成就院は、平安期に空海が諸国巡礼の際、護摩を焚くなどの修法を行った地に、1219年3代執権・北条泰時により創建されたと伝わる。本尊の不動明王には、縁結びのご利益があることや、参道から鎌倉の絶景を楽しめることなどから、参詣者も数多い。
ここに咲く花といえば、初春の頃は水仙。静かな境内で、黄色や赤の実を付けた千両や万両とともに、凛とした姿で咲く。
陽春の頃は桜。参道の頂では、鎌倉の町並を背景に、染井吉野の美しさが一層引き立つ。桜が盛りを過ぎる頃、可憐な諸(しょ)葛菜(かっさい)の花々が参道をすみれ色に染める。また、本堂前では、真っ赤な牡丹(ぼたん)が大輪の花を咲かせる。
初夏には夏椿。本堂前や弘法大師像の隣で、白い清楚な花を咲かせる。そして紫陽花。以前は、参道いっぱいに咲いていたが、2016年般若心経の字数と同じ262株が、東北復興の願いを込めて、南三陸町(宮城県)へ寄贈された。残った株は、今も水色や青紫色などの鮮やかな花を咲かせてくれる。
秋は萩。寄贈された紫陽花の後、参道には宮城県の花、萩が植栽された。ここからは、大きな弧を描く由比ヶ浜と、市街地を囲む緑の山々に、紅白の萩が美しく映える絶景が堪能できる。秋が深まると、境内では赤い秋明菊(しゅうめいぎく)も咲き始める。
極楽寺坂の上、鎌倉の街を望む成就院。お不動様が、鎌倉と東北との縁(えにし)をも結んでいる。
石塚裕之