瑞泉寺(二階堂)は、1327年夢窓疎石(むそうそせき)(禅僧)が開山した禅宗の名刹(めいさつ)である。山号は錦屏山(きんびょうざん)、四季の景色が屏風絵のように美しいことから名づけられたという。本堂裏の庭園は、禅宗の書院庭園の起源ともいわれ、国の名勝に指定されている。
ここに咲く花といえば、立春前には水仙。冬の寒さ厳しい中、本堂裏の庭園を背景に凛として咲く姿は、春遠からじとの思いを強くさせてくれる。早春の頃は梅。境内では、紅白梅をはじめ、枝垂梅や豊後梅などの花が咲き出し、辺り一面が春の香りに包まれていく。特に、本堂前で可憐な花をつける黄梅(おうばい)は、市の天然記念物にも指定されている。
初夏の頃は紫陽花。惣門の先、左の庭園には、紫陽花の咲く散策路があり、青や薄紅色の花々が目を楽しませてくれる。
初秋の頃は芙蓉。本堂前の小道の両側に咲く白い花々は、量感も豊かで見応えがある。また、本堂裏の庭園では、ひとときの間、燃えるように咲く彼岸花が、書院庭園の和の世界を赤く染める。この時期の境内では、徳川光圀お手植えと伝わる冬桜も楚々として咲き出す。
初冬の頃には紅葉(もみじ)。境内へと続く苔むした石段の両側の紅葉が、赤や黄色に染まった谷戸の光景は、まさに錦の屏風絵のごとくである。
紅葉ヶ谷(もみじがやつ)と呼ばれる深い谷戸に、静かに佇(たたず)む瑞泉寺。四季折々の花々とともに、鎌倉に花開いた禅宗文化にも親しめる趣深い寺である。
石塚裕之