秦野市自然観察施設くずはの家がある葛葉緑地で、「日本七大珍種蜘蛛」に数えられる「ワクドツキジグモ」が初めて発見
敷地内で調査を行っていた高橋孝洋所長が、植物の葉の上にいるのを発見したそうです。
カエルの地方名「ワクド」と、発見者の名前「ツキジ」を組み合わせた名称を持つこのクモは、ヒキガエルのような見た目で採集記録の少ない希少種となります。
高橋所長はインターネットの情報や図鑑などで、以前からその存在を知っていました。8月中頃に調査で葛葉川付近を移動していた際、目の端に覚えのある姿が映ったため引き返したところ、葉の上にこのクモがいたそうです。
「一度は実物を見たいと思っていた。まさか葛葉緑地で見られるとは」と驚きの声を上げています。
ワクドツキジグモは本州から南西諸島にかけて、その姿が確認されています。高橋所長によると「主に南方に生息していて、ここにはバルーニングで飛んできたのではないか」と分析しています。
バルーニングとはクモの幼体が自分の糸を風に乗せ、飛んで移動し分布を広げる方法です。そのため、1匹発見されたからといって他の個体が生息している保障はないそうです。
このクモは粘性の高い三角形の網を張るが、空気中の湿度が高い場所でしか巣を張ることができません。今回発見された葛葉川付近は、鳥の餌用に作ろうとした干し柿が一晩でカビてしまうほど湿度が高い場所だったため、「巣を張るなど成育に適していたのではないか」と高橋所長は話しています。
ワクドツキジグモの体長はメスが8〜10ミリメートルで、オスが2〜3ミリメートル。葛葉緑地で見つかった個体は、大きさから見てメスと判断されてます。
『クモハンドブック』の著者の1人であるクモの専門家・谷川明男さんも調査に駆け付けたほか、SNSに掲載したところ沖縄の写真家からも「42年住んでいて2回しか見たことがない」と、くずはの家に連絡が入ったそうです。
高橋所長によると、葛葉緑地では過去に七大珍種蜘蛛の1種である「ムツトゲイセキグモ」が発見されているほか、秦野市内でも別の七大珍種蜘蛛が1種発見されたことがあるそうです。「ぜひ、他のクモも発見してみたい」と意欲を覗かせています。
発見されたワクドツキジグモは人の手で飼育が困難なため、夏休み自然教室「クモのふしぎ大発見!」で披露されたあと元いた場所に戻されました。