生田緑地の北側、専修大学生田キャンパス近くの「大道坂」など山坂が多い枡形5丁目・6丁目付近。高齢者が多い同地域に新たな交通手段を確保しようと、近隣5町会が連携して協議会設立に向けた準備を進めている。5月25日には区役所で意見交換会が開かれ、課題や思いを共有した。
きっかけは大道(だいどう)自治会の民生委員・野中洋子さんの呼びかけ。野中さんは「高齢の住民から、足がなくて買い物や病院に行けないという声がたくさんあった」と、8年ほど前から交通手段確保を模索してきた。地域交通の他事例を探りながら、2年前には移動スーパーが来るように手配。今回、地元市議の協力も得て、コミュニティ交通導入に向けた協議会発足へ動き出した。
25日は枡形の大道自治会と大谷(おおやと)自治会、稲目(いなのめ)町会の会長らに加え、隣接する東三田自治会と飯室谷(いいむろやと)町会から計10人が参加。市がコミュニティ交通の運行状況や支援制度を説明した。参加者からは「需要がどれくらいあるかつかまないといけない」「専大の学生に関わってもらうのはどうか」との声が上がった。
まずは協議会設立に向けた準備会として始動。住民向けのアンケート等から取り組む予定だ。大道自治会の野村修平会長は「丘陵地で足が不便。必要性はある」としつつ、「実現に向けては各町会が連携して十分検討した方がいい」と慎重な考えを示す。野中さんは「私ももうすぐ80歳。時間はかかると思うが、皆さん期待しているので何とかやりたい」と意気込む。
市支援制度 新たに
住民主体の協議会と川崎市、事業者の連携で地域交通が実現した例として、多摩区では長尾台地区のコミュニティバス「あじさい号」が2014年から運行。生田山の手自治会では19年に協議会を立ち上げ、交通手段の検討を進めている。
市は検討期間の長期化や運行継続性等の課題を踏まえ、3月に地域交通の「手引き」を刷新。4月から実証実験の後押しや資金的支援を充実させた。新制度ではチラシ印刷等の協議会の活動費補助も。あじさい号を運営する長尾台コミュニティバス利用者協議会の権平豊会長は「費用はこれまで自治会費で賄ってきた。補助金が出れば、その分を自治会の他の活動に使える」と期待する。