「よこすかルートミュージアム」をウォーキング。近代遺産や歴史にふれるショートトリップ

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「よこすかルートミュージアム」をウォーキング。近代遺産や歴史にふれるショートトリップ

日ごろの取材や打ち合わせの移動は車。2021年の緊急事態宣言時には週に数回、自宅からの散歩を楽しんでいましたが、ここに来て「できるものなら目的地の一番近くのパーキングに」…と思ってしまうほど「歩く」ことから遠ざかっています。3月には健康診断もあるし、少し身体を動かしておかなければ!と思っていたところに舞い込んだ「よこすかルートミュージアム体験ハイキング」の紹介マップ。

ディボディエ邸で配布している「駅からハイキング」マップ

体力づくりのウォーミングアップも兼ねて、これを参考に歩いてみることにしました。

よこすかルートミュージアムとは?

「ミュージアム」は直訳で美術館や博物館という意味。これに「よこすか」の「ルート」がくっついています。つまり、町全体を大きな「ミュージアム」と捉え、各所にある遺産や遺跡を「サテライト」と呼んで、何カ所か辿りながら、その背景なども学んでもらおうというもの。横須賀市が設けた「サテライト」は60近くあります。

特設サイトはこちら

このサイトでは、各サテライトの概要のほか、エリアやテーマ(開国、自然、煉瓦、海軍…など)での検索もできます。モデルコースも紹介していますが、今回はJR東日本の「駅からハイキング&ウォーキングイベント」のルートを体験することに。

横須賀駅からGO!

海軍カレーのキャラクター「スカレー」が出迎えてくれる横須賀駅

横須賀駅は戦前、資材などの積み下ろしを考慮して作られたため、駅には階段がありません。そこから海を左手に見ながら歩くと、帽子をかぶったような「門」が出迎えてくれます。ここがかつての軍港への入り口。この「逸見波止場衛門」は八角形のコンクリート造でスクラッチ・タイル(すだれ煉瓦)が使われています。これをモチーフにしたゆるキャラ「逸見エモン」を思い浮かべたアナタは横須賀ツウです。

対になっている帽子のような門は昭和初期に造られたといわれるもの

ティボディエ邸で予習

イベントスタートは逸見波止場衛門から南に400mほど歩いたところにある「ティボディエ邸」。ここでこの特設マップを配布しています。誰の家?と思ってしまいそうですが、ここは横須賀市が2021年に開設した「よこすかルートミュージアム」の総合拠点。

横須賀製鉄所の副首長だったフランス人技師・ティボディエの官舎の小屋組みなどを移設した施設です。部屋の一部を再現したスペースもあり、明治初期の日本の西洋館の佇まいを体感できます。

もちろん、「総合拠点」とあって、日本近代化の礎となった横須賀製鉄所の歩みなど、「開国と横須賀」の基本情報を網羅する資料が並んでいます。

「サテライト」を紹介する写真カードもあり、気に入ったものを持ち帰りできます。

時間がある方は、すぐそばに乗船場がある「よこすか軍港めぐり」で海上散歩はいかが?

ウォーキング+船のプラン、横須賀ならでは

さて、本格的に歩きましょう!

次に、国道16号を南下して「三笠公園」へ。入口からどーんと見える記念艦三笠と東郷さん。いつもながら、圧倒されます。

艦内には戦時中の資料も展示。デッキからの眺めもいいんですよ!

そこから官公庁街を通って再び市街地へ。少しなだらかな坂をのぼって龍本寺に着きました。参道沿いには日蓮聖人が37日間祈願した岩窟が残っています。その次は、地元の人しか使わないような細い道をくねくねとのぼって平和中央公園に到着。

円型の不思議なモニュメント。猿島まで一望できます。

こちらは2021年にリニューアルしたばかり。「平和」の名の付く通り、毎月1日などに「平和の光」を上空に照射します。このモニュメントは「日本空間デザイン賞 2021」において「金賞」と「サステナブル空間賞」をW受賞しています。夜間の照射時も幻想的ですが、昼間の眺望もぜひ。

