3月26日の昼頃、とても弾んだ声をした読者から、編集室に一本の電話が入りました。「今朝、朝刊と一緒にとっても心打たれるお手紙がポストに入っていたの」。 送り主は、新聞奨学生として毎日新聞茅ヶ崎北部販売所(南湖・鈴木俊規所長)で働きながら、湘南工科大学に通う高塚学さん(22)でした。この春、大学を卒業し茅ヶ崎を離れる高塚さん。手紙には、地域への感謝がしたためられていました。
3兄弟の長男として茨城で育った高塚さん。高校3年の時、新聞販売所で配達業務等をしながら、返済不要の奨学金で大学等に通うことができると知り、「親に迷惑をかけたくない」「独立してみたい」と制度を利用し、大学への自力進学を目指しました。
初めて茅ケ崎駅に降り立った時、「にぎやかな街」という印象を持ったそうです。緊張と不安のなか到着した販売所。「所長や他の配達員の皆さんもとても親切に接してくれた」と、笑顔で茅ヶ崎生活をスタートさせました。
多忙を極めた学生生活
同販売所の2階に住み込み生活した4年間は多忙を極めました。
平日は夜11時30分に起床し、0時頃からチラシの折り込みなど朝刊配達の準備に取り掛かります。午前1時から4時30分頃まで担当する約250軒の配達をこなし、身支度をした後に8時に出発。9時から授業を受け、遅い日は午後6時までみっちりと勉学に励みます。そして夕食後、8時には就寝。月末は集金業務等もこなし、同じサイクルの生活を続けたそうです。
「大変だったけれど、配達先で『ありがとう』とか声を掛けてもらえて原動力になった。仕事も任せてもらえる事が増え、認められたみたいでうれしかった」と振り返ります。
春から高校教諭に
「感謝の気持ちを手紙で伝えてみたらどうか」。
鈴木所長からの提案でペンを執りました。何度も書き直し、ようやく完成。最終日の1日前、3月26日の朝刊とともに約250軒に配達しました。
読者から情報提供があった直後、編集室では高塚さんに取材を敢行。驚きながらも丁寧な受け答えで、取材中も手紙の反響が電話で販売所に届いており、うれしそうに顔をほころばせていました。
4月からは「夢叶え」、横浜市立の高校で教鞭を執ります。「社会で活躍できるよう頑張ります」