誕生経緯と技術開発
太平洋戦争末期に旧日本陸海軍が共同開発し、追浜の海軍航空隊飛行場から試験飛行に飛び立ったロケット戦闘機「秋水」に関する展示が横須賀美術館で開かれている。会期中の展覧会「ヒコーキと美術」の関連企画。試作機として登場した当時の開発目的などを伝える解説資料とともに、エンジン部品の一部も公開している。
秋水とは
秋水は、戦況悪化の打開策として秘密裏に開発された幻の迎撃戦闘機。当時の同盟国ドイツから最新の技術資料を潜水艦で運び込み、ロケット戦闘機メッサーシュミットMe163モデルをひな型につくられた。
丸みを帯びた機体が特徴的で国内初のロケットエンジンを推進力としており、その革新的な技術は現在につながる平和産業の礎となった。燃料消費後はグライダーのように滑空しながら地上に舞い戻るというユニークなアイデアが採用され、生還の見込みがない特攻とは別の発想で開発が進められた。着手から約1年後の昭和20年7月に初の試験飛行が行われたが、離陸直後に墜落。機体は大破し、実戦投入されないまま終戦を迎えることになった。
貴重な資料も展示
今回の展示では、秋水の資料を収集し、独自の研究を進める有志団体「秋水史料研」が協力。誕生経緯や開発秘話に加えて、動力源である燃料噴射弁の試作品を公開している。噴射弁は佐野町在住の平田直俊さんが所有していたもので、陸軍技術将校で特殊航空兵器開発に携わっていた父が保管していた。長野県松本市にあった実験場の写真や開発段階の写真などの貴重な資料もある。