「特にビーサンが最高!こっちに来てから靴を履きたくなくなりました(笑)。名古屋でも同じような恰好の人はいましたが、茅ヶ崎だとまたそれとは違う感覚。今年なんて特に暑かったから、長ズボンを履きだしたのは秋になってからでした。でもそれがまかり通っちゃうのが茅ヶ崎ですよね」
Tシャツ・短パン・ビーサンは茅ヶ崎人の代名詞。ローカルっぽさ溢れるそのスタイルが茅ヶ崎のまちの雰囲気を醸し出しているといっても過言ではありません。
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これぞ茅ヶ崎のローカルスタイル!
他にも、移住されてきたお二人だからこそ感じる“茅ヶ崎らしいこと”を教えてくれました。
「親子が自転車に乗って海水浴に出かける姿。子どもとお父さんお母さんがチャリで一列になって海へ行く、あれは最高の光景ですよね。いつか小さい孫ができたら絶対にやりたいな。あとサーフボードを自転車の横のラックに乗せて走るのに憧れます。茅ヶ崎ならではだなーって感じますね」
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海、自転車、サーフボード。どれも茅ヶ崎を語る上では欠かせない要素だ
「やっぱり海にささっと行けちゃうのが嬉しいですね。砂浜に広げるマットとかついつい大荷物になっちゃうけど、疲れたから帰ろうとなってもすぐに帰れるし『ちょっとそこまで』の距離だから着替えも不要で最高です!」
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移住後にサザンCの前で記念撮影!
活動的なお二人にとって嬉しかったのが「茅ヶ崎はイベントがたくさんあるまち」だということ。数あるイベントの中でも、ハワイ好きな順子さんが特に反応したのが「フラダンスのイベントをよくやっていますよね!イトーヨーカドーの上でもやっていたし、市役所でやってたホノルルミーツのステージでも見ました」
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ホノルルミーツでお買い物を楽しむ太田さんご夫妻
確かに茅ヶ崎はフラのイベントも、フラを習うことができる教室やサークルも豊富にあるのが特徴。
「名古屋じゃフラのイベントなんてあんまり無くって、第一フラを習う環境がなかったんじゃないかな。子どもにバレエを習わせるノリで、こっちではフラをやっていますよね。もし私もこっちに住んでいたらフラをやっていただろうなーと思います。せっかく茅ヶ崎に来たから何かしたい!と思ってまずはハワイアンキルトを習い始めたんですが、やっぱりフラもやりたくて今はシニアの体験教室をいろいろ探しています」
そんな順子さんは、この取材後すぐにフラダンス体験に行ったそう。言葉にしてからの行動が早い順子さん、さすがです!
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リビング壁面に飾られた順子さん自作のハワイアンキルトとアート!
茅ヶ崎のイベント以外にも「まだまだ観光客気分でいるので、行ける距離にイベントや観光地があると聞けばすぐに足を運んでいます(笑)。先日は平塚の七夕祭りも行ってきました。ほかにも藤沢の湘南T-SITE、鎌倉もしょっちゅう行ってますね。でも特別感なく日常的にそういった場所にアクセスできるのってすごいことだと思います。どこ行くにも近いですからね」
さらに「こっちに来て活動範囲がだいぶ変わりました。ライブを観によく通っていた横浜や東京の方にも行きやすくなりましたし、ディズニーランドも近い。茅ヶ崎に住んでみて改めてアクセスの良さにびっくりしています」
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左上:マリーンルージュ(横浜)、右上:ガンダムファクトリー横浜(横浜)、左下:藤子・F・不二雄ミュージアム(川崎)、右下:川崎市岡本太郎美術館(川崎)
わざわざお出かけしなくても家から楽しめることもあるそう。
「家から花火が3か所も見えちゃうんです!サザンビーチちがさき花火大会(茅ヶ崎市)はもちろん、ふじさわ江の島花火大会(藤沢市)、湘南ひらつか花火大会(平塚市)も見えます。自分の家からはまさかの平塚が一番大きく見えることに驚きました(笑)」
まち全体に広がるオープンでフレンドリーな空気感。一方で不便な一面も…
太田さんご夫妻は二人でよく外食にも出かけます。おすすめを聞くと、移住して3か月とは思えないほどにたくさんのお店を紹介してくれました。
「やっぱり魚介で言えば『えぼし』ですよね。あれには感動しました。あれだけのクオリティの料理をあの短時間で提供してくれる。しかも伝票は手書きというのも昔ながらの雰囲気が残されていて大好きです。『金目鯛の煮つけ』っていう桑田さんの曲があるから記念にと思って頼んだのですが、美味しすぎてきれいに骨だけにして食べちゃいました。これには店員さんもびっくりしてましたね(笑)」
「あとは一中(茅ヶ崎市立第一中学校)の目の前の『いただきます食堂』。メニューがラクサしかないんですけど、あれはすごい美味しかった!最初は看板のデザインに惹かれて何気なく入ったんですけど、お店のスタッフさんと話しているうちに親しみを感じてしまって。こんなおじいちゃん、おばあちゃんでもとても相手にしてくれて、今ではもう友達かな(笑)」
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順子さんが「デザインに惹かれた」と語る、いただきます食堂の看板
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看板メニューのラクサ。最後の一滴まで飲み干してしまう美味さ!
