「みんながチャレンジできる場所」、「環境に配慮した暮らし」、「いろんな人が喜んで集まる場所」、「一人一人の価値観を表現したしたお金の流れ」というコンセプトを持ちながら運営されている辻堂ハウス。開設から1年ちょっとですが、既に様々なイベント、企画にあふれているようで、ちょっと覗いてきました。
辻堂駅から海に伸びる浜竹通りから見える辻堂ハウス
辻堂ハウスがあるのは、茅ヶ崎でも東側、藤沢市との境の近くで、最寄り駅は辻堂駅。辻堂駅西口から海に伸びる浜竹通りを15分ほど歩いていくと、ラーメン屋さんの奥に古そうだけど、なんだか気になるテラスハウスが見えます。この一室に辻堂ハウスはあり、お隣はレンタルカフェ&スペースのFUJINAMI、そのお隣は“革ものづくり”が体験できるレザールームBluno(ブルーノ)。どこもこのテラスハウスの佇まいを魅力に変えている個性的な場となっています。
自然から遊びを作り出す “おさんぽキャラバン”
辻堂ハウスでは、お子さんと一緒にまちを歩き、まちの中の自然で遊ぶ “おさんぽキャラバン”を月一回開催しています。6月末の30度を超える炎天下の日、参加者は辻堂ハウスのnaonaoさん、もじゃヒロミさんと、都内から茅ヶ崎に引っ越して20日目の4歳の男の子とお父さんの4人。この親子は引っ越して7日目には既に辻堂ハウスに来られたとのことでした。
この日は、辻堂ハウスから500m程の松浪緑地まで、道沿いの気になるものに寄り道し、道端にある草花を摘みながらお散歩しました。普段は雑草としてしか認識されない道端の草でも、立ち止まってじっくり観察すると、小さいけど色とりどりのお花が咲いています。
過去にはおさんぽキャラバンで、傷ついて道路に横たわってしまっていた鳥の雛に遭遇したこともあり、その時は「どうして横たわってしまったのか?」「このあと、どうなってしまうのか?」を参加されたお子さんたちと一緒に考えたそうです。「かわいそう」の一言で終わりにせず、「なぜ?どうして?」と目の前の出来事を一緒に悩み、お子さんの“気になる”を刺激しているそうです。
松浪緑地に着くと、道すがら積んだ草花をすり鉢ですりつぶし、お水を少し入れて色水をつくり、それを使って紙に筆を走らせてみました。花の色によって色水の色は異なり、また、色が出にくい花があったり、なかなか紙に色が出るような色水が作れません。水を少なくしたり、すりつぶす花を追加したり、4歳といえどもいろいろ工夫しながらなんとか色水をつくります。
この日の参加者は1組でしたが、複数組が参加することもあり、そんな時は、目的地に着くまでに一緒に花を見たり、昆虫を見たりしている間に、お子さんたちは仲良くなっていくそうです。
茅ヶ崎では市街地でも、ゆっくり、キョロキョロ歩いてみると、小さいけどたくさんの自然があり、それらを一つ一つ丁寧に拾いながら、自然から遊びを作り出し、お子さんの自然への興味を刺激する、そんな “おさんぽキャラバン”でした。
子どもをのびのび育むヒントに触れるお話会
別の日は大人向けの企画として、「子どもをのびのびと育むヒント」をテーマとしたお話会が開催されていました。自然保育教育の専門家である辻堂ハウスのnaonaoさんとアート教育の専門家のJiyuuさんからの事例発表を皮切りに、参加者それぞれがご自身の経験に沿って子どもをのびのび育てることについての意見交換が、リアルとオンラインのハイブリッドで行われていました。
事例発表では、自然教育とアート教育、それぞれ活動する分野は異なりますが、子どもをのびのびと育むという点で、事例発表をされたお2人のスタンスは共通しており、その部分を掘り下げていく形でお話会は進んでいきました。印象的だったのは、「のびのびと育む」を目指すけど、「自由と放任は異なる」という議論で、「子どもの自由を尊重するが、放任であってはならない。その線をどこで引くか。」、「チャレンジする、しないの選択肢があることが自由で、その選択で子どもが学び取っていくことが大切なのでは」など、参加者間での対話に盛り上がりを見せていました。
辻堂ハウス開設のきっかけ
おさんぽキャラバンやお話会、居場所としてフリースペースの開放をしたりと、様々な取り組みをしている辻堂ハウス。代表のnaonaoこと野村直子さんは、保育園の園長等を経験され、現在は保育園立ち上げコンサルティングや保育のアドバイザーとして活動されています。「コロナ禍で貧困や虐待が増加するリスクが高まっている。だからこそ開かれた居場所があるべき」との想いを持っていたところ、築60年を超えた、リノベーション自由の物件があるとの話を知人から聞き、都内から茅ヶ崎に見学に来られたのが開設に向けての最初の一歩でした。
物件を訪れてみると、周囲に建物が少ないため、「風が抜ける感じがとてもよく、開放的な物件だった」ことと、バス停にいる人や歩いている人に話しかけたときに、「とても気さくに対応してくれる人が多く、人がオープン」だったため、この物件を借りることを決めたとのことです。 2020年9月10月頃から室内の壁に漆喰を塗ったり、キッチンにカウンターをつくったりといったリノベーションを、知人やその子どもたちと一緒に取り組み、2021年4月の開設となりました。
辻堂ハウスを通してどんな子育てを伝えるか
お子さんがよく来るのに、辻堂ハウスには既製品のおもちゃがほどんどありません。それは「遊び方が決まっている既製品ではなく、お子さんたちが自分で考えて、体験から何かを感じてほしい」との想いからで、「自分で考えて遊びを創り、豊かな体験が産まれる生まれる」ことを期待しているそうです。 辻堂ハウスに来たお子さんたちには、松ぼっくりを糸に引っ掛けて釣り上げる“つりぼっくり”や、押し入れで遊ぶことが人気です。
“つりぼっくり”は、木の枝の釣り竿から延びる糸の先が輪になっていて、そこに松ぼっくりを引っ掛けて釣り上げる遊びです。私もやってみましたが、釣り糸となっている毛糸が思いのほか軽く、松ぼっくりにうまく絡んでくれないため、簡単には釣り上げることができず、なかなかの難易度でした。
押し入れは、昭和の家には必ずありましたが、最近の家ではクローゼットに置き換わって、押し入れを目にすることが少なくなったので、お子さんたちにとっては新鮮で、人気があるのかもしれません。押し入れの奥に入って秘密基地にいるような気分になり、上の段に登ればもっと秘密基地感が高まり、楽しいのでしょう。でも、小さい子にとっては押し入れの上の段に登るは難しく、それだけでも冒険です。背の届かない自分がどうやったら登れるか、自分で考え、工夫しながらチャレンジしており、まさに辻堂ハウスが期待している「自分で考えて遊びを創る」が実現されています。
辻堂ハウスは週2~3日フリースペースとして開放したり、様々なイベントを開催しています。イベントの規模は大きくはなく、お互いの名前を覚えられる程度の規模なので、そこでお友達ができたりと、人と人がつながる場としてもなっており、そんな居心地の良さも辻堂ハウスの魅力なのかもしれません。
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