都心へのアクセスもよく、海と街がほどよい距離感で溶け合う街、茅ヶ崎。この地に惹かれ、東京から移住してきた一人である若松成樹さん。かつてはSUP(スタンドアップパドルボード)メーカーの営業として全国を飛び回る多忙な日々を送っていましたが、今年9月、地域に密着した「出張自転車修理サービス」をスタートさせました。移住前の暮らしから、街の魅力、そして今この地で描く未来についてお話を伺いました。
サーフィンが縁で茅ヶ崎へ
福島県で生まれ育ち、高校卒業を機に上京。都内の宝石関係の会社で働きながら、週末はもっぱらサーフィンを楽しんでいたといいます。
都内での生活は仕事の上では便利だったものの「転機となったのはサーフィンを通じて出会った仲間たちとの繋がりでした」と振り返ります。
「当時のサーフィン仲間のなかで、茅ヶ崎に住んでいる方が大勢いたんです。結婚を意識し始めた時期でもあり、『それなら茅ヶ崎に引っ越してくれば?』と声をかけてもらって」と2007年から湘南での新しい生活がスタートしました。
実際に茅ヶ崎での暮らしが始まると、想像以上の住みやすさとあたたかい人間関係に驚かされたといいます。
「湘南といえば、どこか華やかなイメージがありましたが、茅ヶ崎は素朴で落ち着いているんです。何より、外から引っ越してきた人に対して街全体がすごくウェルカム。そこが本当に居心地が良かったですね」
地元のショップ「Hosoii Surf」に通い詰めては仲間とサーフィン大会やサップ大会に出場したり、南口の居酒屋「かぞ食」や雄三通りパン店「ビーグロット」に通うなど街のスポットを通じて少しずつこの地に馴染んでいきました。
近所の居酒屋にふらりと立ち寄ると、カウンターで隣同士になった地元の人と意気投合し、お互いの家族を含めた交流へと広がっていったこともあったといいます。
「東京にいた頃は隣に誰が住んでいるかもわからない状態でした。でも、ここは僕が生まれ育った福島の田舎と同じで、ご近所付き合いや顔見知りの繋がりが自然と生まれる。狭い地域だからこそ『あ、見たことあるな』から挨拶が始まり、仲良くなっていける雰囲気が自分にはぴったりでした」

趣味のサーフィンを楽しむ若松さん
茅ヶ崎の一番の魅力は「海と日常が密接に溶け込んでいること」、そして「人との距離感の温かさ」だといいます。
夏場になれば朝5時に起きて仕事前に海へ入り、ひと波乗って頭をすっきりさせてから一日のスタートを切るという、都内で暮らしていたころには考えられなかった贅沢なライフスタイルが叶いました。
「新たな挑戦」
一方で2015年から勤めたサップメーカーの営業マン時代は、東日本全域を担当していたため全国を飛び回る出張族でした。「もっと家族との時間を大切にし、この街にしっかり根を張って仕事がしたい」
そう決意し、知人の自転車修理店が廃業することを知ったのをきっかけに、技術を教わりながら独学で勉強を開始。中古自転車の分解や修理、YouTubeでの研究などを重ね、今年9月に出張専門の自転車修理サービスを正式オープンさせました。
現在は、以前の出張生活では叶わなかった「子どもの学校行事への参加」や「地域行事への顔出し」を大切にしながら、地域の足である自転車のトラブルに対応する日々を送っています。
看板のデザインに悩んでいた際、手助けをしてくれたのはHosoii Surfを通じて出会った地域の人々でした。イベントで出会ったイラストレーターの女性や、その場に居合わせた3家族・約10人の大人や子どもたちが集結。波の形をスケッチし、子どもたちが楽しそうにペンで色を塗り上げて、世界にひとつだけの温かい看板を作り上げてくれたのです。
「自分にはデザインのセンスなんてなかったんですが、偶然の出会いから色んな人が手を貸してくれて。そういうあたたかい助け合いが自然と生まれるのが、茅ヶ崎という街の本当に好きなところです」

地域の人々が協力して制作した看板
事業としてはまだまだ試行錯誤の連続だと語りますが、見据える先には地域への明確な貢献の形があります。
茅ヶ崎は道が狭く、移動手段として自転車を利用する人が非常に多い街です。その一方で、高齢化や後継者不足により地元の自転車屋さんが相次いで廃業し、店舗の数が減っているという現実があります。
「パンクした重い自転車を押し、遠くの店舗まで歩いて持っていくのは本当に大変な作業です。だからこそ、困っている人の自宅や現場まで直接伺う『出張サポート』で、この街の人たちを助けていきたいと思っています」
「これまで全国を駆け回っていてできなかった分、これからはこの茅ヶ崎という土地にしっかりと根を張り、地域のみなさんの困りごとに寄り添い続けていきたいですね」
















