鉄は温かく、柔らかい
椅子、テーブル、ランプスタンドなど身の回りにあるインテリアを見てほしい。それらのほとんどは木材、金属、プラスチックなどでできているはず。一方、「ここ」に飾られている全てのインテリアの素材は「鉄」。鉄と聞いて「冷たい」「硬い」などのイメージを連想する人も多いはず。「いや、鉄は温かみがありますし、作っている時は柔らかいんですよ」。八王子市小津町にあるザンスカール工房の和田隆彦さんは笑顔でそう説明した。
30年前、山の中に工房
八王子西インターチェンジからおよそ2㎞。静かな山間の通りに工房はある。多摩美術大学を卒業した和田さんはおよそ30年前、工房を構え「金属のかたまりを叩いて成形する」鍛造作家としてデビューした。
椅子やテーブル、ランプスタンド
和田さんは現在、週に6日ほど工房を訪れ、鉄のインテリア作りに集中している。手順はこうだ。必要に応じてべニア板にデザインを描く。直径およそ3㎝の鉄の棒を1000度の高熱で柔らかくした上で、大型ハンマー(鍛造機)でたたき、デザインにあわせた部品を作る。
複数の部品を溶接し、椅子やテーブル、ランプスタンドなどに仕上げていく。「生活に潤いを与えるものを。暮らしの中でほっとするような存在のものを作りたいと思っています」
100年、200年、それ以上
もちろん鉄のインテリアは量販店でも購入できる。それらに対し和田さんは自身のものと比較し「形状が違う」と説明する。わかりやすいのがカーブ。「作り手の個性が出る部分」という。
機械では再現できない柔らかな丸みからは、和田さんの言う通り「温かみ」が伝わってくる。また、強度も鉄の魅力だが、「100年、200年、いやそれ以上持つ」(和田さん)という雨風の影響を受けても劣化しない耐久性も大きなポイント。和田さんは「台風が来ても簡単には飛ばされませんよ。ただ、重いですけどね」と笑う。
工房で直接購入可能
和田さんは年に数回、八ヶ岳や京都、そして地元八王子で展示会を開いている。現在「ファン」の多くはこのような機会で初めて「鉄」に触れた人が多いそう。一方、女性を中心とした「アイアン好き」は、工房を訪れ、直接購入することもあるとか。和田さんは「事前に連絡をいただければ工房、(工房となりにある)ギャラリーの見学は可能です。鍛造の工程をぜひ一度見ていただければと思っています」と呼びかける。