「あとは海辺の『ポセイドン』。お店の人がすごく気さくで優しくて、すぐに大好きになっちゃいました。しおさいラーメンと刺身の盛り合わせにビールを合わせるのがおすすめです!」
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ポセイドンの軒先での一枚。こんな開放的な席に座ったら飲まずにはいられない
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内装は昔ながらの食堂といった雰囲気
二人が口をそろえて言うのは「茅ヶ崎の人って本当に優しいですよね。それも、引っ越してきた人には特に優しく接してくれるように感じます。住んでいる人たちに受け入れ態勢があって嬉しくなります」
どんな時に感じるかを聞くと「行った先のお店の人もすぐ友達になってくれる。しゃべりやすいんですよね。全然いやな感じがしなくて。雑貨店や飲食店に行っても、スタッフさんとの話がついつい盛り上がって仲良くなっちゃって、結局すぐ買っちゃう(笑)」と順子さん。
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茅ヶ崎駅南口にあるアメリカン雑貨店「C-Wave」も順子さんの大好きなお店
寿夫さんも「茅ヶ崎って、海沿いの街なのにある意味ローカルっぽくない。よその街だと閉鎖的なところもあったりするのに、この辺のビーチは閉ざされた感じが一切しないんです。人がいいんだなーとしみじみ思います」
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二人で通うサザン通りの「ななはち食堂」。とにかくメニューが豊富でボリューム満点なのが魅力だ
太田さんご夫妻には茅ヶ崎で誰とでも仲良く話せるマジックワードがあるそう。
「『名古屋からサザンが好きで引っ越してきました』です!『名古屋から来たばっかりでー』ってセリフも、あと一年くらいは通用するかな(笑)」
確かに、これを言われたら茅ヶ崎人はだいたい食い付いちゃいますね(笑)。
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茅ヶ崎を町ブラするならPlenty’sのアイスは欠かせない
人の良さをたくさん感じる一方で、茅ヶ崎の街自体には不便な一面もあると教えてくれました。
「こっちに来てから車の運転をしなくなったんですよね。名古屋は道が広かったので乗れていたんですけど、茅ヶ崎は道が狭いです。え!ここって一方通行じゃないの!?とびっくりすることもありました」と、順子さん。
道の狭さは、移住してきた方の多くがびっくりされるポイント。それでも道の狭さゆえに人と人との交流が生まれやすかったりします。車に乗らずに、徒歩や自転車などの“顔が見える交通手段”を選ぶことが、移住した先の街に慣れるコツなのかもしれません。
移住して1年半!茅ヶ崎が“麗し My Hometown”となったお二人の暮らしは
移住して1年半ほど経った2025年1月。お二人の近況を伺うために追加でインタビューを実施しました。筆者がインタビュー場所である茅ヶ崎カフェの前で待っていると「お久しぶり~!」と順子さんの声。寿夫さんも少ししてから合流し、雑談を交じえながらお話を伺いました。
はじめに順子さんに近況を聞くと「実は最近、二人とも仕事をし始めたんです!」と、びっくりする発言が。
「というのも、1年半も自由気ままな暮らしをしていたらちょっと退屈になっちゃって(笑)。私は市外の保育園、夫も市外のスポーツ店でそれぞれアルバイトを始めました。仕事には電車で通っているんですが、茅ヶ崎駅で希望の轍の発車ベルを聴くと、とにかく嬉しくなるし安心する。茅ヶ崎に住んでいることを実感できる瞬間です」
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夕暮れ時の茅ケ崎駅(北口)。少し離れたホームから聴こえる希望の轍の発車ベルが胸に染みる
初めて駅に降りたときに感じたような高揚感ではなく、ほっとする安心感。
移住して1年半、憧れだった場所は太田さんご夫婦の中で確実に“地元”に変化していました。「街中で不思議と写真を撮らなくなってきたんですよ。この景色に慣れてきたからなのかな。でもえぼし岩は毎回撮っちゃいますね。『今日のえぼし岩』みたいな感じでコレクションしてます(笑)」
