日本で働く外国人が増えています。その中で「外国人技能実習制度」を活用し、開発途上国への技術移転、人材育成に協力しているのが、外国人技能実習生の監理団体「地球ネットワーク協同組合」(横浜市西区桜木町)です。
同制度によって、フィリピンやミャンマー、タイ、バングラデシュからの人材を依頼があった企業に受け入れてもらうための「橋渡し役」を担っています。今後、重要性が増してくると思われる監理団体の取組を紹介します。
中小企業経営者による協同組合形式の監理団体
地球ネットワークは、横浜市内の中小企業経営者が集まり、社会貢献、国際貢献を目指し、神奈川県初の異業種組合として発足したものです。約40社が集まっています。事務局には社会保険労務士、税理士、行政書士などの専門家がいます。
理事長の米田穰一郎さんは「一つの企業や業種では小さな力でも集まれば大きな力になると思い、組合の形式にしました」と説明。「外国人技能実習制度を活用し、将来的には引受企業の海外への事業展開の手助けの一つになればと考えています」と話します。
フィリピン、ミャンマー、タイ、バングラデシュの実習生に対応
監理団体は日本で技能実習生を受け入れようとする企業からの依頼を受け、調整やサポートを行う団体です。全国に数千団体あると言われる中、地球ネットワークはフィリピン、ミャンマー、タイ、バングラデシュの送出機関と提携しています。
ミャンマーの実習生が活躍
ビルやマンションなどの修繕、改修工事を行う「株式会社オカベ」(横浜市神奈川区)は地球ネットワークに依頼し、ミャンマーから技能実習生3人を受け入れています。すでに現場で働いており、動画を見ると、チームに溶け込んでいるのがよく分かります。
3人の働きぶりが評価されたこともあり、オカベには今後もミャンマーからの実習生が来日することになっています。
現地の機関と提携し、実習生のスムーズな来日を実現
地球ネットワークはミャンマーの送出機関「ピェーミャンマースェ株式会社」(PMMS社)と提携しています。PMMS社はミャンマーの若者を技能実習生として日本へ派遣するために人材派遣会社を設立。日本語学校とも提携し、600人を超える生徒が日本語を勉強しており、これまでに約400人を日本へ送り出しています。
ミャンマー語は日本語とほぼ同じ語順で、勉強する際に単語を覚えるだけで良いため、習得時間が短く、日本語の上達が早いと言われています。
実習生と交流を図り、働きやすい環境を整備
同組合によると、ミャンマーは親日国であり、日本に憧れを持つ若者が多いそうです。実習生が来日した後も実習生と一緒に鎌倉散策を行うなどして、コミュケーションを図っています。
こうした交流を続けることによって、実習生が働きやすい環境を作れるよう、企業側と交渉、調整するのも監理団体の大きな役割です。
外国の実情を調べ、実習生と企業に最適な環境を模索
世界を取り巻く状況は日々変わっており、外国の情勢も変化しています。地球ネットワークのメンバーは海外に足を運ぶなどして、現地の送出機関と連絡を密にしています。
例えば、ミャンマーには約400の送出機関があり、その中から本当に信頼できる相手を見つけるのは容易ではありません。その中でも地球ネットワークが提携するPMMS社とは信頼関係が構築されており、同社の社長が来日し、米田理事長が経営する弘明寺商店街の店舗を訪れるなど、良好な関係が続いています。
新しい「育成就労制度(仮称)」にも対応へ
技能実習制度は2024年以降、発展的に解消され、新しく「育成就労制度(仮称)」が設けられる見込みです。地球ネットワークは新しい制度にも対応できるように準備を進めています。
新制度は技能実習制度以上に外国から日本にやってくる人の支援体制が重要になってくると言われます。地球ネットワークはこれまで培ってきた送出機関の信頼関係や日本の受入企業との連携をより強めていくとしています。
米田理事長は「制度が変わっても、日本で仕事をしたいという海外の若者の希望を実現し、日本企業の発展にも役立てるようにしたい」と話しています。