横須賀市内の高台にはこのような「砲台跡」がいくつもあります。

そして、少し奥まで進むと「米ケ濱砲台跡」があります。その上はかなりの高台で、東京湾に広がる景観を一望できます。開放感抜群です。

横須賀市内の自然・人文を網羅した博物館。*2/15〜20は工事のため休館

次に訪れたのが、公園の南側の入口にある横須賀市自然・人文博物館。取材で学芸員さんに話を聞きに行くことはあったけれど、じっくり鑑賞するのは、実は初めて。入ってすぐに「ナウマンゾウ」がお出迎え。横須賀の近代化に関する展示だけでなく、動植物や郷土史分野の資料もたくさん。これで入場無料なんて!

教科書で見たことのあるナウマンゾウ、市内で発掘された化石を展示。

階段踊り場にはこんなフォトスポットがありました!

博物館鑑賞をあとにして、ここから上町(うわまち)方面に下ります。道路の両側にある昔ながらの商店街なのですが、その特徴は、建物の前面に銅板を張った青銅色の「看板建築」や軒や窓にデザインを施した商店が点在していること。少し前に雨除けのアーケードが取り払われて、その建築意匠がよく見えるようになりました。

こんな記事も紹介しています。

横須賀中央駅に戻って、ゴールはもうすぐ!

「平坂」を下って横須賀中央駅方面に。国道16号に戻る道すがら、三笠ビル商店街の真ん中付近、山側にあるのが「豊川山徳寿院」。愛知の豊川稲荷別院と成田不動堂が鎮座しています。商売繁盛・家内安全などにご利益があるとされます。

商店街の賑やかさとは打って変わって、心が清められるような佇まいの諏訪大神社

ここを後にして、ドブ板通りへ。バーやライブハウスが立ち並ぶ通りの中ほどから、山側に向かってのぼっていくと、諏訪大神社があります。1380年に横須賀城主三浦貞宗が上下諏訪明神を勧請したことに始まるそうです。三浦氏滅亡後、横須賀村の鎮守社として祀られています。

その手前にあるのは、聖ヨゼフ病院の旧館。凹局面(曲線状)の建物は、戦前の病院建築としてその造形美が評価されていました。現在は隣の新棟に機能を移設。この建物は老朽化のため、解体される予定です。

独特な曲線状の建物。前身は旧日本海軍の横須賀海仁会病院という名称でした。

ドブ板通りに戻り「体験ハイキング」のゴールは、商店街の案内所「ドブ板ステーション」。残念ながらたどり着いたのは夕方。閉まっていましたが、シャッターにはこんなアートが!近くでネイビーバーガーやアメリカンな雰囲気のカフェを楽しむも良し。

シャッターアートで通りも明るいイメージ。観光パンフレットの配架やお土産販売も。

行程は約5.5km、歩数計は約8000歩でした。所要時間は3時間程度でティボディエ邸で配られているマップにはトイレやコンビニエンスストアの表示もあるので安心です(途中、ちょっと入り組んだ道に遭遇して地図をグルグルしてしまいましたが…)。

スタート時は寒くてコートのポケットに手を突っ込んで歩いていましたが、体を動かしたからか、途中からポカポカしてきました。車の入りづらい道も多い横須賀。歩いてみると、思わぬ眺望に出会えた…のも収穫でした。今回は「駅からウォーキング・ハイキング」のモデルコースをなぞって歩きましたが、市内では横須賀中央以外にも、浦賀や観音崎、田浦・追浜など、史跡や歴史遺産が点在しています。「ルートミュージアム」でその「点」をつないで辿って見てはいかが?

今日のルート

JR横須賀駅ー逸見波止場衛門ーティボディエ邸ー(国道16号)ー三笠公園・記念艦三笠ー龍本寺ー平和中央公園ー横須賀市自然・人文博物館ー上町の建築群ー豊川山徳寿院ー三笠ビル商店街ー諏訪大神社ードブ板通り(よこすかドブイタステーション)〜JR横須賀駅

住所

神奈川県横須賀市

費用

「よこすかルートミュージアム」体験ハイキングコース

問い合わせ

駅からハイキング事務局

電話

03-6386-9503

03-6386-9503

公開日:2022-02-09

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