三世代にわたり愛されてきた
府中街道沿い、中原小近くの駄菓子屋「ことりどう」が9月30日、90余年の歴史に幕を下ろす。店主の畑ヶ谷登さんは御年92歳。母・アキさんが「小鳥堂文具店」を創業してから三世代にわたり愛され、街と子どもたちと歩んできた店を惜しむ声が聞かれる。
畑ヶ谷登さん・真澄さん夫妻
店を閉める理由について登さんは「子どもたちから元気をもらいながら頑張ってきたが、寄る年波には勝てないね」と年齢と体調面の不安をあげる。最近は妻・真澄さん(82)が店先に立ち、登さんは後ろから見守っていることが多くなった。
店に並ぶ駄菓子は100種類以上で単価は10円から50円。昔から品揃えがほとんど変わっていない。週2回、東京都内の卸売業者が届けが、近年は梅ジャムやベーゴマなど、長年愛されてきた商品の製造会社が先に廃業してしまうことも増えているという。登さんは来店した親子や孫を連れた祖父母が、一緒に駄菓子を選びに夢中になる姿を見ているのが楽しかったと目を細める。
戦前に母が創業
公務員を定年退職後、店を継いだ。前身の文具店は、戦前に母が創業。小学生だった登さんも商品を仕入れるため、母親に連れられて問屋のある台東区蔵前まで出掛けたという。「ノート類は重くて持ち帰るのが大変だったけど、頑張る母を助けたい一心だった」
中原小の児童から社会科見学のお礼としてもらった手紙はずっと店に飾ってある。「今の子どもたちはきちんとあいさつするし、礼儀正しい子が多いね」
子どもらに感謝
親子で店を訪れた区内の30代女性は「子どもたちは駄菓子が大好き。ここに来ると自分も懐かしい気持ちになるので、閉店するのは寂しい」と残念がる。三世代がそろって来店する姿もあり、登さんは「毎日、子どもたちと接することが喜びだった。ここまで続けられたことに感謝したい」と話した。
中原区内では住吉小前にある「はらだや」が、今も経営を続けている