教会で知る、自然の恵み
突然ですが、本物の「採れたての野菜」を食べたことはありますか?自分の手で土にふれて野菜を収穫し、新鮮な野菜をその場で頂く。そんな体験ができる教会が、青葉区荏田町にある「イエスの栄光教会」です。
農家が運営している教会だからこそできるこの取り組み。毎週日曜日に礼拝の一環として、子どもから大人まで年齢・性別に関係なく、参加を受け付けています。原則無料。クリスチャンでなくても、もちろん大丈夫。記者がさっそく体験してみました。
イエスの栄光教会の大久保昌生牧師
そもそもどんな教会?

元は写真スタジオだった建物で礼拝などを行います。右隣が牧師の自宅
イエスの栄光教会は、単立・独立のプロテスタント教会で、クリスチャンの方向けに説明をすると長老派教会になります。自宅に併設した建物「お家の教会」で礼拝と農業体験を実施しています。
※大久保昌生牧師略歴…聖契神学校(目黒区)の専門科・研究科を卒業、大山武俊師(校長)から按手礼を受ける/改革派神学研修所で岩永隆至師の教義学・倫理学を受講
なぜ農業体験を?
教会活動として実施していますので、ちゃんと目的があります。大久保牧師によれば、「大自然は神様が造られたもの。農業体験を通じて、神様が私たちに常に働きかけていることを感じてもらう機会になってほしい」。
自然や四季を感じることに重きを置き、野菜の栽培や収穫だけではなく、フキノトウや野蒜、タラの芽、土筆などの山菜を採集して調理することも。「即席・インスタントの時代にあって、一たび立ち止まる時を大切にしています」。

教会の隣接地ともう1カ所、少し歩いた里山の一角に畑があります
一般的な体験の流れ
農業体験は日曜礼拝の一環として行っています。毎週日曜日の午前9時~正午、または午後2時から5時まで。相手は自然ですので天候や季節によって体験する内容は変わります。畑で野菜を収穫するだけではなく、種まきや下準備だけの日もあります。近隣の里山で食べられる野草を探したり、その内容は多種多様。始めと終わりにお祈り、聖書の短い朗読もしますが、礼拝の参加は自由です。
農業体験の後は、調理とみんなで試食をします。宗教行事等と重なる場合は愛餐(ともにする食事)として用意もありますが、コーヒータイムだけの場合も。収穫できる野菜の量や種類にもよりますので、ご理解ください。なお、コロナ禍中の人数把握や、用意もありますので、事前に申し込みをお願いしています。
創立1周年感謝礼拝
体験に伺ったのは、2021年2月13日。ちょうど教会の創立1周年を記念した感謝礼拝の日でした。
この日は近隣の住民の方も交え、三密を避けるなど配慮をしながら30人弱くらいが参加。アコースティックギターとキーボードの伴奏で讃美歌「いつくしみ深き」を歌うなど、思っていたよりもカジュアル。ステンドグラスやパイプオルガンなどをイメージするような荘厳な雰囲気ではないので、自分のような教会に行ったことがない人間でもあまり違和感はありません。
さらにこの日だけの特別ゲストとして、元劇団四季の俳優で、現在は劇団四季のボイストレーナーとして指導をしているビョン・ホギルさんが登場。プロの独唱による讃美歌は本当に聴き応えがありました。
【お知らせ】ビョンさんによるイースターコンサート
- 3月27日(土)にビョンさんがイエスの栄光教会でイースターコンサートを開催。
- 時間は午後1時30分から(1時開場)。無料。参加人数把握のため、予約制です。
- 曲目は『川の流れのように』など。
椎茸の原木栽培にチャレンジ
1時間弱ほどの記念礼拝の前後には農業体験を。
当日は敷地内のくぬぎを倒し、切り分けた丸太をつかって椎茸栽培にチャレンジ。長さ1mほどの丸太に80から100個ほどの穴をドリルで開けた後、種駒を打ち込んでいきます。駒打ちは簡単そうですが、まっすぐトンカチで叩かなければなりません。強くても弱くてもダメ。打ち込む数はとても多く、手間もかかります。
種駒が打ち込まれた原木は、日陰などに置かれ、3年から4年ほど経つと椎茸が生えてくるそうです。すぐにニョキニョキ生えてきそうなイメージでしたが、すごく時間がかかるものなんですね。なお、太い原木ほど肉厚の椎茸になるのだとか。将来的には収穫した椎茸を炭火で焼き、振舞ってくれるそうです。
羽釜で炊くごはん
同時並行で昼食の準備も。昔ながらの羽釜でごはんを炊いていきます。火を入れて15分くらいでしょうか。火力が強いのであっという間。この日は特別に保管してあった栗を入れて栗ごはんに。最後に「おこげ」もできるように火力調整をして完成です。
大切なのは炊き立てのごはんを「おひつ」に移すこと。お米の水分を飛ばし、お米のおいしさを引き出します。このひと手間が大事と大久保牧師。
- こういった「立ち止まる時」を大切にしているそうです。
いざ、実食!