茅ヶ崎での知り合いもたくさん増えたようで「ポセイドンで夫とご飯を食べているときに別テーブルのサーファーが話しかけてくれたり、C-Waveで店内にいたお客さんと茅ヶ崎の話題で盛り上がったりして、そんなことをきっかけに仲良くなった人が結構います。なんか、しゃべっている間に自然に仲良くなってるんですよ」
オープンな空気感は街中だけでなく海でも。「海沿いに行くと上裸で歩いている人をよく見かけます。名古屋から来た友人はびっくりしていましたけど、私たちからすれば全然違和感が無いんですよね。どんな年齢の人でも体形でも、本人はもちろん周囲の人たちも全然気にしていなくって。その雰囲気がとっても穏やかで平和な感じがしていいですよね」
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のんびりした海沿いの風景。開放的な雰囲気に自然と気持ちもオープンになる
移住してからの日課は海辺のお散歩。仕事を始めた今は休日だけになりましたが、それまでは毎日のように海沿いを散歩していたそうです。
「図書館の隣のコインパーキングに車を停めて、そこを起点に散歩を楽しんでいます。だいたい高砂通りから海に抜けてサザンビーチに行って、その後ヘッドランドのTバーか雄三通りを通って戻ってきます。ランチはその時の気分と歩いてるルート次第ですが、サザン通りのななはち食堂か、漁港のところのポセイドン、たくさん歩いたときは柳島の幸福餃子まで行くこともありますね」
「サザンの桑田さんが『茅ヶ崎の幸福餃子にいつか行ってみたいですね』と、ラジオで言っていたらしいんです。それを聞いた店長さんが、いつ桑田さんが来るか分からないからって、毎日店内でサザンを流すようになったんですって(笑)。エピソードも面白いですけど何より餃子が美味しくって、一気に推しの店です」
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柳島の幸福餃子。ボリューム満点の日替わり定食には、餃子のほかにお魚料理が付くことも
寿夫さんにお気に入りスポットを聞くと「高砂通り、あの雰囲気は別格ですね!まるでリゾート地や避暑地に来たような感覚になります。あと自分でも何でか分からないけど、一中通りのいただきます食堂のちょっと手前のあたりも背の高い松があって、そこだけ不思議な雰囲気がして好きなんです」
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背の高い松が立ち並ぶ高砂通り。すぐ横にある高砂緑地は、かつて明治の人気新派俳優の川上音二郎・貞奴が住まいを構えたことで知られている
それに対して順子さんも「高砂通りと言えば、茅ヶ崎市美術館も面白い企画をやってますよね!すごいセンスあるなーって毎回思ってます。2階にあるカフェでランチもしたいですね」
サザンとともに、茅ヶ崎とともに。小さな発見が彩る毎日
最後に、移住しての感想とこれからの生活について聞いてみました。
「憧れの場所が地元になった、というのが本当に嬉しくて。どこに出かけてもこの場所に帰ってきたって思えるのが嬉しいんです。この気持ちをこれからもずっと感じていたいな」
そう笑顔で語ってくれた順子さんに続けて、寿夫さんは「転勤族だったから、たぶん人生で初めて、自分が好きで選んだ場所に住んでいるんです。しかもずっと憧れていた場所で…本当に最高ですよね。今でも夢のようです」
ゆっくり言葉を噛み締めるように想いを語ってくれた後、「茅ヶ崎はまちの中にたくさん発見があって面白いんです。たまに道を変えて細い路地に入ってみると「え!こんな所に!?」っていう場所にお店があったりする。だから毎日のお散歩がいつも新鮮に感じるんです。散歩で出会うちょっとした発見や感動を楽しむ、そういう生活をこれからも続けていけたら楽しいですね」
サザン好きが高じて移住した太田さんご夫婦。ですが、気づけば茅ヶ崎という街そのものにどっぷりとハマっているようでした。4月に行われるツアーも参戦が既に決まっているそう。
お二人はこれからもきっとサザンオールスターズを人生のBGMに、地元となった聖地・茅ヶ崎で夢のような暮らしを紡いでいくことでしょう。