介護の担い手確保が急務
横浜市、25年に6500人不足の推計も
日本の高齢化率は30%に迫り、介護が必要な人は今後ますます増える見通しです。その一方で、生産年齢人口(15歳~64歳)は減少が続き、介護の働き手を確保することは大きな社会課題。横浜市の推計では2025年には約6500人もの介護人材が不足すると想定されています。
こうした社会状況のなか、いま注目を集めているのが「外国人介護人材」。横浜市西部を中心に50以上の事業所を運営している㈱アイシマ(本社/横浜市瀬谷区)は数年前から外国人の雇用を推進し、今では50人以上が各施設で働いています。
- 今回のレポートでは認知症グループホーム「やまぶき」(横浜市戸塚区)で働くナビッラ・シャファラさん(21歳)と、同施設の管理者・中ノ瀬陽子さん、主任の金子将之さんを取材。以下4点についてお話をお聞きしました。
1.介護の仕事を志したわけ
2.受け入れ体制を工夫し、不安解消へ
3.スタッフと利用者に良い影響も
4.今後の目標
「両親のため」 介護職を志す
取材にお伺いしたのは10月中旬。夕食前の時間帯で、ナビさんはボールを使った手遊びや塗り絵などのレクリエーションを通じて、利用者と交流していました。笑顔で接するナビさんと、孫を見守るような優しい眼差しの利用者。ゆったりとした、温かい時間が流れています。
インドネシアから日本へ
ナビさんはインドネシアの西ジャワ州の出身。19歳の頃に、「将来、両親を介護できるように」と介護の道を志したそうです。日本の言葉や文化を2年ほど勉強した後に来日。2022年11月から、やまぶきで働いています。
言葉や文化の違い、工夫で乗り越え
母国の歴史や習慣の理解も
「始めの頃は日本語を上手く話せませんでした。生活のルールも分からないことが多かったです」と来日した頃の不安を振り返るナビさん。
こうした不安の解消につながったのが、やまぶきのスタッフによる受け入れ態勢でした。利用者とスタッフの名前を平仮名で書いたネームプレートを作ったり、タブレットの翻訳アプリを積極的に活用。また、インドネシアの歴史や文化、宗教について事前に学んだりと、さまざまに工夫をこらしたそうです。ナビさんは「私の気持ちを理解しようとしてくれて、とても嬉しかったです」と笑顔で話しています。
勤務1年、成長を実感する日々
働き始めて1年が経ち、現在では食事・トイレ・お風呂などの生活介助から、レクリエーション、お散歩などさまざまな業務をこなします。5月頃から夜勤も任されるようになりました。
中ノ瀬さんも「施設にとって立派な戦力になっています」と、その仕事ぶりを評価。ナビさんも「利用者の人たちから『ありがとうね』と言われることが、大きなやりがいになっています」と充実した様子です。
当たり前のケア見直すきっかけに
言葉遣いに変化
「ナビさんと働くことで、私たちスタッフに様々な変化がありました」と金子さん。その一つが、利用者に対する言葉遣い。利用者のなかには耳が聞こえづらい人もおり、意志疎通するために大きな声を出さなければいけません。その様子を見たナビさんから、「(スタッフは)怒っているの?」と言われたそうです。
「そのつもりが無くても、周りからしたら怒っているように見えるのかもしれない」――。
- ナビさんの疑問が〝当たり前のケア〟を見つめ直すきっかけになり、これまで以上にゆっくりと穏やかに、丁寧な言葉づかいで話しかけるようになりました。
「教えること」が利用者の刺激にも
「利用者にとっても良い影響がありました」と説明するのは中ノ瀬さんです。何事にも一生懸命で努力家のナビさんに対して、日本語や歌の歌い方などを、やさしく教えてくれる利用者が多いそう。「今まで見たことが無い表情をしていたり、ニコニコしている姿をよく見るようになりました」と施設内の変化を説明します
「介護の仕事が好き」
皆に感謝
ナビさんは現在、2024年4月の介護基礎研修に向け、業務と並行して勉強に取り組んでいます。「介護の仕事が好き。(スタッフや利用者に)感謝しています」とナビさん。「両親のためにも、もっともっと頑張ります」と素敵な笑顔で話してくれました。
優しく笑顔で受け入れを
「今後は日本人スタッフと同じくらい、外国人スタッフの必要性が高まってくると思います」と中ノ瀬さん。「今まで以上に、優しく笑顔で外国人スタッフを受け入れられる環境作りに取り組んでいかないといけないですね」と意気込んでいます。