この香りをご紹介できないのが残念。羽釜で炊いた「おこげ付き栗ごはん」

けんちん汁ってこんなに美味しかったっけ??
当日のメニューは栗ごはんやけんちん汁のほか、参加者が持ち寄ってきたおかずなど。食事の前にはお祈りをして「いただきます」。
羽釜で炊いているので、おこげもしっかり。ちょっとだけ、お醤油をたらすと香ばしさが引き立ち、いくらでも食べてしまいそう。しかしながら、実はそれ以上に衝撃を受けたのが「けんちん汁」。畑で採れたダイコンやニンジン、サトイモなどがこれでもかと入っていますが、こんなに野菜から出汁って出るのか、と驚きの美味しさです。
食後は帰るもよし、残って談笑するもよし、の自由な時間に。ただし、食事の後片付けは全員で分担をしてちゃんとやります。
今までも収穫した季節の野菜の料理が並んできたそう。過去にはきりたんぽや柿の葉寿司を作ったことや、毎年年末には餅つき大会も。杵と臼でついたお餅をあんこやきな粉と一緒に頂きます。大根をすりおろしたからみ餅は絶品ですよ。
時期によっては子どもの参加も多いとか(過去の開催の様子)
「五感で自然を体験してほしい」と話す大久保牧師。記者も大人になってから土に触れる機会ってあまりありません。新鮮な野菜の美味しさや、山菜のえぐみなど、大人から見ても楽しめました。カブトムシの幼虫もいっぱいいるそうですので、子どもたちも喜びそうですね。教会ですから開拓、伝道活動が主ではありますが、洗礼などを強要することは一切ありません(希望者のみ対応)。無宗教、他宗教でも問題ありませんので、気軽に参加をしてみてもいいのではないでしょうか。
大久保牧師は今後、不登校やいじめ、学力不振など困難を抱えている子どもの支援の場を作りたいとのこと。そのほか、子どもから大人まで、家庭内の悩みがある人も相談してみてはいかがでしょうか。
年間行事もたくさん

イースターエッグも手づくり(過去の開催の様子)。教会の庭に隠したエッグを子どもたちが探します

クリスマスの飾りつけも自分たちで(過去の開催の様子)
4月のイースター、10月の宗教改革記念日、11月の収穫感謝祭、アドベント、12月のクリスマスなど宗教行事もにぎやかに行っています。そのほか、夏にはそうめん流しや肝試し、スイカ割り、水遊びなど子どもが楽しめる行事を交えながら、農業体験や自然体験を実施しています。
【お知らせ】2021年4月3日(土)、4日(日)にイースター礼拝
礼拝は午前9時からと午後2時から(3日は午前のみ)。竹の子掘りやよもぎ摘み、土筆採集など農業体験も予定。両日とも羽釜で炊いた竹の子ごはんや竹の子のお味噌汁、自家製きゃらぶきの佃煮などをみんなで味わう予定です。牧師の奥様のご機嫌によっては春の山菜を使った天ぷらもついちゃうかも!?
子どもが喜ぶ「エッグハント」(教会の庭などに隠されたエッグを探します)は4日のみ開催ですので、子どもの参加がある場合は4日がおすすめ。